-カツオ26才の夏-

6 8月, 2011 (17:47) | サザエさん | By: SS野郎

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/17(木) 23:38:32.26 ID:Pp1Z0jBu0
「カツオー!!遅刻するわよ、早く起きなさーい!」
姉さんの声だ・・・もう少し眠りたいのに。
「カツオ兄ちゃーん、起ーきるーですー。」
タラちゃんはいつも無邪気でいいなぁ。

いつもの朝、何気ない日常、幸せな日々
戻らない現実・・・夢・・・そう夢。

最悪な目覚め。久しぶりに家族の夢を見た。15年前、小学生の頃の夢。
悩みなんてカワイイもの。未来は希望に満ち溢れてた。
そんな毎日が続くと思っていた。

今は力が欲しい・・・
何者にも屈しない力・・・

姉さん・・・サザエを頃せる力・・・


2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/17(木) 23:41:34.92 ID:Pp1Z0jBu0
日本を出て7年、俺は今・・・中国にいる。

日本人相手に詐欺を働いたり女を斡旋したり。くだらない人生だ。
暗い闇を歩き続けていた。日のあたる道を歩きたい。
金のない俺はいつもの安い屋台でビールを飲んでいた。女を買う金ももない。
小さい屋台が密集した市場。今日も人が蟻のように大勢いる。

小学生の頃は何にでもなれると思っていた。現実は何にもなれなかった。

「磯野!?磯野だよな?いやー、やっと見つけたよ。」
懐かしい声・・・中島だ。俺の親友。
酔っ払いすぎて幻聴かと思った。

「・・・中島・・・。こんなとこで何してる?」
俺はビールを置き顔だけ中島に向けた。

「・・・磯野、久しぶりだな。お前を探しに来たんだよ。」
中島は7年前と変わっていなかった。
野球で鍛えたほどよく締まった体、身なりのいい服。
負け犬の俺とは大違いだ。

「まぁ座れよ。この屋台のメシはまぁまぁ美味いぜ。」
俺は油まみれのイスを中島に勧めた。

3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/17(木) 23:53:38.80 ID:Pp1Z0jBu0
「中島・・・今さら俺に何のようだ?」
東京から・・・日本から逃げた俺。

「磯野、日本は今大変な事になっている。イササカ教が力を持ち過ぎた。」
中島はビールを飲みながら話し出す。
イササカ教・・・俺の人生をめちゃくちゃにした宗教団体。
思い出したくも無い名前。心の底に鍵をかけて封印しようとしていた名前。

「カツオ兄ちゃん見つけたでーす。」
!?
「まさか・・・・タ、タラちゃん・・・!?」
俺は思わずビールジョッキを落としてしまった。
すっかり青年になったタラちゃんが立っていた。

「そうでーす。わざわざ中国まで来たでーす。」
どういう事だ?しゃべり方が昔に戻ってる・・・
7年前・・・小学生のタラちゃんは年相応のしゃべり方をしてたのに・・・

「中島が・・・連れて来たのか?」
そう聞きながら中島を見る。中島は震えていた・・・。

「ち、違う・・・いや、つけられたのか・・・?
磯野・・・に、逃げよう・・・ヤバイ・・・タラちゃんはヤバイ。」
中島は真っ青な顔でガタガタ震えていた。

5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/18(金) 00:00:12.31 ID:6HI0X5Th0
どういう事だ?
俺は中島からタラちゃんの方へ視線を戻す。

!?
タラちゃんは浮いていた・・・
いや、実際は跳躍して右足を鞭のようにこちらへ伸ばして来ている。飛び蹴り。

俺は驚き、油まみれのコンクリ-トの地面で足を滑らせ
間一髪よけれた・・・はずだったが左腕に熱い衝撃が走る。
左腕に横一線に切れ目が入ってる・・・かすり傷だ。

「おぉ、マグレと言えど避けるなんてスゴイですー!」
無邪気なタラちゃんの笑顔。タラちゃんのブーツの先端に刃物が光っていた。

「タラちゃん・・・何を・・・。どうして・・・。」
確実に俺の命を狙いに来ている・・・。

「フフフー。カツオ兄ちゃんを頃しに来たですよ?次は外さな・・・」ガシャン!!
中島がタラちゃんに向かってビールジョッキや皿を投げつけていた。
言葉にならない言葉を呻きながら。

7 :ID変わった1です:2010/06/18(金) 00:03:04.98 ID:k/y1baTW0
屋台の店主や通行人の怒鳴り声や悲鳴が響く。
「い、磯野!逃げるぞ!!」
中島が屋台のコンロにあった作りかけの
あんかけをタラちゃんに、ぶちまけながら叫ぶ。

「熱いでーす!中島ー・・・お前から頃すですよー?」
タラちゃんは言葉とは裏腹に無邪気な笑顔。

中島に気を取られているタラちゃんに全力でタックルをかます。
横転するタラちゃんを横目に俺と中島は走り出した。

「ハァハァ・・・どういう事なんだ?中島。タラちゃんは一体・・・。」
走りながら聞く。

「ハァハァ・・・タラちゃんはイササカ教の開発した薬で強化されたサツ人マシンだ・・・
痛みや恐怖を感じず、身体能力も向上してる・・・。副作用で幼児退行しちゃうらしいけど。」
中島は相変わらず顔が真っ青だ。

「ハァハァ、何だよそれ。何でタラちゃんが・・・。」
可愛かったタラちゃん・・・成長するにつれ生意気になったが
それでも俺を実の兄のように慕ってくれた・・・。

「待つでーす!こーろすーですー!!」
タラちゃんは顔色を変えず、息も乱さず、すごいスピードで追いかけてきた。

10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/18(金) 00:09:02.93 ID:gTlSTxI6O
カツオが26ならタラヲは最低でも16~18だろks

13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/18(金) 00:17:06.63 ID:htP9TZoFO
>>10
>>7

8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/18(金) 00:06:26.23 ID:6HI0X5Th0
「中島!そこのビルへ入るぞ!!」
古い雑居ビルを指差す。

「ビルなんて入ったら袋のネズミだろ!?」
俺は中島の叫びを無視してビルに飛び込む。
中島も仕方なく付いて来たようだ。
運良く1階で停止していたエレベーターへ飛び込み3階へ。
フロアにあるドアを乱暴に開けた。

「ん?誰かと思えばカツオじゃねぇか!どうした、慌てて。」
部屋に入ると中国語が聞こえてくる。

「ハァハァ、ロン親分、突然すみません・・・。ツォーリンの手下が
ロン親分の首を狙ってこのビルへやって来ます!!」
助かるための嘘。利用できる物は利用する。クズな俺の生き方。

ロン親分、武闘派で知られる中国マフィアのボス。
良く通訳や小さな仕事を回してもらったり、何かと良くしてもらってる。

ツォーリン、ロンと対立するマフィア。
いつ抗争になってもおかしくない2つのマフィア。利用する。

9 :またID変わってる:2010/06/18(金) 00:08:44.71 ID:k/y1baTW0
「何!?おい、戦闘の準備だ!ツォーリンに目に物見せてやるぞ!!」
ロンの叫び。暴力でのし上がった単細胞。俺の言葉を疑いもしない。
今部屋にいるロンの手下は10人ほど。各々がマシンガンや青龍刀を構える。

部屋のドアが開きタラちゃんが無邪気な笑顔で入ってくる。
同時に俺は中島の手を引き裏口から非常階段へ飛び出した。鳴り響く銃声。悲鳴。

タラちゃん・・・きっと姉さんの差し金だろう。
かわいそうだが自分の命には代えられない・・・。中国の7年が俺を変えた。

俺達は近くの飲み屋に逃げ込んだ。
人が多い方がいざという時逃げやすい。他人を犠牲にして。クズの考え。

11 :IDコロコロ変わるのでトリ ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 00:11:54.71 ID:k/y1baTW0
「中島・・・全て説明してくれ。イササカ教の事。今の姉さんの事。」
俺は紹興酒を飲みながら聞く。

「イササカ教は力を持ち過ぎた。今は政治にも関与している。
副教祖の・・・お前の姉さん、サザエさんを中心に・・・。」

イササカ教・・・隣人のイササカさんが始めた宗教。
最初はただ近所の老人を集めた茶飲み会だったが
数年で数万人の信者を持ち
さらに数年もすると数百万の信者に膨れ上がった。

7年前イササカさんが謎の失踪をする。
幹部だった・・・姉さんとマスオ義兄さんが教団を運営する事になった。

「政治・・・まぁその程度は俺も予想が付く。」
実際7年前からその兆しはあった。

「それだけじゃない。裏では武器密輸や新種の覚せい剤、タラちゃんに与えられたような
薬の開発まで行っている。金、兵力、政治への影響力、警察も証拠が掴めず手が出せない。」

12 :>>1.2.3.57.8.9.11俺です ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 00:15:36.66 ID:k/y1baTW0
「・・・」
絶句。言葉にならない。姉さん、どこまで・・・。

「磯野、日本へ帰って来い。俺は今、花沢さんとイササカ教の被害者の会を設立したんだ。
教団に家族を奪われた人を中心に1万人ほどの署名が集まっている。」
中島の瞳は真剣だ。

「待て、俺が帰ってどうなる?俺には何の力も無い。悪いが力になれないよ。」
俺には・・・無理だ。

「・・・磯野・・・さっきのタラちゃん見たろ?
イササカ教の中核はお前の家族で構成されている・・・。今わかっているだけで
教祖はマスオさん、といっても教祖はお飾りでしかない。
実際に実権を握っているのは副教祖のサザエさん。幹部にタイ子さん、ワカメちゃん。
裏の実働部隊にタラちゃんとイクラちゃん。」

「ワカメやイクラちゃんまで・・・父さんと母さんは?」
懐かしい顔が浮かぶ。

「二人の行方はわかってない。教団にいるっていう噂もあるし
・・・もうシんだっていう噂もある・・・。」
「・・・そうか・・・。」
父さん、母さん・・・

「カツオ兄ちゃん、見ーつけーですー。」
飲み屋の入り口に血だらけのタラちゃんが立っていた。

15 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 00:19:46.46 ID:k/y1baTW0
!!
「まさか・・・タラちゃん、ロン親分はどうした?」
武装したマフィア十数人が全滅?ありえない・・・

「あの、おじさん達ですかー?みんなシにましたよー。」
血だらけのタラちゃん・・・恐らく返り血。

「磯野・・・逃げろ!日本へ行って花沢さんに会え!」
中島は何か決意した瞳で言う。

「・・・中島、何考えてる?一緒に逃げよう・・・。」
俺は本心から言っていない。
・・・底辺を生きてきた俺はそんな風に思えてしまう。

「磯野、お前の家族はお前じゃなきゃ救えない・・・そんな気がするんだ。
行け・・・俺が時間を稼ぐ・・・。」
中島の手には手榴弾が握られている。・・・恐らくロンの事務所から盗んで来たんだろ。

「行け磯野!!!」
中島は手榴弾を投げ叫ぶ。

爆風を背中に感じながら俺は裏口へ走った。

16 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 00:24:22.69 ID:k/y1baTW0
3日後・・・
俺は7年振りの日本へ来ていた。久しぶりの東京の空気。

中島とタラちゃんがどうなったかわからない・・・。恐らくシんだんだろう。
俺は中島を見頃しにしたんだ。

まっすぐ花沢不動産へ向かった。街は7年前からすっかり変わっていた。
人がほとんどいない・・・至る所に横断幕や落書き。
(イササカ教出て行け!)(フグ田家出て行け!)
俺に何ができる・・・。

「磯野君・・・?」
元クラスメートの花沢さんが立っていた・・・。

17 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 00:28:13.47 ID:k/y1baTW0
「花沢さん・・・久しぶりだね・・・。」
すっかり大人になった花沢さん。
やんちゃだった花沢さんが懐かしい。

「えぇ、そうね!ところで中島君は?一緒に帰って来たんでしょ?」
花沢さんの笑顔・・・直視できない。

「・・・中島は俺を助ける為に・・・シんだ。」
俺が頃した。俺が頃したんだよ、花沢さん。

「え?・・・そう・・・なんだ・・・。嘘じゃなさそう・・・ね。」
花沢さんの目に涙が溢れた。かける言葉がない。
唇を噛み締め血が滲んでいる。

「被害者の会を作った時に・・・覚悟はしていたの。・・・まさか、こんな突然とは思わなかったけど。
・・・でも磯野君が帰って来ただけでも良かった!元気そうね。」
痛々しいほどの強がり・・・。

「あぁ、元気だよ。ありがとう・・・。」

「何か変わったわね、磯野君。暗くなった?」
変わらない訳ない。実の姉に頃されかけ日本から逃げたのだから・・・。

18 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 00:31:19.10 ID:k/y1baTW0
花沢さんの案内でイササカ教被害者の会の会合へ参加した。
花沢さんは母親が教団の信者になり、それを止めにいった父親は翌日、シ体で発見されたらしい。
中島は両親とも信者に。おじいさんが行方不明になったらしい。

俺の家族のせい。止められなかった俺の弱さのせい。

「お?・・・もしかしてカツオ君かい!?」
急に声をかけられ振り返る。

「・・・ノリスケおじさん?」
すっかり薄くなった頭、ガリガリに痩せた体。
確か40歳くらいのはずなのに老人のように見える・・・。
タイ子おばさん、イクラちゃんは教団の幹部になったらしいが、ノリスケおじさんは被害者の会。
聞かなくても辛い人生を歩んで来た事が想像できる。

「カツオ君、ご無沙汰!・・・良く帰って来たね。」
「ノリスケおじさんも被害者の会に?」
声に昔ほどの覇気がない。
それを悟らせない為か元気良く喋ろうとしている。痛いほどの強がり。

「そうだよ。僕は出版社時代のコネを活かし情報を集めたりしてるのさ!」
ノリスケおじさん、濁った瞳が疲れを示している。

「そうだ、カツオ君に渡したい物があるんだよ。後で読んでみてくれ。
教団とは直接関係ないけど、最近掴んだ情報が書いて入れてある。」
封筒を預かった。

20 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 00:36:15.99 ID:k/y1baTW0
被害者の会の会合には100人ほど集まっている。
どの瞳も疲れきっていた・・・。

会合は大した進展もないらしく
教団の人数が何人増えたとか新しい施設が建設中とか・・・俺には大した情報ではない。

ただ一つ気になる事が。幹部のワカメが最近姿を見せないらしい・・・。

「最後にいつもの掛け声をやりましょう!」
花沢さんがマイクを手に取りしゃべる。

「教団をぶっつぶせ!!」
『教団をぶっつぶせ!!!』
「マスオに残酷なシを!!」
『マスオに残酷なシを!!!』
「サザエは地獄に落ちろ!!」
『サザエは地獄に落ちろ!!!』

みんな瞳がランラン輝いていた。花沢さんもノリスケおじさんも。
狂っている。教団も被害者の会も・・・みんな狂ってる・・・。

21 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 00:39:29.94 ID:k/y1baTW0
ノリスケおじさんから貰った封筒の中には2箇所の住所が書いてあった。
1つは東京の八王子、もう1つは埼玉の熊谷・・・

翌日、俺は花沢さんから借りた車で1人八王子に向かう。
八王子の山奥にある古い寺。由緒正しい寺なのだろう。

住職さんの挨拶し事情を説明したうえで、奥にある本堂へ案内してもらった。
30畳ほどの本堂。お香の香りが鼻をつく。
1人の尼さんがお経を読んでいた。

「母さん・・・。」
尼さんのお経が止まった。

「カツオ・・・かい?」
尼さんが驚いた表情を浮かべこちらを振り返る。
頭を丸めた母さん。だいぶ老けていた。

「久しぶりだね母さん。出家してたなんて驚いたよ。」

「カツオ・・・帰って来たんだね。うぅ・・・。サザエを止められなかった
母さんを許しておくれ・・・。あなたを危険な目に合わせてしまった母さんを・・・うぅ・・・。」
泣きじゃくる母の肩をそっと抱いた。

23 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 00:42:11.63 ID:k/y1baTW0
「・・・そう・・・中島くんが・・・うぅ。」
母さんは泣き続ける。

母さんは最初こそ教団の手伝いをしていたらしいが、その狂気に恐ろしくなり逃げ出したらしい。

「父さんとは会ってないのかい?」
ノリスケおじさんにもらった埼玉の住所は父さんの住所だ。

「お父さんは最初から教団に反対していたからねぇ。それに・・・
あんな風にサザエを育ててしまった私をお父さんは許してくれないよ・・・。」
母さんらしい。変わってない母さんを見ていると泣きそうになる。

「父さんはそんな人じゃないよ・・・わかってるだろ?」
父さんはそんな小さい人じゃない。

「わかってる。父さんは優しいもの。でも今は・・・まだ会えないわ・・・。」

24 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 00:45:24.60 ID:k/y1baTW0
照りつける日差し、今年の夏はいつもにまして暑い。
汗を拭いながら真っ赤なトマトを収穫する。
「波平さん。ちょっとお茶でも飲もうや!」
隣の畑から近所の茶飲み友達の声がする。
「あぁ、ワシはもう少し収穫してからにするから、先に休んでてくれ。」
畑仕事で汗をかく。この瞬間は全て忘れられる。ワシの全てを捨てて逃げてきた罪を・・・。

誰かの影が光を遮る・・・。逆光で顔は良く見えない。
ボサボサ頭で背の高い青年。瞳は不思議な光を放ち、どこか影がある。

「どちら様ですか?・・・もしかして畑に興味でもおありかな?」
こんな田舎に来る若者なんてほとんどいない。

「いや、アナタに会いに来たんです。」
青年は照れ臭そうに頭を掻きながら言った。・・・懐かしい声。

「カ、カツオか!?」

カツオ・・・実の姉に頃されかけ中国へ逃げたワシの息子。
ワシがサザエを止められなかったせいで人生が狂った・・・ワシの息子。

「やぁ父さん・・・少し痩せたね。」

27 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 00:50:28.20 ID:k/y1baTW0
埼玉県熊谷市。

近所の人に聞いて畑仕事に精を出す父さんを見つけた。
日に焼け、少し痩せて・・・また少し頭が薄くなった父さんがいた。

「カ、カツオか?」
俺に気付いた父さんは驚きと戸惑いが隠せないようだ。

「やぁ父さん・・・少し痩せたね。」
俺は涙をこらえ言った。
父さんに涙を見られるのは恥ずかしい。

「すまなかったカツオ!ワシは・・・ワシは逃げてしまった・・・。サザエをあんな風に・・・
あんな風に育ててしまったのは・・・ワシの責任だ・・・。許してくれ・・・。」
父さんは泣いていた。しわだらけの顔をさらにしわくちゃにして。
父さんのせいじゃないのに。

「やめてよ父さん!父さんのせいじゃない!もちろん母さんのせいでもない!
みんな教団が悪いんだ。そして・・・俺が悪いんだ。」
そうクズな俺のせいだ。
俺は父さんの肩に手を置いて言った。

「・・・お前のせいじゃないカツオ・・・カツオには辛い思いをさせてしまったな。
生きていてくれて、会いに来てくれてワシは嬉しいぞ、カツオ。」
父さんは顔をあげ言った。

28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/18(金) 00:52:14.59 ID:sNMYX8jiO
馳星周?

244 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/18(金) 15:38:10.02 ID:WT4cIko60
>>28
俺も思ったw

29 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 00:53:02.19 ID:k/y1baTW0
「そうか・・・母さんがそんな事を。」
今までの経緯を説明した後、父さんは目を瞑りうなずいていた。
父さんは6畳ほどの狭いアパートで年老いたタマと暮らしていた。

「母さんを迎えに行きなよ。住所は渡しておくから。」
2人は一緒にいなきゃダメだ。
せめて2人だけは幸せになって欲しい。

「いや母さんにも思うところがあるのだろう。今はそっとしておいてやろう。」
「会いたく無いのかい?」
「・・・会いたいに決まっておる。しかし今会えば母さんは罪悪感に押しつぶされてしまうよ。」

「フフフ・・・。」
俺は笑った。

「何がおかしい?」
父さんは少し怒っている。

「似た者夫婦だよ2人は。頑固者だ。」
俺は笑った・・・久しぶりに笑った。

「バッカモーン!!」
涙がでるほど笑った。何年ぶりに笑っただろう。

32 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 00:56:59.30 ID:k/y1baTW0
「カツオもう行くのか?」
父さんは悲しそうに言う。
父さんの言いたいことはわかってる。

「あぁもう行くよ・・・。父さんが作った野菜うまかった。また食べたいな。
タマ元気でな、父さんの事・・・頼んだよ。」
タマは寝ていたが返事をする代わりにシッポを振った。
父さんの野菜・・・久しぶりに本当に美味しい物を食べた気がする。

「カツオ・・・ここでワシと暮らさないか?静かに畑でも耕して。
そうじゃ!近所に年頃で独身の娘さんがおったな。よし!お見合いしたらどうだ!?
父さん、今から話してくる!待っておれ。」
父さんは興奮しながらしゃべっている。

「父さん・・・姉さんを止めなきゃ・・・。」
父さんと母さんに会って決意した。俺が全てを背負う。全ての罪を。

「そうか・・・サザエの事・・・。」

「あぁ、俺が頃すよ。」

33 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 01:00:44.04 ID:k/y1baTW0
俺は東京に戻ると新宿の歌舞伎町へ出向いた。
武器が必要だから。中国にいた時のコネで銃を手に入れた。
酔っ払ったロン親分に撃たせてもらった事がある。人は撃った事はない。

それとナイフやダイナマイト、他にも武器になりそうな物を買った。役に立つかわからないけど。

携帯が鳴る。花沢さんからだ。

「もしもし磯野君?大変なの・・・私どうしたらいいか・・・わからなくて。
お願い、とにかくすぐに戻ってきて!!」
電話越しに伝わる花沢さんの戸惑い。今度は何が・・・何が俺を苦しめる?
夏なのに寒気が走った。

34 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 01:03:16.31 ID:k/y1baTW0
花沢不動産へ着くと顔に白い布を被せられた男が寝ている。心拍数があがった。

「磯野君・・・ノリスケさんが・・・ノリスケさんが、教団に頃されちゃった・・・。」
花沢さんは泣いていた。
ノリスケおじさん・・・。また大切な人がシんだ・・・。

「会合が終わった後、ノリスケさん1人で教団本部に乗り込んだらしいのよ。
それで・・・さっき・・・さっき・・・。」
花沢さんの声が震えていた。

「さっき、イ、イクラちゃんが・・・
笑いながらノリスケさんのシ体を引きずって来たの。」
!!
イクラちゃん・・・まさか自分の父親を・・・。

「ノリスケさんの背中には見せしめだって書いてあったわ。」

37 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 01:07:57.89 ID:k/y1baTW0
「磯野君・・・これを・・・」
花沢さんは机に置いてあった
血が付きベタベタなUSBメモリを渡して来た。

「これは何だい?」
「ノリスケさんの口の中にあったの。多分見つかりそうになって必シに隠したんだと思うわ。
教団本部の見取り図と武器密輸や麻薬取引の証拠よ。」
ノリスケおじさんはこんな物の為にシんだのか・・・。
痩せ細った体で必シで抵抗するノリスケさんの姿が目に浮かぶ。

「今からプリントアウトするわ。待ってて。」
花沢さんがプリントアウトしてる間に
ノリスケさんのシ体を確認した。心臓と眉間に銃で撃たれた後がある。

「磯野君これからどうする?良かったら被害者の会で一緒に活動しない?」
プリントアウトした書類を持って花沢さんが聞いてきた。
被害者の会・・・狂気に満ちた人々の目。俺は震えた。
しかし俺もまた狂気の人生。そう思うと震えは止まった。

「遠慮しておくよ。俺には俺のやり方がある。じゃあ、もう行くよ。」

その夜、花沢不動産が謎の火事にあい花沢さん他、花沢不動産に寝泊りしていた
被害者の会のメンバー数人がシんだ。恐らく教団の仕業。
この街は、いや磯野の血は呪われている。

39 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 01:12:26.57 ID:k/y1baTW0
教団本部・・・地上10階、地下2階のビル。
東京郊外にあり、周りは全部教団の施設に囲まれている。
全ての元凶。見取り図によると地下駐車場があり、
正面玄関よりは警備が薄いようだ。ノリスケおじさんもここから進入したのだろう。

1人で行くのは無謀だ。しかしこれ以上誰もシなせる訳にはいかない。
行こう。全てを終わらせる為に・・・。

バックパックから出した銃を腰に挿し、他の武器をを確認する。

「カツオ兄ちゃーん。みーつけたー。」
建物の影から人が出てきた。無邪気な笑顔の青年。
シんだと思ったタラちゃんが立っていた。

40 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 01:17:04.05 ID:k/y1baTW0
「タラちゃん・・・生きてたのかい?」
何となくそんな気はしていた。
教団の狂気の産物、タラちゃん・・・。

「そうでーす!中国から泳いで帰って来たでーす。」
頭が割れそうだ。メチャクチャだ。現実が歪む。
俺はタラちゃんを止められるだろうか・・・。

「タラちゃん・・・姉さんに何て頼まれたんだい?」
俺なりの予想と作戦。俺はまだシねない。
・・・中島の事は怖くて聞けなかった。

「カツオ兄ちゃんを頃すように言われたでーす。
カツオ兄ちゃんは悪い子だから頃しまーす。頃しまーす。」

「タラちゃん・・・俺は悪い子じゃない。覚えてるかい?昔良く遊んだよね。
みんなで毎日楽しかったよね。幸せだったよね。」
俺の作戦。幼児の情に訴えかける、ちんけな作戦・・・。
俺は話しながら泣いていた。想定の範囲外だ。

「・・・」
タラちゃんは黙っている。笑顔が消えた。

「タラちゃん、思い出すんだ。また一緒に遊ぼうよ・・・。」

「やめてくださいですー。・・・頭が痛いですー・・・。ヤ・メ・ロ・・・ですー。
た、助けて・・・くださーい・・・。」
タラちゃんは困惑している。もう一押しか。

42 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 01:21:20.86 ID:k/y1baTW0
「悪いのはイササカ教なんだよ。みんな騙されてるんだ。姉さんもマスオ義兄さんも。
またみんなで暮らそうよ。父さんも母さんも・・・みんなタラちゃんを待ってるよ?」
涙が止まらない・・・。

「・・・わ、わかったですー。カツオ兄ちゃんはいつも優しかったでーす。
またみんなで遊びたい・・・。おじいちゃんとおばあちゃんに会いたいですー。」
タラちゃんの無邪気な笑顔。ありがとう・・・タラちゃん。
俺は最強のカードを手に入れた。

「ところでタラちゃんやイクラちゃんは拳銃を使えるかい?」
ノリスケさんのシ体が鮮明によみがえる。撃たれた跡。

「拳銃は難しいですー。僕もイクラちゃんはいつもナイフですよ?」
やはり・・・。

44 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 01:25:54.97 ID:k/y1baTW0
「タラちゃん、俺はこれから悪い奴らから姉さん達を助けに行く。いけるかい?」
助けるんじゃない。頃すんだ。
タラちゃんには言えない。言えるはずない。

「行くでーす!!」

「ただし極力人を頃しちゃダメだよ?」
俺が頃す。タラちゃんの手はこれ以上汚させない。

「半頃しでーす!!」

俺はタラちゃんと共に教団本部の地下駐車場へ向かう。
車の搬入口から駐車場に降りると嫌な予感がした。何か音が聞こえる。
振り返ると搬入口のシャッターが閉められる途中だった。

「くそ、罠か!!」
良く考えたら当たり前だ・・・。
同じ場所から何度も進入を許すわけない。

「やぁカツオ君、やっと来たか。」
車の陰から20人ほどの武装した信者が現れた。全員目がイッてる。
その中心にいるのは・・・甚六さんだ・・・。

48 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 01:30:05.94 ID:k/y1baTW0
「おや?タラちゃんもいるのかい?大阪の研究施設にいるって聞いてたけど。」
甚六さんはメガネを直しながら不思議そうに言う。

「そうでーす。甚六さん遊びましょー。」

「ん?何だよ、その子供みたいな話し方・・・バカにしてるのかい?」
・・・甚六さんはタラちゃんの薬の力を知らないようだ・・・。
裏の実行部隊。教団の中でもあまりしられてないのだろう。好都合。

「甚六さん、俺は姉さんに会いに来たんです。通してもらえませんか?」
できれば余計な手間は省きたい。

「ハハハ。俺は君を頃しに来たんだ。そもそもさー、これは命令なんだ。
サザエさんは君を頃したがってるよ。無理なお願いだ。」
まぁ、当然の話だな・・・。

「わかりました。俺もただじゃ頃されません。だけど甚六さんを頃したくはない。」
頃すのは姉さんだけで十分だ・・・。

「・・・どいつもこいつも俺をバカにしやがって・・・。俺は元教祖の息子だぞ!?
俺が教祖だ・・・俺は偉いんだ・・・俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺がー!!!!」
壊れてる・・・。薬か・・・。性格が歪んだのか・・・

「おい、カツオ君。俺を哀れみの目で見るな!!バカにするなと言ったろ!?」
甚六さんは銃を抜いた。銃声が鳴り響く。

50 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 01:34:02.54 ID:k/y1baTW0
「ぐっ・・・」
呻き声が聞こえた。誰の?俺の声だ。
俺は気が付くと地面に倒れていた。・・・左肩を撃たれた。

「カツオ兄ちゃん大丈夫ですかー!?」
タラちゃんが駆け寄って来る。

「大丈夫、かすっただけだよ。」
俺はタラちゃんに起こしてもらった。

「クハハハ。いい様だなカツオ君。俺をバカにした罰さ・・・。
そういえば君の妹のワカメちゃんも俺の事バカにしやがったな。フフフ。」
ワカメの笑顔が頭をよぎった。

「ワカメに・・・妹に何をした!?」
背中に汗が吹き出る。

「ククク。あのワカメちゃんが可愛くなったよねぇ。いつも蔑んだ目で俺を見るからさ・・・
犯してやったよ。ヒヒヒ。最初は嫌がってたけどシャブ打ったらヒィヒィ言ってさー。
自分から腰振ってたぜー!!見せてやりたかったよ・・・フヒヒヒヒー!!!」
目の前が赤く染まった・・・。

「タラちゃん・・・みんな半頃しにしろ。」
俺はつぶやく。目の前に閃光が走った。

51 :はま~ん ◆ZGUNDAM.12 :2010/06/18(金) 01:36:46.81 ID:H/Uy2h5uO
甚六さん屑だな

53 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 01:40:04.08 ID:k/y1baTW0
「終わったでーす。」
20人あまりの信者が全員呻きながら倒れている。30秒もかからなかった。
全身切り刻まれている者、四肢の一部を失った者。全員生きてはいるようだ。

「うぐ・・・な、何が起こった・・・?タラちゃんがやったのか・・・?」
右腕と右足を切り落とされた甚六さんが倒れ込み呆然としている。
視線が左右に激しく動いてる。

「良くやったね、タラちゃん。地下2階に牢屋があるらしい。そこに閉じ込められてる人たちを助けてあげてくれるかい?」
ノリスケさんが手に入れた地図は頭に全部入ってる。

「はーいですー。行って来るでーす。」
無邪気に走って行くタラちゃんを見送り、俺は銃を手にする。

「甚六さん、ワカメはどこにいるんです?」
俺は甚六さんに銃を向け聞いた。

「・・・くそ、痛いよ・・・う、腕と足無くなっちゃった・・・。」
甚六さんは俺の話を聞かず呻いてる。
ダン!!・・・俺は引き金を引いた。威嚇発射。

「ひっ・・・カツオ君、こ、頃さないでくれ!!!」
甚六さんは怯え震えていた。苛立つ。

「ワカメは?」
怒りに手が震える。

「・・・ワカメちゃんは・・・こ、頃した・・・。」
頭の中で何かが切れる音、壊れる音がした。
俺は引き金を引き甚六さんの脳みそが飛び散った。

56 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 01:44:09.39 ID:k/y1baTW0
・・・地下駐車場を後にし、タラちゃんの後を追う。
手には信者から奪ったマシンガン。
途中、タラちゃんに襲われたであろう、数人の信者が怪我をして倒れ込んでいた。
「た、助けてくれ・・・。」
「シにたくない・・・。」
俺の耳には届かない。俺はためらいなく、次々と引き金を引く。みんな動かなくなった。
みんなシねばいい。静かになった空間に俺の唸りだけが響く。

通路の途中にある部屋から人の声がする。
頭の中の見取り図と照らし合わせる。確かプレイルームと書かれた広い部屋。

そっとドアを開けると甘ったるい香りが漂ってくる。女の喘ぎ声。
下品なピンクの照明の部屋の中で、何組もの裸の男女が抱き合い交わっていた。
みな焦点が定まらず、ヨダレを垂らして笑っている。

怒りが込み上げてくる。生とシ。快楽と苦しみ。みんな頃してやる。
マシンガンを構えた俺の視線が部屋の隅に引きつけられる。

うつろな目で手を縛られて犯されるウキエさんの姿があった。

57 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 01:48:28.34 ID:k/y1baTW0
人をかき分け、踏みつけ、一直線にウキエさんの下へ向かう。
ウキエさんを犯していた男を殴り飛ばし、縛られていたロープを切った。
「ウキエさん・・・大丈夫かい?俺がわかるか?」
俺はうつろな目のウキエさんに語りかける。

「・・・いや・・・助けて・・・やめて・・・。」
ウキエさんはかすれた声で言う。全身に乾いた精液がこびり付いている。
近くにあった毛布でウキエさんを包み抱えて部屋を出た。

どうする?一度、戻るべきか・・・。
迷っていると地下へ続く階段から複数の人の声がする。

「カツオ兄ちゃーん!捕まってた人を助けて来たでーす!」
タラちゃんを先頭に20人あまりの人たちがついて来ていた。
牢屋があると知った時、教団に捕まった人がいると思っていたが正解だったようだ。

「頑張ったね、タラちゃん。えらいぞ。」
タラちゃんはピョンピョン飛び跳ねながら喜んでいる。

「磯野!?」
思いもよらぬ顔があった。小学生の頃の担任の先生。

「磯野君!」
懐かしい人の顔があった。恋焦がれていたカオリちゃん・・・。

58 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 01:53:02.96 ID:k/y1baTW0
「磯野君・・・本当に帰って来てたんだね。
タラちゃんに聞いたわ。また会えて嬉しい・・・。」
カオリちゃんの目に涙が溢れる。

「あぁ、カオリちゃんと先生は何でここに?」
カオリちゃん・・・心が安らぐ。
もう会う事はないと思っていた。

「実はな、ワシは妻が・・・大空カオリは両親が教団信者になっておってな。
説得しに教団本部に来たんじゃよ。・・・そしたら逆に捕まってしまってな。」
先生・・・すっかり老けている。相変わらず変な髪形。

「捕まっていた人たちは大体同じような理由よ。・・・あら、ウ、ウキエさん!?」
カオリちゃんはウキエさんの痛々しい姿を見て驚いている。

「さっき酷い目にあっているのを助けたんだよ。
カオリちゃん、ウキエさんを連れてここから逃げてくれ。
・・・そして先生、このUSBメモリを警察に届けてください。教団を潰す情報が入っています。」
USBメモリを先生に渡す。
ウキエさんは放心状態だ・・・助かるだろうか・・・。

60 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 01:59:09.92 ID:k/y1baTW0
「ウキエさんは教団の幹部だったけど、教団を良い方向へ変えようとしてた。それで私達を助けようとしてくれてたの・・・。
多分それで逆に捕まって酷い目に・・・許せない・・・。」
カオリちゃんは震えながら泣いていた。

「磯野、お前も一緒に逃げよう。ワシの妻も大空の両親も頃されていた・・・。
これ以上誰かがシぬのは・・・もう耐えられんよ・・・。一緒に警察へ行こう」
先生も泣いている。
俺も人を頃している。怒りに任せ。何も感じない。
むしろ清々しい。狂った人生。

「先生、俺はまだ・・・まだやらなきゃいけない事が・・・俺はケリをつけねばなりません。
家族の罪を・・・裁かなくてはいけません。俺は狂ってしまったのでしょうか?」
こんな事聞くつもりはなかった。でも誰かに聞いて欲しかった。
もう戻れない。だけど心のどこかでは戻りたかったのかもしれない。日のあたる道を歩きたかった。

「・・・磯野、お前の苦しみ、ワシには想像もつかん。
ワシは復讐は何も生まないと思う。全て忘れて明日を生きろ。・・・そう言いたい。
しかしな、お前の目を見ていると、そんな言葉すら霞んでしまう・・・。」
先生は困惑した表情を浮かべ言った。

「先生・・・。」
俺はどんな目をしている?最後に鏡をまともに見たのなんていつだろう。

「磯野、お前は狂ってなどいない。狂っているのは教団、そしてこの世界だ。
自分の思うように生きなさい。そして・・・そして今度、酒でも飲もう。」
先生は俺の肩に手をのせて言った。

そう、俺の後ろに道はない。俺はこの道をどこまでも進むだけだ。

62 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 02:01:55.88 ID:k/y1baTW0
「・・・磯野君必ず帰って来て。私いつまでも待ってるから・・・。」
カオリちゃんの言葉。荒んだ心が癒される。
ずっと心惹かれ想っていた人。

「カオリちゃん・・・俺を待つ必要なんて・・・」
俺の言葉を遮るようにカオリちゃんの唇が俺の唇を塞ぐ。

「私ね・・・磯野君が中国へ行ったって時に自分の気持ちに気付いたの。
何度も追いかけようと思ったけど、磯野君の気持ちを思うと・・・かける言葉すら見つからなかった。
とにかく話したいことがいっぱいあるから。必ず帰って来てね!絶対に帰って来てね!」
カオリちゃん・・・。俺は・・・。

63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/18(金) 02:02:56.73 ID:YlwN6OPI0
カオリちゃんはビッチ

65 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 02:08:02.75 ID:k/y1baTW0
ウキエさんをカオリちゃん達に任せ、駐車場まで見送り別れた。
サヨウナラ・・・。

「カツオ君・・・。」
いつの間に後ろに人が立っている。それは意外な人物だった・・・。

「イササカさん・・・。」
俺はとっさに銃を構える。
イササカさん・・・イササカ教の創立者で前教祖。
イササカさんが教祖時代は、イササカ教はまだまともな教団だった。7年前に謎の失踪。

「ま、待って!撃たんでくれ!」
イササカさんは両手を上げて叫ぶ。震えていた。

「イササカさん・・・生きていたんですね・・・。
てっきり姉さんに頃されたとばかり思ってました。」
俺は銃を下ろさないまま言う。

「あぁ、私は何年も牢屋に閉じ込められていたんだよ・・・。
さっきタラちゃんに助けてもらったんだ。」

「本当かい?タラちゃん。」
銃を、視線をイササカさんに向けたままタラちゃんに聞いた。

「本当ですー。一人で一番奥の牢屋にいました。」
タラちゃんは退屈そうに言った。アクビをしてる。

「すまなかった、カツオ君。私が不甲斐ないばかりに教団をサザエさんに乗っ取られてしまった。
私がもっとしっかりしていれば・・・君に苦しい思いをさせる事もなかった。」
イササカさんは土下座をしていた。・・・俺は銃を下ろす。イササカさんを信じよう。いや、信じたかった。

66 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 02:12:30.70 ID:k/y1baTW0
「イササカさん、俺は行きます・・・姉さんに会いに。懺悔なら他の場所でやって下さい。」
イササカさんがいなければ・・・そう思った時期もあったが、この人も被害者なんだ・・・。

「私も一緒に行くよ。見取り図にのってない幹部用のエレベーターなど知っている。
私の妻は・・・サザエさんに頃されてしまった。・・・私も行かなくては・・・。」
イササカさんの目は光っている。怒りか、他の感情か・・・俺にはわからない。

「イササカさん・・・ウキエさんは俺がさっき助けました。
しかし甚六さんは・・・この手で・・・。」
怒りに任せて頃した。許してもらおうとは思わない。

「そうか・・・甚六は・・・狂っていた。何人もの女を犯し、何人もの人を頃し・・・
甚六を止めてくれてありがとう。・・・そして手を汚させてしまい、本当にすまなかった・・・。」
イササカさんはまた土下座をしている。
この人はどんな思いで牢屋ですごしていたのだろうか・・・。

「わかりました・・・一緒に行きましょう。」
俺はイササカさんを立たせ、信者から奪った銃を渡した。

68 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 02:17:31.22 ID:k/y1baTW0
イササカさんの案内で見取り図には載っていない幹部用エレベーターに乗り込む。
おそらく最上階の10階に姉さんとマスオ義兄さんがいるらしい。

エレベーターは上昇していくが9階で止まってしまった。誰か乗って来るのか?

「カツオ君、タラちゃん、構えなさい。誰かが9階で止めおった。」
イササカさんは銃を構えてる。

エレベーターが開くと広いフロアに二つの人影。
タイ子おばさんと、すっかり青年になったイクラちゃんだった。

「こんにちわ、カツオちゃん、お久しぶりね。そしてさよならよ・・・。」
タイ子おばさんが歪むように笑うと同時に、イクラちゃんがナイフを構え飛び出した。
銃を撃ったが、イクラちゃんが早すぎて狙いが定まらない。

「バーブー!!!!」
幼児退行したイクラちゃん。やはりタラちゃんと同じ薬が・・・。

閃光・・・キン!!!

金属と金属のぶつかり合う高い音が響く。

「カツオ兄ちゃんをいじめちゃダメですよ?イクラちゃん。」
タラちゃんが飛び出していた。

70 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 02:22:09.12 ID:k/y1baTW0
「チャーン!!」
イクラちゃんはナイフを捨てタラちゃんとはしゃぎ出した。
タラちゃんと会えたのが嬉しかったんだろう。

「な、何してるのイクラ!タラちゃんも頃すのよ!!」
タイ子おばさんは歪んだ顔で怒鳴っている。

「バーブー。」
イクラちゃんは困惑した表情でタラちゃんとタイ子おばさんの顔を交互に見ている。

「何と・・・この薬は恐怖以外の感情も無くすと思っていたが
幼児退行するだけで純粋な気持ちは残ってしまうのか・・・。」
イササカさんはブツブツつぶやいている。

「ちっ・・・イクラ!!こっちに来なさい。」
イクラちゃんは怒られると思っているのか
申し訳なさそうな顔でタイ子おばさんに歩み寄る。

「イクラ、ママ怒ってないから、この薬を飲みなさい。」
タイ子おばさんはカプセル状の薬をイクラちゃんに無理やり飲ませた。
見る見るうちにイクラちゃんの筋肉が膨れ上がる・・・。

「チ、チャ・・・ヂャァァァーーーン!!!!」
イクラちゃんがこの世のモノとは思えぬ叫びをあげた。

72 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 02:26:18.24 ID:k/y1baTW0
「イカン!まさかあの薬を自分の息子に与えるとは・・・。」
イササカさんは困惑して真っ青な顔で言う。

「イササカさん、何ですか?あの薬は?」
いい予感がしない。

「・・・あの薬は・・・さらに身体能力を向上させる薬だ。感情も自我も吹っ飛んでしまう。
しかし・・・5分もすると・・・体が崩壊し・・・シんでしまうんだ。
あの薬は全て破棄したと思っていたのだが・・・。」
イササカさんは震えながら言っていた。

「イクラちゃーん、大丈夫ですか?」
無邪気に歩み寄るタラちゃんの体が吹っ飛ぶ。
イクラちゃんは腕を振り上げていた。動きが見えなかった。
タラちゃんは気を失ったようだ。

「ホホホホ。そうよ、イクラ!いい子ね。みんな頃しちゃいなさい!
威張りつくすサザエさんも、カツオちゃんも、タラちゃんも
バカなノリスケのようにみんなシねばいいのよ!!!!!!!!!!!」
タイ子おばさん・・・やはりこの人も狂ってる・・・。
ノリスケおじさんを頃したのも多分この人だろう・・・。

77 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 02:31:08.76 ID:k/y1baTW0
「ヴアァァァーブウゥゥゥーーー!!!!!」
イクラちゃんが消えた・・・目では追えないスピード。
背中に激痛が走る。体が宙に浮き壁がスゴイ勢いで近づいてくる。衝撃。
後ろからイクラちゃんに殴られ壁に激突・・・気付くのに時間がかかった。

「く・・・」
体が思うように動かない・・・イササカさんも吹っ飛ばされていた。

またイクラちゃんが消えた。
気が付くとイクラちゃんはイササカさんの胸ぐらを掴み床に叩きつける。
イササカさんの悲鳴。かろうじて生きているようだ。
どうする・・・。俺は考える。

「イクラちゃん・・・こっちだ、そんな老人いたぶってないで、かかって来い。」
賭け。俺はイクラちゃんに言うと同時に、
力を振り絞って飛び込み前転のように跳んで転がる。

見えないスピードで動くイクラちゃんを振り切るには、
イクラちゃんが動く前にこっちが動くしかない。
案の定、さっきまで俺がいた壁際に腕を振り下ろしたイクラちゃんがいた。

イクラちゃんの足元には俺が新宿で買ったダイナマイトが火の付いた状態で転がっている。

・・・爆発

78 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 02:37:20.64 ID:k/y1baTW0
爆風で少し飛ばされた。耳鳴りがする。誇りで咳き込む。
壁と床の一部が爆発により跡形もなくなり外が見えている。
イクラちゃんは・・・よろめき、傷を負いながらも立っていた・・・。
あの爆発でシなないのか・・・。

「ヴァァァーブゥゥーー・・・。」
イクラちゃんの目が光っている。
イクラちゃんは動こうとしたが両足が千切れフラついていた。

チャンス
俺は銃に飛びつきイクラちゃんに向かって引き金を引く。
撃つ。撃つ。撃つ。

一発弾が命中するごとにイクラちゃんはフラつき、
壁に開いた穴に近づいていく。

「落ちろーーー!!!!」
最後の弾丸がイクラちゃんに命中し、
何かにしがみつこうと伸ばした手が空をつかんだ。

「ヴァァァーブゥゥ!!!!!!!!!」

イクラちゃんは9階の高さから落下した。
落ちる間際、イクラちゃんと目が合った。悲しい目。
ごめんよイクラちゃん。俺もすぐそっちへ行くから。俺を呪ってくれ。

例え、薬の力でシななかったとしても、
もう1度ここまで登ってくる前に薬の副作用でシんでしまうだろう・・・。

79 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 02:43:05.51 ID:k/y1baTW0
「ちっ・・・くそ、イクラ・・・役立たずめ・・・。」
タイ子さんは怒りの形相でつぶやく。

「いたたたた・・・。年寄りに何て事するんだ・・・。しかし・・・すごいな、カツオ君。
良くやった。さすがにもうダメかと思ったよ・・・。」
イササカさんが立ち上がる。
俺は仕方なかったといえ、従兄弟の息子を頃したのだ。良くやった訳がない。

「タイ子おばさん・・・。ノリスケおじさんが待ってるよ。」
俺は銃のマガジンを入れ替え構えた。

「カ、カツオちゃん・・・違うの、私は全部サザエさんに頼まれたのよ。
私は悪くないわ。こ、頃さないで・・・。」
見開いた目。卑屈な笑顔。
苛立ちが体を熱くする。

「ノリスケおじさんを頃したのは・・・タイ子おばさんだね。」

「そうよ、あの人、クズの癖に私が教団にいるの文句言うし、私が他の男と寝たくらいで
ギャーギャー騒ぐし、シんで当然なのよ。」

「イクラちゃんは・・・情報を持ったノリスケおじさんのシ体を抱えて被害者の会へ連れて来た。
多分、薬でおかしくなっても本能的にわかってたんだよ。みんなを救う方法を。
いや、タイ子おばさんを救う方法を。」

82 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 02:47:05.19 ID:k/y1baTW0
「・・・イクラは薬でおかしくなってたのよ?・・・そんなはずないわ。」
タイ子おばさんは動揺していた。

「あの薬は・・・欠陥だらけだったよ。」
イササカさんは傷だらけの体を引きずるように近づき、
哀れみの目でタイ子おばさんを見て言った。

「そんな・・・イクラ・・・嘘よ。そんなの。う、う、嘘・・・よ。」
タイ子おばさんはフラフラとイクラちゃんが落ちた壁の穴の方へ向かう。

「イクラ・・・私あんなに酷いことしたのに・・・。怨んでも良かったのに・・・ゴメンネ・・・。」
タイ子おばさんの体が宙に浮く。一瞬の出来事だった。
俺は駆け出すが思うよう体が動かなかった。間に合わない。タイ子おばさんは地上へダイブした。

「・・・」
ノリスケおじさんを自分の手で頃し、イクラちゃんの人生メチャクチャにしたタイ子おばさん。
シぬ以外に救いはなかったのかもしれない。そう思いたかった。

83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/18(金) 02:48:10.67 ID:YD8b+pmWO
>>1
イクラちゃんは女の子だぞ

85 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/18(金) 02:50:38.46 ID:1PP3S7JD0
>>83
えっ?

※男の子です

86 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 02:51:28.82 ID:k/y1baTW0
気を失っていたタラちゃんを起こし、イササカさんと肩を支えあいながら10階へ向かう。
姉さん・・・もうすぐだよ。もうすぐ頃してあげるよ。

10階・・・趣味の悪い黒と赤のインテリア。
どこかの民族が儀式などで使っていそうな禍々しい祭壇。

「グヒッヒッヒ、やあ、やっと来たねーカツオ君。やっと来た。カツオ君
カツオ君カツオ君カツオ君カツオ君カツオ君カツオ君カツオ君カツオ君
カツオ君カツオ君カツオ君カツオ君カツオ君カツオ君カツオ君カツオ君。」
マスオ義兄さん・・・よだれを垂らし瞳孔が開いてる。薬で飛んでいるのか・・・。

「ぼーくーがー・・・あぁぁ・・・教祖のーマスオ様だ・・・。やっと来たねカツオ君。」
ろれつが回っていない。

「パパーどうしたですー?」
タラちゃんがマスオに駆け寄る。

「んんんー?君は誰だーい?カツオ君かい?ちがーうだろー?」
気が付くとタラちゃんの胸にナイフが突き立てられてる。
マスオ義兄さんの初期動作もタメもない突き。

「うわーん!!!痛いですー!!!シんじゃうですーー!!!!」
タラちゃんが泣き出した。

90 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 02:56:04.25 ID:k/y1baTW0
「な・・・、タラちゃん痛みを感じないはずじゃ・・・。」
薬の力、痛みも恐怖も無くなってるはず。

「恐らく、薬の効果が切れてきてるのだろう・・・。それで痛みが。
あの薬は定期的に服用しないとダメなんだよ。」
イササカさんが苦しそうに言う。それでアクビをしたり、気を失ったりしたのか。

「いってーですー。・・・くそ。何でナイフが・・・。お、親父に刺されたのか。」
タラちゃんの言葉使いが年相応に戻ってきている。
本当に薬の効果が切れてきたようだ・・・。

「タラちゃん、大丈夫か!?」
俺とイササカさんが肩を支え合いながら駆け寄った。

「大丈夫じゃねぇ・・・って、カツオ兄さんか!?中国行ったって聞いたけど・・・。
そんな事より・・・イササカ、テメー何してんだ!?カツオ兄さんから離れろ!!!」
タラちゃんがイササカさんを睨みつけた。

「タラちゃん、イササカさんはもう教団とは・・・くっ!!!」
しゃべってる最中、背中に衝撃が走る。
イササカさんの手にはナイフが握られていた・・・。

92 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/18(金) 02:58:33.84 ID:glSFAId3O
ハチはきっとプライミッツ・マーダーみたいになってるんだな

94 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 03:00:30.51 ID:k/y1baTW0
「カツオ兄さん!!!」
タラちゃんの声が響く。俺は倒れ込んでしまった。

「クククク・・・ハーッハッハ!!、いやーカツオ君お疲れ!」
さっきまで一人で歩けないほど怪我していたイササカさんが
ナイフ片手にはしゃいでいる。痛みを無くす薬・・・シャブでも打っているのか。

「イササカさん・・・な、何で?」
背中が痛い・・・全身ボロボロだ。血が流れすぎた。

「カツオ兄さん、イササカはお袋の・・・愛人なんだ・・・。
裏からお袋と一緒に教団を操ってやがった・・・。」
衝撃の事実をタラちゃんが言う。

「その通りだ。慈善活動とか表の仕事は面倒なんだよ。
いっそう失踪という事にしたらどうかってサザエに言われてね。裏にまわったのさ。」
通りで・・・。ずっと牢屋に閉じ込められてた割に薬の事などに詳しかった・・・。
良く考えればわかったはず。しかし興奮していた俺は思考が鈍っていた。

「まさかカツオ君がタラちゃんを抱え込むとは思わなかったよ。
最初はさっさと頃しちゃおうかと思ったけど、さすがに薬を飲んだタラちゃんを相手に
するのは骨が折れるからね。薬が切れるのを待ったのさ。」
イササカさんは得意気に語る。

「そういう事よ、カツオ。久しぶりね。」
視界の片隅に姉さんが立っていた。

96 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 03:05:17.44 ID:k/y1baTW0
「姉さん・・・。」
姉さんは笑っていた。歪んだ笑い。

「サザエー。カツオ君来たよー!今日の晩御飯なんだーい?」
マスオ義兄さんが姉さんに子犬のよう擦り寄る。

「さわらないでっていつも言ってるでしょ!?気持ち悪い!!!!」
ビシッ!!
姉さんは鞭でマスオ義兄さんを叩きつけた。

「あうっ・・・痛いけど気持ち良い!!!!きんもちいいーーー!!!もっと叩いておくれよ、サザエ。」
マスオ義兄さんは勃起していた。

「ふん!変態が・・・」
姉さんは歪んだ笑顔でマスオ義兄さんを鞭で叩いている。
高揚した笑顔で。

「おい!・・・気持ち悪い事してんじゃねーよ!!!イテテ・・・
お袋、良くも変な薬飲ませやがったな。シにかけたじゃねーか!
それに・・・リカちゃん頃したのもアンタだろ!?」
タラちゃんが傷を押さえながら牙をむいて叫ぶ。

リカちゃん・・・タラちゃんの幼馴染。頃されたのか。

「あら、タラちゃん。元に戻っちゃったの?残念ねー。昔に戻ったみたいで可愛かったのに・・・。
リカちゃんはアナタをたぶらかす悪魔の子よ。シんで当然だわ。
でもね、アナタはもういらない子。私ね、イササカ様の子供を身ごもったのよ。」

97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/18(金) 03:06:37.30 ID:9/GG75We0
カオス過ぎるwww

98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/18(金) 03:07:45.24 ID:YlwN6OPI0
タラちゃんが短髪の兄貴系でしか想像できない。

99 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 03:09:22.22 ID:k/y1baTW0
「フフフ、そういう事さ。タラちゃん。薬にも欠陥があるし君は用済みだ・・・シね。」
イササカさんが銃を構える。俺は背中の痛みをこらえイササカさんの足を蹴り飛ばした。

「うお!」
バランスを崩し、イササカさんはよろめきながら、手にしている銃を闇雲に撃ち出した。
鳴り響く銃声。何発も。

「う・・・。」
俺の脇腹に銃弾が一発めり込んだ。焼けるように熱い。

「キャー!!!」
姉さんの声

「うお、あぶねぇーって!!」
タラちゃんの声

「えー!?」
マスオ義兄さんの声

イササカさんは弾を撃ちつくし尻餅をついた。

「イテテテ、ちっ、糞ガキが!!」
イササカさんは転んだ状態で俺の背中の傷を蹴りつけてきた。

「ぐ・・・!!!」
声にならない痛み、意識が飛びそうになる。

100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/18(金) 03:10:02.74 ID:glSFAId3O
カツオ CV山寺

103 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 03:14:09.84 ID:k/y1baTW0
「あらやだ!!」
姉さんの叫びが聞こえる

「・・・マスオさんがシんでるわ・・・。」
さっきイササカが闇雲に撃った弾丸がマスオ義兄さんの頭を撃ち抜いていた。

「・・・お、親父・・・くそ・・・。」
タラちゃんがつぶやく。
どんな風になっても父は父なのだろう。

「・・・フフフ、いい様ね。薬の実験台として、お飾りの教祖として役にはたってたけど、
そんなのいくらでも代わりがいる。手間が省けてラッキーだわ。」
姉さんマスオ義兄さんのシ体に唾を吐いた。

「・・・てめー!いい加減にしろよ!!!」
タラちゃんが姉さんに掴みかかる。

「親父は・・・お袋の為ならって自分から薬の実験台になったんだろーが!!
それを、それを・・・ゆるさねぇ・・・」

ダンッ!!!
銃声が鳴り響いた。

「タラちゃん・・・さっきもういらない子って言ったでしょ?いつまで生きてるの?
ママを悲しませないでちょうだい。」
銃を構えたままの姉さんは感情の無い顔で言った。
タラちゃんは心臓を撃ち抜かれ息絶えていた。

105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/18(金) 03:15:19.51 ID:dkYdDnc9O
タラちゃんがゴンさんに見える

107 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 03:18:31.55 ID:k/y1baTW0
「タラちゃん・・・くそ・・・。」
タラちゃんは怒りの形相でシんでいた。ごめんタラちゃん、利用してしまって。
タラちゃんとの思い出が甦る。本当の弟のように慕って嬉しかった。
しかし今は思い出に耽っている場合じゃない。

「あとはカツオだけね。7年前にも言ったけど、あなたこそ『いらない子』なのよ。」
姉さんの銃は俺に向けられていた。

7年前・・・俺は大学受験に失敗して毎日フラフラ遊んでいた。
自分の将来が見えず、徐々に宗教にのめり込む家族に飽き飽きし
全てを捨てて逃げ出したかった。

本当はプロ野球選手になりたかったがそんな才能もない。
カオリちゃんとの関係も発展しそうで発展しない。
俺は日々に苛立っていた。

そんな時、イササカさんが失踪し、
マスオ義兄さんが教祖になった話を聞いた。

109 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 03:23:38.05 ID:k/y1baTW0
俺と父さんは最初、宗教に反対はしていたが、
幹部は特にお布施もかからず、家事に支障がなければ文句は言わなかった。
タラちゃんに関してはまだ宗教というモノがわかっていなかったのだろう。

しかし教団の運営に関わるというなら話は別だ。
俺は姉さんとマスオ義兄さんに抗議した。怒りに任せて怒鳴り散らしてやった。

あの頃、姉さんはもう変わってしまっていたと思う。
俺が大学に落ちてフラフラしていた事が悪霊のせいだと言い出した。

俺はさらに抗議した。さらなる怒りに任せて。自分の不甲斐なさを怒りに上乗せして。

その内、姉さんは俺に言う。『いらない子』俺のせいで将来家族に不幸が訪れる・・・。
シんだ方がいいと・・・。家族の幸せの為と。

俺は銃で撃たれ生シの境を彷徨っていたところを、中島に助けられ中国へ逃げた。

110 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/18(金) 03:26:12.13 ID:xTWkuIm10
シリアスなのにアニメでいつも流れるBGMが頭に・・・

111 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 03:27:18.87 ID:k/y1baTW0
俺は意識が飛びかけていた。今までの事が走馬灯のように甦る。

「フフフ、カツオ、わざわざ私が手をくださなくても、もうシにそうね。
7年前アナタに言った通り、アナタのせいで家族はメチャクチャよ。」

「・・・」
姉さんのせいだろ・・・?言葉にならない。

「アナタがシんだら、次は父さんと母さんを探すわ。フフフ。
あの2人もどうせ邪魔になるから頃さないと・・・。」

「・・・」
そんな事させない・・・。言葉にならない。

「あら、もう17時ね・・・イササカ様、今日の晩御飯、何食べたい?」

「・・・ゲーム・・・オーバー・・・。」
俺はかすれた声で呟く。もうそんな時間か・・・。

「そうさカツオ君、中々しぶとかったね。まぁ楽しめたよ。このゲームは君の負けで終わりさ。」
イササカさん・・・それは違うよ。

ズドーン!!!!!
地下で爆発音がして建物が揺れた。

「ゲームオーバーだよ・・・姉さん・・・。」
地下駐車場に仕掛けた歌舞伎町で買った時限爆弾。保険の為17時にセットしておいた時限爆弾。
遠くで、体の下の方で爆発音がした。

112 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 03:31:17.25 ID:k/y1baTW0
「キャッ!!何!?地震?」
姉さんが転んで持っていた銃を落とした。
俺から銃まで約10メートル。届かない。

「いや、地震じゃない・・・。爆発音がしたぞ?・・・カツオ君、貴様何かしたな!?」
イササカさんは怒り狂っているが揺れに耐えられず尻餅をついた。

「・・・」
俺は声を出さずに笑った。ざまーみろ・・・。
全て終わりだ。日のあたる道が頭によぎる。幻。

「くそ!このビルは頑丈と言えど、そう長くはもたん!おそらく数分でビルは崩壊するぞ!!
サザエ、下の階は危険だ。屋上のヘリで逃げよう!!!」
ヘリ・・・だと!?想定外だ・・・。くそ、しかし体が動かない。

「えぇ、ヘリを用意しておいたのは正解ね!でも誰が操縦するの?」
「まぁ、何とかなるだろう・・・サザエいつもヘリの操縦見てたろ?」
姉さんとイササカさんの声が遠ざかって行く。

意識が朦朧として来た・・・。俺の負けだ。
プルルルル・・・プルルルル・・・
電話の音がする。幻聴?

違う。俺の携帯が鳴っていた。

116 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 03:36:17.48 ID:k/y1baTW0
少し気を失っていたようだ。俺は力を振り絞って携帯に出た。

「・・・はい?・・・」

『もしもし、カツオか!?ワシだ!』
父さんの声・・・最後に聞けて良かった・・・。

「と、父さん・・・。」

『カツオ、今ニュースで教団本部が謎の連続爆発とやっているが、お前がやったのか!?』
連続爆発・・・恐らくダイナマイトと時限爆弾。先生に渡したUSBメモリ。もう警察とマスコミが来ているのか。

「あぁ・・・お、俺が・・・やったよ・・・。」

『カツオ!?どうした?怪我でもしてるのか!?』
父さんの声が困惑している

「・・・父さん・・・姉さんを・・・逃がしちゃった。こ、頃せなかったよ。」

『もういい、カツオ、もういいから帰って来い!そうだ、今日きゅうりを収穫した。
うまいぞー!食べたいだろ?早く帰ってきなさい!!』
父さんは電話の向こうで泣いていた・・・。

「・・・あぁ、食べ・・・たいな。でも・・・も、もう無理・・・だよ。
最後に・・・父さんと話せて・・・良かった・・・・。」

『最後だと!?バッカモーン!!!!・・・おい・・・もしもし?カツオ、聞いてるのか?もしもし!?』

117 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 03:41:10.95 ID:k/y1baTW0
俺は這いつくばっていた。姉さんの銃へ向かって這う。虫けらのように。
父さんに怒鳴られ少し元気が出た気がする。父さんと話した事、夢だったような気もする。
姉さんは悪魔だ・・・。この世を食らい尽くす悪魔だ。
逃がす訳にはいかない。最後まで諦めない

まだ遠くで父さんの声が聞こえる気がする。あれ?携帯どうしたっけ?まぁいい。
父さん、俺がんばるから・・・。ありがとう・・・。

俺は姉さんの銃を拾い、壁につかまり立ち上がった。フラフラする。血がたりない。
屋上へ続く階段を上がる。1段1段、転びながら。這うように。ゆっくりと。早く。

119 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 03:44:08.16 ID:k/y1baTW0
屋上のドアを開ける。すごい音と風。立ってるのもしんどい。
ヘリは今飛び立とうとしていた。

「やった、見よう見真似だけど飛んだわ!!さぁ、早く逃げるわよ!!!」
姉さんの声がする。

「ハハハ、少し時間かかったけど、さすがサザエ!ヘリまで操縦できるとは。愛しておるぞ!!」
イササカさんの声が聞こえる。

俺はヘリに向かって銃を構えた。食らえ・・・。
全ての悲しみと怒りを弾丸に込め
俺の魂を吐き出すように引き金を引いた。

撃った反動で俺は後ろに転び、階段を転げ落ちた。
弾は当たったか?わからない。当たった気もする。

姉さん。どうかシんでくれ。

父さん・・・母さん・・・カオリちゃん・・・

全ての音が消えた。
全ての匂いが消えた。
全ての色が・・・光が消えた。

124 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 03:47:42.10 ID:k/y1baTW0
-エピローグ-

3年後・・・

今年も熱い夏がやって来た。ここ沖縄は1年で一番夏がにぎわう。
私、大空カオリは3年前の教団解体の後、親戚を頼って沖縄に住む事になった。
小さなアクセサリー屋を経営しながら暮らしている。

3年前・・・教団本部の爆発、崩壊・・・
しかし、別件で事前に警察が突入していたので、被害者は最小限に抑えられたという。

ガレキの中から教祖のフグ田マスオ、事実上トップで副教祖のフグ田サザエ、
前教祖のイササカのシ体が発見された。
フグ田マスオとサザエは頭を銃で撃ち抜かれていたらしい・・・。

磯野君・・・。

126 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 03:50:23.18 ID:k/y1baTW0
「おーい、カオリちゃーん。ちょっとお茶にせんか!?」
「やだ、お父さんったら。大声出して恥ずかしい。」
磯野波平、フネ夫妻の声が聞こえた。
夫妻はたくさんの野菜を抱えてる。

「えぇ、おじさま!今年も大収穫ですね。」
私は波平おじさまに負けないくらい大きな声で叫ぶ。

私は沖縄に磯野夫妻を招いて一緒に暮らしている。
仲良く、本当の家族のように。
傷の舐め合いでもかまわない・・・。

127 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/18(金) 03:51:39.50 ID:dc4owYzGO
カツオ…(´;ω;`)

128 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 03:53:23.82 ID:k/y1baTW0
「あら、やだわ。もうこんな時間。そろそろ迎えに行った方がいいんじゃない!?」
おばさまは時計を見ながら言う。

「ワ、ワシは待ってるから2人で行って来なさい。」
おじさまはソワソワして逆さまに持った新聞を読みながら言う。

「もう、お父さんったら・・・。」
2人はよく喧嘩しているが本当に仲がいい。

「おじさま、おばさま、3人で行きましょうよ!・・・磯野君を迎えに。」
今日、磯野君は刑期を終え出所してくる。もうすぐ空港に着く時間だ。

もう迷わない。何があっても磯野君の隣にいよう。そして支えよう。
磯野君の望んだ、日のあたる道を歩く。・・・新しい家族と・・・。

END

136 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 03:55:38.81 ID:k/y1baTW0
本編終了です。支援ありがとうございました。
回収しきれなかった伏線や、
出すタイミングの無かった登場人物のスピンオフを考えてあります。

良ければもう少しお付き合い下さい。

138 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/18(金) 03:55:53.53 ID:7dvDLtPv0
乙!!
これからは幸せな人生を送れそうだな、カツオ

150 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 03:58:27.57 ID:k/y1baTW0
カツオ26才の夏 スピンオフ 「アナゴ君41才の夏」

甘ったるいお香の匂い。下品なピンクの照明。
女の喘ぎ声・・・。覚せい剤。

フグ田君の紹介でイササカ教に入団して数年。
俺、アナゴは教団幹部として最高の毎日を過ごしている。

今もプレイルームで、覚せい剤打った女を代わる代わる無理やり犯し、
飽きたら酒を飲み、また女を犯す。

「アナゴ様~もっとください!」
「しょうがない奴めぇ。よーし、がんばっちゃうぞー。」

女も酒もそろそろ飽きた・・・。新しい刺激が欲しい。
愛人のタイ子も、ヒステリックでうるさいし。
そう思いながらプレイルームを出る。下っ端の信者が数人慌てながら右往左往していた。

「アナゴ様!侵入者です。至急避難して下さい!!」
信者が叫ぶ。侵入者?教団本部に?バカな奴もいたもんだ・・・。
おや?誰か来る・・・あれはタラちゃん?

その瞬間、閃光が走った。

153 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/18(金) 03:59:08.75 ID:cBPUBNBM0
1度でいいからタラヲがメシウマになるSSがみたい

158 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 04:01:50.78 ID:k/y1baTW0
俺は突然の出来事に目を閉じた。風が駆け抜ける。

「・・・何だったんだ?」目を開けると、
さっきまでいた信者がみんな呻きながら倒れていた。

あれ?何かおかしい・・・地面が迫ってくる。
いや・・・俺が倒れていた。足が・・・両足が俺の体から切り離されている。
俺は気を失った・・・。

銃声で目を覚ます・・・夢だったのか?
俺は足を見るとやはり足は切り離されていた。
いやいや夢に決まっている。・・・やはり足は切り離されていた。

銃声・・・誰かが銃で次々と信者を撃ち頃している・・・。
カ、カツオ君じゃないか!?

「カツオ君、た、助けてくれ!!!」
俺は必シに叫んだ。しかし放心状態のカツオ君に声は届いていない。

真っ黒な銃口が俺に向けられた・・・。
ハハハ、使い古した女のアソコみたいに真っ黒だ・・・。

目の前が真っ赤になった。

アナゴ君41才の夏END

159 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/18(金) 04:03:04.18 ID:KVCgxir5O
アナゴさん哀れwww

167 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 04:09:55.75 ID:k/y1baTW0
カツオ26才の夏 スピンオフ 「堀川君24才の夏」

「おい堀川、もうすぐ教団本部だ。準備はできてるか?」
元酒屋という変わった経歴を持つ刑事、サブさんが興奮気味に言う。
「はい、サブさん!しかしスゴイ規模の捜査ですね。」

俺は堀川・・・。新米刑事だ。

イササカ教に監禁されていた、小学校の先生によって持ってこられたUSBメモリ。
中に入っていたデータは武器密輸や麻薬取引の証拠。
今まで証拠がなく、追い込められなかった教団に強制捜査できる。

何年もこの日の為に準備していただっけあって警察にしては迅速な対応がとられた。

イササカ教・・・元クラスメイトであり元恋人の磯野ワカメちゃんが幹部をしている。
最近ワカメちゃんが行方不明らしい・・・。

しかし現場に私情は持ち込まない。そう教え込まれてきた。

168 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 04:13:42.69 ID:k/y1baTW0

教団本部に到着すると、すでにたくさんの警察関係者やマスコミが到着していた。
救急隊、レスキュー、消防、それぞれスタンバイしている。
建物から多くの信者が連れ出されていた。中には何か叫んでいる裸の男女もいる。いいご身分だ。

俺とサブさんは車を降りると同時に爆発音。ビルからガレキが振り落ちてくる。
どうやら9階部分の一部が爆発して壁に穴が開いたようだ。
今のところガレキでの被害者はいない。

多くの悲鳴、叫び。

俺もその場に伏せて様子を伺う。
今度は銃声。何発もの銃声。俺は空を見上げ驚愕した・・・。

何と、人が落下してくる!!
さすがに9階から落下した衝撃に耐えられず落ちた人は即シしたようだ。

俺はビルへ向かい駆け出していた。ワカメちゃんの顔が浮かんだから。

「ま、待て堀川!!!」
サブさんの声がする。

170 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 04:17:40.80 ID:k/y1baTW0
俺は教団本部の正面玄関からロビーに入る。
ワカメちゃん・・・どこだ?9階から人が落ちて来たのを思い出す。

俺はエレベーターを見つけたが電力が切れているのか動きそうもない・・・。

「おい堀川、突入隊が奥にまだ動くエレベーターを見つけたらしい、行くぞ!!」
サブさんが奥へ向かって走って行く。
「は、はい!」
俺も走り出した。

エレベーターを見つけサブさんと乗り込む。
「サブさん、何で来たんですか?」

「半人前の癖に無鉄砲な後輩がいてな、そのお守りだ。」
サブさんは笑っている。どっちが無鉄砲なんだか。

「お前がビルに入った後・・・もう1人9階から人が落ちてきた。
堀川、何があるかわからない。気をつけろよ。」
サブさんはいつの間にか真剣な顔になっていた。

171 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/18(金) 04:18:16.14 ID:YlwN6OPI0
サブさんマジパネェす

172 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 04:20:21.02 ID:k/y1baTW0
エレベーターが9階に到着した。
俺とサブさんは銃を構え飛び出す。誰もいない。

「堀川、こっちだ!!」
サブさんは上へ行く階段を見つけて走り出していた。

10階
おびただしい血痕。2つのシ体。
1人は教祖のマスオだった。

!?どこからか人の声が聞こえる。ノイズ混じりの声。
通話中の携帯が落ちていた。

「・・・もしもし?」
サブさんが携帯を拾い上げ話し出す。

「・・・はい、私は警察の者です。・・・えぇ・・・え?もしかして磯野波平さんですか?
僕です、三河屋のサブロウです。・・・ハイ・・・何ですって?カツオ君が!?・・・」
サブさんがキョロキョロ何かを探し出した。
カツオ・・・確かワカメちゃんのお兄さんだ。

「わかりました、探してみます。」
サブさんが電話を切る、俺は屋上へ上がる階段を見つけ駆け上がった。

174 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 04:24:26.45 ID:k/y1baTW0
階段には血痕が残っていた。銃声・・・上から。
俺は血痕の残る階段を駆け上る。

階段の途中で人が倒れていた。磯野カツオさんだ。
かろうじて生きているが虫の息。

後から追いついて来たサブさんにカツオさんを任せ
俺は開きかけた屋上への扉を押す。

屋上にはヘリが飛んでいた。どんどんヘリが大きくなってきた。
・・・突っ込んでくる!
「サブさん逃げてー!!!」
俺は叫びながら階段を飛び降りた。

スゴイ衝撃・・・ヘリはビルに突っ込み大破していた。
ヘリの残骸の中に副教祖のサザエが頭を撃たれシんでいる。
もう1人、元教祖のイササカ・・・シんでいる。

「おい堀川!もうビルがもちそうにない。逃げるぞ!!!」
サブさんがカツオさんを背負い叫んでいた。

ワカメちゃん・・・本部にはいないのか?・・・もうこの世にすらいないのか?

176 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 04:27:32.65 ID:k/y1baTW0
俺とサブさんは階段を駆け下りる。
俺達が乗ってきたエレベーターはもう動かなかった。
ひたすら駆け下りる。
カツオさんを背負ってるのにサブさんの方が若干速い。
どうなってんだ?この人の体力。

5階まで降りた時、俺は絶望した。
下へ続く階段が崩れ落ちている。
揺れが激しくなってきた・・・ここでシぬのか・・・。

「堀川、諦めんじゃねぇ!こうなったら飛び降りるぞ!!」
サブさんは背負ってたカツオさんを前で抱っこすると
背中から窓へ突っ込み落ちていった。無茶すぎるだろ。

「サ、サブさーん!!!」
俺は慌ててサブさんが落ちた窓から下を見た。

地上では人が飛び降りれるよう巨大なマットが置かれており
サブさんはマットの真ん中で何か叫んでいる。

後ろで爆発。爆風に押されるように俺も飛び降りた。

177 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/18(金) 04:29:04.07 ID:9/GG75We0
そらビールケースかついで鍛えられとるからなぁ

178 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 04:31:37.31 ID:k/y1baTW0
俺もサブさんも助かった。
カツオさんも生きてはいるがまだ安心はできない。

「カツオ君は昔から丈夫だったし、まぁ大丈夫だろ。」
サブさんはアクビをしながら言う。カツオさんは救急車で運ばれていった。
今回の教団本部の爆破・・・カツオさんの仕業だろうか?そんな気がする。
何にしても重要参考人だ。生きてもらわねば。

「サブさんは下にマットがあったの知ってて飛び降りたんですか?」
俺は真っ黒になった顔を拭きながら聞く。

「ん?知らないよ。まぁ5階くらいなら飛び降りても助かるかなって思っただけだ。」
クラクラする。助かるわけない。俺が呆然としてると
「おいおい冗談だよ。堀川がビルに突入した後、また人が落ちてきたって言ったろ?
その時レスキューの奴らがマットを用意するって言ってたからな。」

「だからって確認もせずに飛び降りるなんて・・・。」

「ハハハ、まぁ助かったんだ!いいじゃねーか!!」
サブさんは笑いながらタバコに火を付けた。

179 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/18(金) 04:33:00.04 ID:dc4owYzGO
かっけぇwwww

180 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 04:34:48.97 ID:k/y1baTW0
その後カツオさんは一命を取りとめ、生き残った家族や恋人と感動の対面をはたした。
・・・ワカメちゃんは・・・イササカの長男に頃されたらしい。

カツオさんはサツ人、建造物等損壊、器物損壊、銃刀法違反、などで起訴されたが
正当防衛や教団壊滅への功績が認められ、異例の超法的措置がとられる。3年の刑期で済んだ。

俺はワカメちゃんを奪った教団が許せない。
しかし現場に私情は持ち込まない。そう教え込まれてきた。

堀川君24才の夏END

182 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/18(金) 04:36:28.38 ID:9/GG75We0
裏のおじいちゃんはどうなったんだろう

184 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 04:38:30.76 ID:k/y1baTW0
カツオ26才の夏 スピンオフ 「中島26才の夏」

体が痛い。耳鳴りがする。俺・・・何してたんだっけ?
目を開けると白い天井が見えた。ここは・・・どこ?

「あら?やっと目を覚ましたのね。先生呼んでくるわ。」
看護婦さん・・・病院か・・・俺、確か中国にいたはずなのに・・・看護婦さん日本語だったな。

2週間近く病院で眠っていたようだ。
俺はあの時、磯野を逃がす為タラちゃんに手榴弾を投げた。
爆風に巻き込まれて俺は吹っ飛んだとこまでは覚えてる。
そこからの記憶が曖昧だ。

タラちゃんが俺を担いでどこかへ運ぼうとしてくれた気がする。定かではないが。

病院の先生の話によると、
海岸で釣りをしていた人が倒れている俺を発見し救急車を呼んでくれたようだ。

別の釣り人は、沖のほうから俺を担いだ青年が泳いで来て、
青年は砂浜に俺を置くと走り去って行くのを見たそうだ。

ノリスケさんから聞いた裏の実行部隊のタラちゃん・・・本当に危険な人物だったのだろうか?

とにかく俺は日本へ帰って来た。

187 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 04:40:26.84 ID:k/y1baTW0
世の中は教団本部の崩壊と、教団幹部のほとんどがシ亡したニュースで持ちきりだ。
おそらく教団は解散する。世界中でニュースは流れているようだ。

磯野は様々なメディアに教団を壊滅した英雄として紹介されていた。
磯野の無罪を望む声も多く、数多くの署名が集まったと聞く。

しかし磯野本人は自分の犯した罪を償いたいと刑を望んでいるようだ。
さんざん苦しんできたはずなのに・・・バカな奴だ。本当にバカな奴・・・。

188 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 04:43:01.94 ID:k/y1baTW0
刑期を終えた磯野は沖縄でカオリちゃんと結婚した。
あの暗い目をしていた磯野が、幸せそうに笑い、明るい少年の頃のような目をしていた。
家族が生んだ奇跡だろう。

今日は磯野が久しぶりに東京へ遊びに来る。
夜は小学生時代の恩師と3人で酒を飲む約束だ。

羽田空港まで磯野を向かえに行った。

「よう中島、待たせたか?」

「いいや、今来たとこだよ。」

「先生との約束の時間まで、まだあるな・・・。どうしようか?」

「磯野・・・野球しようぜ!」

中島26才の夏END

189 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/18(金) 04:44:27.78 ID:PT6dpBRpO
出たwwwwwwww

190 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/18(金) 04:44:54.58 ID:gEh7TergP
野球しようぜ!

191 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 04:45:00.75 ID:k/y1baTW0
カツオ26才の夏 スピンオフ 「裏のおじいちゃん、おばあちゃんの夏」

ワシらは磯野家の裏に住んでいたおじいちゃんとおばあちゃん。
10年前に寿命を向かえ今は天国で暮らしておる。

「じいさん聞いたかい?サザエさんとマスオさん、ワカメちゃんが地獄に落ちたらしいいよ。」

「おぉ、悲しい事じゃのー。しかしワカメちゃんも地獄とはなぁ。」

「しょうがない。あの子も随分悪い事しとったからなぁ。自業自得じゃ。」

「そうじゃな。自業自得じゃ。」

「ばあさん、タラちゃんは天国に来たらしいのう。」

「らしいのう。1人でかわいそうに・・・。きっと寂しがってるんじゃなかろうか。」

「よし!タラちゃんを養子にしよう!きっと喜ぶはずじゃ!!」

「それは良い案ね。さっそく向かえ行きましょう。」

193 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 04:48:20.56 ID:k/y1baTW0
「ほら、ばあさん、早くせんか!!きっとタラちゃん泣いとるぞ!?」

「はいはい、今行きますよ。おや、あそこにいるのタラちゃんじゃないかい?」

「ホホー、そのようじゃ。大きくなったのー。おーい、タラちゃん!」

タラオ「ん・・・?おっ、裏のジジィとババァじゃねーか。久しぶりじゃん。元気か?ってシんでんのか。
これからリカちゃんとデートなんだ。邪魔すんなよ?小遣いなら貰ってやるけどな!ハハハ。」

「・・・それは無いわ。」
「えぇじいさん。それは無いわ。」

裏のおじいちゃん、おばあちゃんの夏END

195 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 04:52:10.88 ID:k/y1baTW0
カツオ26才の夏 最後のスピンオフ 「タマの夏」

俺の名前はタマ。年老いたオス猫だ。
今は波平の元で静かに暮らしている。

俺は逃げた。波平と共に。血塗られた過去。

7年前・・・
最初はイタズラ半分だった。
宗教というものにハマっていく磯野家。
あまり俺とは遊んでくれなくなり、餌もくれなくなった。

同じような環境のイササカ家のハチと共に仕返しを思いついた。

俺は元凶と思われるサザエ、ハチはイササカの食事に
俺達の糞と尿をミックスしたスペシャル団子を混入してやった。

腹でも壊せばいいと思っていたけど予想外の出来事。2人は発狂し狂った。・・・狂ってしまったニャ!
変な薬の開発を行ったり、人体実験と称してイササカ家の奥さんをを頃したり。
カツオも頃されかけ、外国へ逃げたという。他にも多くの人が頃された。

そう俺が全ての元凶。俺がこの街の狂気を作った。
いまはハチも寿命でシに、俺だけが知っている真実。誰にも知られる事はないだろう。

血塗られた過去だ・・・ニャ。

タマの夏END

197 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/18(金) 04:54:54.45 ID:DRd7UIQ4O
>>195
おいwwww

208 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/06/18(金) 05:00:37.83 ID:gEh7TergP
>>195
しまったwwwこいつがいたんだったwwww忘れてたwwwww

199 :1 ◆mCj8325YfY :2010/06/18(金) 04:56:18.45 ID:k/y1baTW0
これで全部終わりです。
スピンオフ長すぎたwwwスマセンwww
登場人物多すぎたので片っ端から頃してしまった。

上のほうで書かれた通り以前に何作かドラえもんSSを書きました。
あと同じく上で書かれていた通り馳星周、大好きです!

勢いで書いたので駄文や矛盾、色々すみません。
またそのうち何か書くので見かけたら読んでみて下さい。

本当にありがとうございました!!!

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