唯「4人と1匹。禁煙席でお願いします」

6 9月, 2011 (01:50) | けいおん! | By: SS野郎

1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 04:46:53.98:PnI8QVLY0

店員「すいません、当店は猫ちゃんお断りしてるんですよ……」

梓「!」ガーン

律「あらま。どうする? 他いく?」

紬「でも他にお店ないし……」

唯「じゃああずにゃんはしばらく外でお留守番だね」

澪「いい子にしてるんだぞ」

梓「……わかりました」

店員「よろしいですか?」

唯「はい」

店員「四名様入りまーす」


9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 04:50:29.21:PnI8QVLY0

梓「……お腹すきました」

JK「キャーかわいー!」

JK2「えらいねぇ、御主人様待ってるの?」ナデナデ

JK3「いい子だね」

梓「……」グゥー

JK「お腹すいてるっぽいよ!」

JK2「あたしお菓子あるけど!」

JK3「えー猫ってチョコたべていいのー?」

JK1「さー?」

ゲラゲラ ゲラゲラ

梓「……」イラッ

15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 04:56:20.61:PnI8QVLY0

梓「……はぁ、最近はペットお断りなお店多くてヤだな」

梓「てかペットじゃないし」

梓「……私って何」

野良猫「こんにちわ」

梓「あ、ども……」

野良猫「最近よくみるね。この辺の子?」

梓「そうですけど」

野良猫「主人と一緒にひっこしてきたの?」

梓「いえ……」

野良猫「あれ? じゃあ君はどこからきたの?」

梓「どこからって……」

ナレーション:梓には悩みがあった。深い深い悩みだった。

ナレーション:しかしそれは人に言っても理解できない。いや、届きもしないのだ。

19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 05:01:58.14:PnI8QVLY0

野良猫「森で生まれでもしたいのかい?」

梓「……私、実は人間なんです」

野良猫「はぁ?ww」

梓「……ほんとです」

野良猫「嘘つきは嫌いだな。あとついでに飼い猫も嫌いだった。じゃあね」

梓「うぅ……ホントなんですけど」

野良猫「猫はまっすぐ生きるもんさ」

ナレーション:それは数ヶ月前のこと。

ナレーション:梓たちは部室の物置の古い箱から、とあるものを見つけた。

唯『まぁまぁ! いいからいいから!』

梓『嫌ですよぉ、そんな汚い猫耳……』

澪『どうして物置にこんなものが……』

唯『つけてみようよ! あずにゃんはどんな猫耳でもきっと似合うよー』

梓『むぅ……一瞬だけですよ』

21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 05:06:40.66:PnI8QVLY0

スチャ

梓『……あ、なんか変な感じします』

唯『おおお! 可愛いねぇ』ナデナデ

梓『えー、そうですかね』

律『どうでもいいけどほこりが舞ってるぞ、へくちっ』

梓『というわけで外しますね』

紬『もっと見たかったのに!』

唯『そうだそうだー』

梓『はいはい。また今度ー』

梓『……あれ?』

唯『ほえ? どうかした?』

梓『あれれ……んぐっ、あれ?』グイグイ

唯『あずにゃん?』

梓「……あ、あ゛」

梓『あ゛あ゛ぁぁあああ! 猫耳がとれませんん゛ん゛!!!!』

23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 05:11:20.31:PnI8QVLY0

唯『とれないの?』 

梓『とれないです……』

律『なんだよひっぱってやろうか?』

梓『……ほんととれないです』

律『よっしゃいくぞー』

ググッ

梓『あいだだだだ、勘弁してください髪の毛ちぎれちゃいます』

律『あっれー、なんでとれないんだよ』

紬『ねぇ……これ、付け根のとこ』

澪『……梓、ちょっとみせてみろ』

梓『はい』

澪『……くっついてないかコレ』

梓『はい?』

澪『……髪の毛っていうか、頭皮とくっついてるような……』ブルブル

24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 05:17:04.40:PnI8QVLY0

梓『う、嘘ですよね……』

唯『ボンド?』

梓『ボンド塗ったんですか!?』

唯『塗ってないし……』

梓『……』

紬『まさにオカルトね……』

澪『オカルト!?』

律『ひょっとして化け猫耳!』

澪『ひぃいいい!!』

梓『いやあああああ! とってくださいとってください!!』

唯『無理にひっぱったらあずにゃんの頭の皮がちぎれちゃうよ……』

梓『えぐ……』

律『そうだ! オカルト研! あいつらなら何かわかるかも!』

梓『オカルト研って……』

唯『いこうあずにゃん! こんなの絶対おかしいよ!』

29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 05:23:02.34:PnI8QVLY0

ナレーション:そして一行はオカルト研へと向かった。

ナレーション:だが……。

唯『あけて!! あけてください!! あずにゃんの猫耳が!!』

ドンドン

律『うちの後輩のピンチなんだよ!! あけてくれって!!』

<イケナイ、ソレハイケナイ
<アケルコトハデキナイ アァ、オソロシイ

律『なんなんだよ!! 教えてくれよ!! 頼む! オカルト詳しいだろ!!』

<アケルコトハデキナイ イケナイ
<イケナイ イケナイ イケナイ イケナイ

澪『……どうしたんだろう』

紬『梓ちゃん、体に変わったことはない?』

梓『……えぇ、まぁ……とれない以外には』

唯『少しでいいから! お願い話をきいてよ!!』

<……ソノコハ、アキラメタホウガイイ

30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 05:29:21.25:PnI8QVLY0

唯『……どういうこと?』

律『扉ごしでいい……教えてくれないか……』

<……動物の野生なる呪いは、時に人のそれを越える

律『……?』

<……カエッテ、ハヤク

律『おい、意味わかんねーって! 呪いって!? やっぱ呪いなのか!?』 

梓『あの……私……』

<キィェエエエエ!!!!
<悪霊退散悪霊退散悪霊退散悪霊退散

梓『ひっ!!』

唯『い、いこ、あずにゃん……きっとお風呂で頭を洗えば取れるよ』

梓『……』

紬『心配しないで。きっと大丈夫よ』

澪『……』ピクピク

律『あ、失神してやがる』

32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 05:35:54.51:PnI8QVLY0

ナレーション:その日は解散となった。

ナレーション:梓は帰宅し、早速風呂場へと向かい、熱いシャワーで頭を流す。

梓『とれろ……とれろ!』

ザァァァァ

梓『とれろ……とれろ!!』

ザァァァァ

ナレーション:しかし、それが外れることはなかった。

ナレーション:梓は落胆し、同時に絶望した。

ナレーション:鏡で見てみるとよくわかる、唯たちの言うようにそれははっきりと自分の頭に溶け込んでいるのだ。

梓『……私の、猫耳……』

梓『……う、あ……』

梓『どうして……とれないのよ……』

梓『最悪……』

33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 05:44:20.26:PnI8QVLY0

ナレーション:翌日、梓は頭巾をかぶって登校した。

ナレーション:事情をしらないクラスメートに笑われた。

ナレーション:ただ純と憂だけは、けいおん部の先輩と等しく、真剣に梓の猫耳に向い合ってくれた。

純『呪いねぇ。なんか悪いことでもした?』

梓『してない……』

純『ほんと? 猫いじめたりしてない?』

梓『してないってば』

憂『お姉ちゃんずっと心配してたよ……』

梓『……』

憂『私のせいだ私のせいだってずっと悔やんでた……』 

梓『……唯先輩は悪くないよ』

憂『でも、とれないと困るよね……』

梓『オカルト研にいったけど、中に入れてもくれなかった』

純『そっか……とりあえず色々調べてみるしかないね』

38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 05:49:54.35:PnI8QVLY0

お昼休み

純『よぅし。食べ終わったら図書館で調べてみようよ!』

憂『そうだね。オカルト関係の本とかあるかな?』

純『パソコン室ってつかえるっけ?』

憂『許可とればお昼休みだけなら使えたはず』

純『じゃあそういうことで……ん、梓?』

梓『はふはふ、がつがつ。ムシャムシャ』

純『あはは、何さそんなにがっついて。お弁当は逃げやしないよ』

梓『がつがつムシャムシャムシャ!』

純『梓……?』

梓『がつがつ、モグモグ、ムシャムシャムシャムシャムシャムシャムシャ』

憂『……? 急ぐ気持ちはわかるけど……』

梓『ゴクン。ふぁ~』

純『……』

39:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 05:54:51.48:PnI8QVLY0

梓『にゃむ……おやすみ……』

純『梓!』

梓『!!』

純『こっちは真剣に考えてんのになによそれ!』

梓『えっ、え!?』

憂『純ちゃん落ち着いて……』

純『ご、ごめん。でもさー梓そういうのよくないと思うな、ほんとよくない』プリプリ

梓『私……なにかした?』

純『は?』

梓『あれ……お昼休みだよね。お弁当たべなきゃ』

純『いやいや今食べてたし。どんなボケだ』

梓『食べた……っけ? そういえば食べたような……あれ』

純『あ、あんた……やっぱり』

梓『……』

憂『梓ちゃん……呪われてるよ……』

41:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 06:04:07.47:PnI8QVLY0

…………

梓「きいてます?」

野良猫「ふぁ~ぁ、聞いてるよ。作り話が得意なんだね」

野良猫「まぁそういう猫がいてもおかしくはない。猫は自由で無限だからね」

梓「作り話じゃないんですけど……」

野良猫「証拠をみせてほしいな。君がもともと人間だっていう」

梓「……」

野良猫「ほら、やっぱり。嘘つき」

梓「この体じゃ無理なんです」

野良猫「人にほだされた猫はすぐ嘘をつくんだ。そんなとこだけは似るんだね」

野良猫「またね。名前はなんて言ったっけ」

梓「中野梓です」

44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 06:10:14.77:PnI8QVLY0

唯「わぁあずにゃんおまたせ~」

ナデリナデリ

梓「……唯先輩」

澪「いい子に待ってたな」

律「このあとどうする?」

唯「解散?」

澪「いやいや、ミーティングだろ」

律「今さんざんしたじゃん」

澪「唯の家いけるかな」

唯「いいよー」

紬「じゃあおじゃまするね」

唯「憂に電話するー、いまなら晩ご飯みんなの分間にあうかも!」

律「なんだか悪いなぁ」

46:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 06:15:08.51:PnI8QVLY0

唯「あ、もしもし憂ー? いまからさー三人大丈夫?」

唯「うん、いつもの。けいおん部」

唯「じゃあよろしくねー」

唯「やった! オムライスだって!」

律「へぇ。おいしいよな憂ちゃんのオムライス」

澪「晩ご飯いらないってママにメールしとかないと……」

唯「あずにゃんもいこうねー、よいしょ」ダキッ

梓「……降ろしてください。自分で歩けます」

唯「にゃーにゃー♪ あずにゃんは今日もゴキゲン~♪」

梓「歩けますってば」

唯「んーどうしたのかなー。待たされていじけてるのかな」

唯「ごめんねー、あずにゃんもパフェ食べたかったよねー」

澪「猫ってパフェ食べて平気なのか」

律「さぁ?」

49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 06:21:32.70:PnI8QVLY0

梓「唯先輩のバカ」

唯「そういえばさー、駅前にケーキバイキングのお店できたんだよ!」

梓「律先輩のバカ」

律「おー、そりゃ一度行かないとな!」

梓「澪先輩のバカ」

澪「律はたべすぎて太ってしまえばいい! うんそれがいい!」

梓「ムギ先輩のバカ」

紬「たまーにりっちゃんがうらやましくなる……いくら食べても太らないなんて……ずるい」

梓「みんなバカ……」

唯「ふんす! 食べても一生懸命演奏してカロリーを消費すれば余裕です!」

律「澪もムギもドラムやればいいんだよ! 汗かくぞー、あっはっは」

澪「……なるほど」

紬「……いいかも」

梓「……」

野良猫「ほら、わかったろう? 君はただの猫。所詮は愛玩動物さ。決して人の輪には入れない」

52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 06:28:04.82:PnI8QVLY0

律「お、もう一匹登場」

澪「なんか品のない猫だな」

唯「澪ちゃんひどすぎ!!」

紬「こっちをじっと見てるわ……」

梓「……」

野良猫「ずっと人といれば、自分も人だったような気もするだろうさ」

野良猫「でもそれは幻影。君は夢見ているだけ」

梓「そんなことない……私は確かに人間だった。ううん、いまでも人間。中野梓っていう……猫じゃなくて」

野良猫「そう思い込むことが幸せなら、それでいいけどね」

野良猫「だけど君は不幸そうな顔をしているよ。だからもう忘れたほうがいい」

野良猫「って、野良なんかの意見を聞き入れる耳はないか。飼い猫っていつもそう」

澪「猫どうし会話してるのはじめてみたかも」

律「たいてい猫って喧嘩してるよな」

唯「きっとこの子はあずにゃんの恋人、じゃなくて恋猫!なんだよ」

紬「……そうなのにゃんこちゃん?」

56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 06:37:02.23:PnI8QVLY0

唯「猫どうしってどんな会話してるのかな?」

澪「きっと、あそこのお魚はおいしいにゃん!とか!」

律「ないない」

紬「きっとお天気の話よ」

律「ないない」

梓「……」

野良猫「不憫だね。猫って以外と饒舌なのにさ」

野良猫「まぁなにかあったらこっちへおいで。野良暮らしも悪くはないよ」

野良猫「おいしいものはなかなか見つからないけどね」

梓「遠慮します。私は元の姿に絶対にもどるから」

野良猫「そうかい。人になれたら是非飼ってくれると嬉しいな」

梓「野良がいいって言ったくせに」

野良猫「猫はお天気よりきまぐれなのさ」

梓「……」

野良猫「君もきまぐれに生きるといい。人のように未来を憂うことは猫には必要ないのだから」

59:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 06:42:33.26:PnI8QVLY0

ナレーション:野良は梓の心に揺さぶりを与え、去っていった。

ナレーション:唯の腕に抱かれ、梓は考える。

ナレーション:『このまま自分はどうなるのだろうか』『自分とって幸せとは何か』と。

ナレーション:そして一行は平沢家へと辿り着く。

唯「おいでやす」

憂「いまお茶用意しますね」

律「いやー気つかわずに、ご飯もいただいちゃうんだし」

紬「ほんとできた妹さんね」

憂「あ! またどろんこ猫連れてきて!」

唯「いいじゃん! 私のお友達だよ!」

憂「その子なんなの?」

唯「さぁ……? 妙になつかれてるんだよね」

梓「……」

62:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 06:48:58.64:PnI8QVLY0

ナレーション:人々の記憶から、中野梓という存在は消えた。

ナレーション:いや、現在進行形で薄れていっていると言った方が正しいだろう。

ナレーション:梓はもはや人間として、誰かに知覚されることはない。

ナレーション:それほどまでに猫らしい猫なのだ。

ナレーション:あれはほんの数週間前のこと。猫耳に取り憑かれて数日後。

梓『ねぇ、唯先輩』

唯『なぁに?』

梓『最近よく眠たくなったり、やけに爪をとぎたくなったり』

梓『虫をつかまえてみたり、水が怖かったりするんです』

唯『それって?』

紬『猫みたいになってるってこと……?』

梓『そうとしか……』

唯『あずにゃん猫になっちゃうの?』

66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 06:55:34.07:PnI8QVLY0

梓『私……どうなるんですか?』

唯『……あずにゃん……可哀想』

梓『うぅ……最悪です。相変わらず猫耳は恥ずかしいし』

唯『でも可愛いよ』

梓『えっ』

唯『でさぁ、ムギちゃん! いまね、駅前で工事してるトコあるでしょ?』

紬『うんうん、それが?』

梓(あれ……?)

唯『なんとなんとー! ケーキ屋さんなんだよ!』

紬『へぇ~! できたら早速行こうね!』

梓『あの! 唯先輩!! ムギ先輩!!』

唯『にゃあにゃあ♪ あずにゃんこは甘えん坊』ナデナデ

唯『あずにゃんもいこうねー』

梓『あれ……あれれ?』

紬『楽しみね♪』

69:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 07:01:17.15:PnI8QVLY0

ナレーション:梓は着実な変化を肌で感じていた。

ナレーション:そして、変化とはいつでも自らのみに起こることではないと理解した。

ナレーション:やがて梓は、けいおん部ではなくなる、生徒ではなくなる、人ではなくなっていく。

唯『じゃーん! 今日のケーキは?』

紬『モンブランとー、カスタードプリンとー、ビターチョコケーキとー、苺タルトとー、チーズケーキ!』

澪『じゃあ先生はビターチョコでいいかな』

梓『えっ』

律『おっし、私モンブランもーらい!』

唯『えーずるい! じゃあ私苺タルト!』

梓『あ、あの……私は』

紬『あれ? あ、そっか』

澪『そうだよな。先生の分は今日は無しっと』

紬『バカね私。お茶もなんで4人分しか入れてないんだろう……ごめんね梓ちゃん』

梓『……いえ』

72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 07:08:09.38:PnI8QVLY0

ナレーション:だんだんと、だんだんと薄れていく。変わっていく。

ナレーション:人にとって関わりのない猫や犬は、所詮背景である。人同士ですらも。

梓『ただいまー』

梓母『あら梓おかえり。どうしたの?』

梓『……』

梓母『泣いてるの?』

梓『……』

梓母『学校で嫌なことあった?』

梓『ううん……』

梓母『ここのところちょっと調子が悪そうね。風邪でも引いた?』

梓『……別に。それよりさ、この耳、どう思うかな』

梓母『耳? 耳がどうかした? 耳鼻科いく?』

梓『ううん……私ちょっと頭いたいからもう寝る』

梓母『梓……おかあさん心配よ……』

74:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 07:13:00.69:PnI8QVLY0

梓『……うぅぅぅうう、あ゛ぁあああ』

梓『なんで……こんなことに……』

梓『私は……どうなってしまうの』

梓『猫になんてなりたくないよ……』

梓『あ、爪とぎたいような気がする』

ガリガリガリガリガリ

ガチャ

梓母『梓うるさい! なにしてるの!』

梓『……』ガリガリガリ

梓母『ってなんだ……爪といでるだけなのね、びっくりしたわ』

梓『……』ガリガリガリガリガリ

梓母『晩ご飯は食べるでしょ? おかゆにしとく?』

梓『……うん』

梓(私っていま、どっちなんだろ)

76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 07:18:45.63:PnI8QVLY0

梓『ごめんちょっと散歩してくる』

梓母『そう……大丈夫なの?』

梓『ご飯にはもどるよ。いってきます』

梓母『窓からいくの?』

梓『あ。ううん……』

梓母『気をつけてね』

ナレーション:梓はだんだんわからなくなっていった。

ナレーション:自分がなにものなのか、猫なのか人間なのか。

梓『だれか私のことしりませんか』

梓『だれか私のことしりませんか』

梓『だれか私のことしりませんかー』

野良猫『やぁやぁ。どうしたみっともない。君のことは君が一番よくしってるだろう?』

梓『あなたは……』

82:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 07:25:40.54:PnI8QVLY0

野良猫『君は中途半端だね』

梓『中途半端……・って私……猫としゃべってる!!』

野良猫『おかしなことを言う。だって君は猫じゃないか』

梓『違う私は猫じゃない!!!!』

野良猫『だから中途半端なんだ。まず自分で自分をしろうとしなきゃ』

梓『……猫にバカにされるなんて』

野良猫『やれやれ。つまらないな君は。じゃあね。日課の途中なんで』

梓『日課?』

野良猫『木の上から夕陽を眺めるだけさ。それだけで満たされるんだ』

梓『へぇ……猫もそういうのあるんだ』

野良猫『?』 

ナレーション:梓はたちよった川辺で自分の姿をのぞきこんだ。

ナレーション:はっきりとは見えなかったが、すこし、猫に似ているなと思った。

ナレーション:その日を境に梓は急激に猫になっていった。

85:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 07:33:06.66:PnI8QVLY0

……

憂「はい召し上がれ」

唯「いただきまーす!」

律「おお、うめぇ!!」

澪「ほんとにおいしい」

憂「えへへ。猫ちゃんはどうする? キャットフードとかないんだけど」

梓「オムライス食べたい」

唯「うーん。どうしようかな。ホットミルクとか?」

梓「オムライス食べたいですけど」

唯「ミルクあったかなー」

梓「頂きます!!」クワッ

唯「うわわわ! あずにゃんだめだよー!!」

梓「はむはむはむ!!」

紬「きゃっ、飛び散ってるわ!!」

88:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 07:40:56.22:PnI8QVLY0

澪「あ、ちょっ! こらっ」

梓「はむはむはむはむ!!」

律「散らかすなって! おい! 唯、確保だ!!」

唯「あずにゃんやめてー」

梓「がうがぐあうがうが!」

憂「……」

唯「あずにゃん、ここでおとなしくしといてね」

梓「……」

唯「いい子だからね。いい子いい子」ナデナデ

梓「……ごめんなさい、許してください」

唯「いい子いい子」

梓「うっく……唯先輩……私……」

唯「じゃあねー。ご飯の間だけだからねー♪」

梓「……」

91:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 07:50:08.81:PnI8QVLY0

澪「さて、ミーティングを続けようか」

律「おう。議題は次の曲についてな」

紬「私もう頭の中にメロディできてるの!」

澪「ほんと!? すごいなムギは」

唯「澪ちゃんは歌詞って考えてる?」

澪「いや……あんまり思いつかないかな」

律「まぁ澪とムギに任せとくか」

唯「それでさ……これもう一個議題」

律「おう……知ってる」

澪「あぁ、あの件か」

紬「……」

唯「これらの譜面の、リズムギターって、何だろうね」

紬「……私がつくったはずなんだけど」

唯「私がリードギターになってて……澪ちゃんがベース、りっちゃんがドラム、ムギちゃんがキーボード」

唯「ねぇ、リードギターって? ギターは私しかいないよ?」

96:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 07:54:50.65:PnI8QVLY0

紬「さわ子先生のパートだったかしら……あれれ……」

唯「絶対変だよ! さわちゃんは顧問だもん!」

紬「ごめん……全部消しておくね……」

澪「でもなんか頭にひっかかってるような……」

律「あたしもー。最近変な感じ」

唯「なんかさぁ、家を出てしばらくしてから鍵かけたかかけてないかわからなくなるアレに似てるよね」

澪「全然似てない……」

唯「なにか忘れごとしてるんだろうけど、ほんとにそうなのかもわからなくってさ」

紬「でもそういう時って必ずなにか忘れてるのよね」

澪「人間ってそういうところが結構鋭敏だからな」

唯「んぅー…………あ!!」

律「わかったのか?」

唯「あずにゃん閉じ込めたままだった。連れてこよ♪」

澪「猫……また暴れたりしないか……」

唯「抱っこしとくから大丈夫!」

98:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 08:01:25.32:PnI8QVLY0

唯「あずにゃん寝てるー……」ナデナデ

澪「……ふぅ、よかった」

律「澪、猫苦手だっけ?」

澪「もしひっかかれたりしたら……猫の爪には菌がいっぱいなんだぞ」

紬「そういえば、その子猫さんは唯ちゃんとどういう関係なの?」

唯「さぁ?」

律「さぁって……平沢家で飼ってるわけじゃないんだろ?」

唯「飼ってないよ?」

澪「いつぐらいからいるっけ」

唯「わかんない……気づいたらひょこひょこ周りを歩いててね。可愛いから抱っこしてるの」

紬「名前は唯ちゃんがつけたの?」

唯「たぶんそう」

澪「あずにゃんって、一体何にかかってあずにゃんなんだ……」

唯「んー……んー……? 」

100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 08:07:08.41:PnI8QVLY0

唯「あず……あず……わかんなーい」

澪「適当?」

唯「かもねぇ。まぁ私のことだし」

律「おいおい。適当な名前つけられた猫もたまったもんじゃねぇな」

紬「でも可愛いとおもうわその名前」

唯「でしょー! あずにゃんはちっこくて暖かくて怒りっぽくて優しいんだよ!」

律「あはは、唯に猫のなにがわかるんだよ」

唯「あとねー、ギター教えるがうまくて」

澪「は?」

唯「ほえ? あれ……ギター?」

律「お前がいったんじゃん」

唯「あずにゃんはギターが……あっヅヅヅ、頭痛い」

律「お、おい!?」

紬「唯ちゃん?」

唯「痛い痛い痛い! 助けて!」

104:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 08:11:12.53:PnI8QVLY0

梓「にゃむ……唯先輩?」

唯「痛い痛いの! あずにゃん助けて!!」

澪「何言ってるんだ」

律「おい大丈夫か唯」

唯「痛い……」

唯「あずにゃんのことを考えると、頭がいたいの」

紬「……」

澪「……」

唯「どうしてかな……」

律「わからない。私もその猫のことを考えると、たまに頭が痛む」

律「だからやめたんだ。考えることを。猫は猫だろって」

澪「うん」

紬「唯ちゃんも、もうほうっておいたほうがいいんじゃない……頭割れちゃうよ」

唯「……でも」

106:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 08:16:53.69:PnI8QVLY0

梓「……私のせいで、みんな……」

澪「びしって頭蓋骨にひびが入ったみたいな痛みなんだ。みんなも?」

唯「うん……」

律「かなり痛い」

紬「怖いわ……」

梓「私のこと、思い出そうとしてくれたんですね……」

梓「でも、もういいですよ……」

梓「ほんとは私もなんです。人間だった頃のことを鮮明に思い出そうとしたら」

梓「頭が割れちゃいそうになります」

梓「いえ、今でも人間のつもりですけどね」

唯「あずにゃんは不思議な猫さんだね。私たちのこともこうも困らせる」

唯「えへへ、困った子」

梓「……寂しい、寂しいです」

108:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 08:25:00.97:PnI8QVLY0

ナレーション:その夜、唯は梓を抱いて眠りについた。

ナレーション:梓は目が冴えてどうにも眠れなかった。

ナレーション:窓から吹きこむ涼しい風を浴びてると、ふと、月を見上げたくなった。

ナレーション:隙間から器用に網戸をあけ、梓は屋根の上へ駆け上がった。

野良猫「やぁ」

梓「またあなた」

野良猫「どうやら君は飼い猫じゃなかったみたいだね」

梓「聞いてたんだ。趣味悪」

野良猫「悪いね。だけど君が中途半端な理由もわかった気がするよ」

梓「えっ」

野良猫「ききたい?」

梓「……」コクッ

野良猫「じゃあ少しだけ教えてあげるよ。こっちも暇じゃないんでね」

梓「暇なくせに、嘘つき……」

110:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 08:29:40.06:PnI8QVLY0

野良猫「猫は嘘をつかないよ」

梓「……」

野良猫「そして猫は作り話をしない」

梓「……だから何」

野良猫「ちょっと前に、とある猫が死んだんだ。小洒落た毛をした野良猫だった」

野良猫「飢え死にじゃない。はねられて死んだわけでもない」

梓「じゃあ……」

野良猫「そうだね。いつでも街で猫を殺すのは人間さ」

梓「……」

野良猫「なぁに、猫の君が落ち込む必要はない」

梓「うざい」

野良猫「どうして殺されたかって? 聞きたい?」

梓「早く」

野良猫「そりゃあ毛がほしかったんだろうね」

梓「……」

112:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 08:38:07.28:PnI8QVLY0

野良猫「こっちからしたらそれの価値なんて小魚の骨にも満たないんだけど」

野良猫「ときたまやつらはそれを求めるのさ」

梓「毛……」

野良猫「何に使ったと思う?」

梓「……もしかして」

野良猫「そいつは自分の毛並みを常に自慢しててね。めんどくさいやつだったよ」

梓「あなたもめんどくさいですけど」

野良猫「殺されてわけのわからない物にされちゃそりゃ怒るよね。君はどう?」

梓「怒る……」

野良猫「人間はちょっとした暇つぶしのためにいつも何かを奪っていくんだ」

梓「……ごめん」

野良猫「人の世では死後の恨みつらみのことを『呪い』って言うんだっけ?」

梓「呪い……」

114:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 08:45:08.93:PnI8QVLY0

梓「どうして私が呪われなきゃいけないの……」

野良猫「お月様なら何かしってるかもね。いつもこの世界のことを見ている」

梓「ふざけないで! ねぇほかになにかしらない!? どうやったら呪いがなくなるかとか」

野良猫「そういうのは人間のほうが詳しいだろ?」

梓「だって……私の言葉はもうみんなには届かないから」

野良猫「受け入れればいいんじゃないかな。猫になろう」

梓「嫌! 嫌なの!」

野良猫「人間で在り続けたい理由は?」

梓「……」

野良猫「中途半端だよ」

梓「……また、みんなとお茶がしたい、勉強したい、ギターがひきたい……お母さんのご飯がたべたい」

野良猫「残念。全部猫にはわからないことだ。それって楽しいかい?」

梓「楽しいよ……とっても……とっても……イッづづづあっ痛」

野良猫「どうやら、あいつは君と一つになりたがってるようだ」

115:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 08:51:50.05:PnI8QVLY0

梓「……たすけて……たすけて痛いの……」

野良猫「野生には逆らえないよ」

梓「嫌だ……猫に、なりたくない」

野良猫「そうだね。そういう猫もいるかもしれない」

梓「イヤァアアア!」

野良猫「人間にもいるはずさ。人間になりたくなかった奴」

野良猫「どこも一緒だね」

野良猫「きっとこの世を探せば、人にとりつかれた猫もいるはず」

野良猫「なにもかもどっこいどっこいだよ」

梓「猫のくせに、しったふうな口を……ッああああ!!」

野良猫「こっちへおいでよ中野梓」

野良猫「景気よくニャアと泣いてごらん。きっと楽しいよ」

梓「やだよ……やだ……」

野良猫「ふぅ……そうやっていつまでも過去と幻影にくるしみながら暮らすつもりかい」

119:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 08:59:25.04:PnI8QVLY0

唯「あずにゃん? あずにゃんどうしたの?」

野良猫「……御主人が来たよ」

梓「ううう……」

唯「おやおや君はさきほどの。うふふふ、あずにゃんとデート?」

梓「ちがいます!」

野良猫「ムキになるなよ」

唯「こんばんわ♪ 涼しくて過ごしやすい夜ですね。って私は猫になにいってんだろ」

野良猫「やぁこんばんわ」

唯「えへへ、君もよく見たら可愛いねぇ」

野良猫「そりゃどうも。飼ってみないかい」

唯「あずにゃんがいつもお世話になってます」ペコリ

野良猫「退屈しのぎにはちょうどいいよ」

梓「むっ」

唯「はぁー月が綺麗。あずにゃんたちもこれを眺めてたの?」

梓「……唯先輩」

121:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 09:04:17.02:PnI8QVLY0

唯「隣いいかなぁ、いいよね。よっこらせ」

野良猫「……君の御主人は変わってるね」

梓「主人じゃないって……」

唯「なんだかお団子が食べたい」

野良猫「どうして人はいつも動物の前で心のうちを声にだすんだろう」

梓「あはは……それが性なの……」

野良猫「潜在的な寂しさを打ち消そうとしてるんだ。そうに違いない」

梓「……」

野良猫「つまり人間って寂しがり屋なんだね」

梓「それって安直すぎない……?」

野良猫「猫だから。人間ほどあれこれ考えないよ」

唯「はぅー……にゃんこの運動会参加したいなぁ。どこでやってるんだろ」

梓「う……」

野良猫「人間も個によってはおもしろいと思うときがある」

梓「唯先輩を参考にするのはやめてよね……」

123:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 09:08:59.11:PnI8QVLY0

野良猫「中野梓。君は寂しいかい?」

梓「……」

野良猫「人間の心をもったまま猫になるのは寂しいかい?」

梓「当たり前でしょ」

野良猫「そうか、だから君を猫色に染めようとしてるんだね」

梓「呪いのやつめ……」

野良猫「いい話じゃないか。これで君は心置きなく猫になれる」

唯「なんのお話ー? にゃあにゃあ♪ 私もまぜてほしいにゃあ♪」

野良猫「人間の君は生きてて楽しいかい?」

唯「にゃあにゃあ♪」

野良猫「そうか、それはよかった」

唯「にゃあーん♪」

野良猫「……なんだかバカにされてるような気がしてきたな。人はいつもこうだ」

梓「唯先輩……恥ずかしいです」

124:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 09:16:06.77:PnI8QVLY0

唯「ねぇねぇ猫さんたち。きいてほしいことがあるんだけど」

梓「……」

唯「大事なことを思い出せない時ってどうしたらいいのかな」

唯「……もう一生思い出せないのかな」

唯「なんだかそれってすごく怖くってね」

唯「あ、ごめん……猫さんにはわからないか」

野良猫「……」

梓「唯先輩……ありがとうございます」

梓「私のために泣いてくれるんですね……」

唯「おいでーあずにゃん。一緒に月を見ようよ」

梓「はい」

ギュ

唯「……あったかいなぁ。すごく、懐かしい感じがする」

唯「でもね、どうしてこんなに懐かしい感じがするのか、さっぱりわからないの」

唯「あずにゃん……」

125:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 09:24:26.63:PnI8QVLY0

唯「はじめてあずにゃんを抱っこしたのはいつだったかなぁ……」

梓「ええと、ええと……あ、イタタタ」

梓『これが落ち着いていられますかーっ!!』

唯『ぎゅっ。いー子いー子』なでなで

澪『そんなことでおさまるはず……』

 ほわほわ

澪『おさまったー!?』

唯「いっ……ッ。あああっあずにゃん……」

梓「アアアッ」

野良猫「……馬鹿だよね。君たちは」

野良猫「もっと素直な生き方がきっとあるはずなのに」

128:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 09:29:59.86:PnI8QVLY0

唯「はじめてあずにゃんって呼んだのはいつだったかなぁ……」

梓「あぐ、あああっ、唯先ぱい……!」

律『ニャーッって言ってみて。ニャーッて』

梓『に……にゃ~~……?』

梓『はっ!! つい!!』

唯『あだ名はあずにゃんで決定だね!!』

唯「痛い……痛いね、あずにゃん」

梓「あっ、あ゛あああっ」

唯「とっても懐かしくて、痛いよ……」

野良猫「猫は無駄なことはしない。痛いことはしない。怖いことはしない」

野良猫「なのに君たちは時にあえてそれを選んだりする」

野良猫「それを馬鹿だと猫は笑う」

129:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 09:34:30.11:PnI8QVLY0

唯「たのしいこと、たくさん、あったはず……たくさん」

梓「うっ、う……ツッ」

唯「ひとつも……わすれ、たくないの……忘れない。そうだよね?」

梓「……」

唯「あずにゃん……私の大事な……あっ、あ゛ああああ!」

梓「う゛ぅううっ、あ゛あああっ」

唯「みんなで、ガッしゅく、いったことも、文化祭のステージも……」

唯「お茶したことも、、、、あっ、つ、トンちゃんだって……あう」

梓「ウ゛ウウウウ、ニ゛ャアアア」

野良猫「見苦しいったらありゃしない」

野良猫「せっかくの名月が君たちの悲鳴で台なしだよ」

130:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 09:39:28.83:YDiIUYosO
唯「大学編になってから眼鏡を見ると頭が痛くなるんだ…」

132:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 09:42:14.10:PnI8QVLY0

野良猫「君もそろそろわかったろう?」

梓「…………」

唯「あず……にゃ……? アッ、ぐっ、あぅ」 

野良猫「猫は痛いのもうるさいのも、無駄なのも嫌いなんだ」

野良猫「だから諦めたほうがいい」

梓「…………」

野良猫「中野梓は猫にはならないよ。残念だけどね」

梓「…………」

野良猫「……さぁ、もう行こう」

梓「…………」コクッ

野良猫「良かったね。中野梓」

野良猫「君はもう中途半端じゃない」

野良猫「ただの一人間としてちっぽけな幸せを追い求めるといい」

野良猫「じゃあね」

梓「…………・」

133:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 09:45:13.47:HxosqfYd0
戻ったのか?

134:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 09:45:36.38:3RR3Shgt0
あずにゃんに憑いてた猫が痛みを嫌って出ていったのかね

136:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 09:47:06.89:PnI8QVLY0

……

梓「ん……私……」

唯「あずにゃん!!」

梓「んあ……唯先輩……」

唯「あずにゃん!!」ガバッ

梓「うわっ、なんなんです! っていうか私なんで裸なんです!?」

唯「あずにゃんがね。にゃーって言ってたのにいきなりボンってあずにゃんになったんだよ!!」

梓「はぁ……」

唯「覚えてないの……?」

梓「おかしな夢をみてました……」

唯「?」

梓「私は猫になって。口うるさい猫につきまとわれて。頭が痛い夢でした」

唯「うんうん……良かった、あずにゃん良かった……」

唯「あずにゃんがちゃんと、私の記憶の中にいて良かった……」

138:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 09:52:36.99:PnI8QVLY0

コンコン

憂「お姉ちゃん? どうしたの? 入るよ?」

唯「うっく、憂……あずにゃんがね……」

憂「あれ。梓ちゃん、今日泊まってたの?」

梓「憂……! 憂ー!」

憂「あれ? ていうか梓ちゃんいつのまに」

梓「私のことわかるの!?」

憂「え、えっと……? 何いってるの……当たり前だけど……」

梓「うううう、よかった。よかった……」

憂「でも、なんだかひさしぶりな気がするね」

梓「そうだよ! 私ね! ずっと猫になってたの!! こわかったんだから!!」

憂「……そっか。よしよし」

唯「だめだよ憂! 今夜は私がよしよしするんだもん!」

憂「……? さっぱりわからないよ」

139:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 09:59:06.40:PnI8QVLY0

ナレーション:梓は翌朝家に戻り、普通に登校した。

ナレーション:親も教師もクラスメートもみんな梓のことを覚えていた。

ナレーション:自分のことを知ってる人がいる。それだけで梓は嬉しくて嬉しくて涙がこぼれた。

律「じゃあ何か? このきったねー箱に呪われた猫耳が入ってて」

紬「梓ちゃんがそれをつけて猫に変身してたってこと?」

梓「はい。かいつまんで話すとそういうことです」

澪「ひぃぃいいい! 呪いなんて……うぅ、嘘はやめろよ梓ぁ……」

梓「猫は無駄な嘘つきません。なんてね」

澪「……呪い怖い」ブルブル

唯「あずにゃんはね。一人ぼっちで寂しかったんだよ。だからこれからずっと一緒なんだよ!」

律「まぁ、寂しいならそういってくれれば」

梓「別に寂しくはありませんけど」

律「あ、生意気」

144:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 10:04:51.95:PnI8QVLY0

唯「よっし! じゃああずにゃんこのあとみんなでどっかいこう!」

梓「どこいきます?」

澪「決めていいぞ」

梓「あ、じゃあ」

紬「どこにする!? たい焼き屋さん!? カラオケ?」

梓「パフェ……食べたいです」

唯「パフェ!? あ、じゃあ駅前のケーキバイキングのお店がね」

梓「じゃなくて……ファミレスのほうの……」

律「んあ? みんなで行ったばっかじゃん」

梓「いきましたね。ふふ、いきましたとも。でも食べたいんです」

澪「まぁいいか。行こう」

紬「私今日はエンジェルバナナパフェ食べようかな」

唯「あ、ずるい! 私がそれしたかったのに!」

梓「……えへへ」

149:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 10:10:45.68:PnI8QVLY0

ナレーション:一行はファミレスへと向かって歩きだす。

ナレーション:たわいのない無駄で意味のない話をしながら。

ナレーション:それでも楽しげだった。だからこそ楽しかった。これ以上無いってほどに。

唯「おっ、猫さん」

紬「猫さん? わぁほんと」

澪「あぁ、昨日も見たなこの子」

野良猫「……」

梓「……」

律「梓どした?」

梓「……」

梓「人間って楽しいよ。そっちは?」

野良猫「……ニャ~~~」

梓「そっか……ふふ、じゃあね。いろいろありがと」

野良猫「ニャー」

150:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/09/04(日) 10:15:14.47:PnI8QVLY0

律「なんだったんだ? 梓の猫友だち的な?」

澪「梓はほんとに猫だったのか……」ガーン

梓「いやいや。まぁ、いろいろありましてね……」

律「聞かせてくれよ。ミーティングは後回し!」

紬「私も聞きたいな! 梓ちゃんのオカルト話!」

澪「やだやだ! なんでパフェ食べながら怖い話きかなきゃ駄目なんだ! 絶対風邪引く!」

紬「じゃあ澪ちゃんはあったかいスープ頼んだら?」

唯「みんなー入るよー」 

カランカラン

店員「いらっしゃいませー。何名様でしょうか」

唯「えっと」

唯「五人で。禁煙席でお願いします!」

おしまい。

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Comments

Comment from ななし
Time 2011年9月8日 at 2:12 AM

いい話だった

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