中島「磯野ーセ●クスしようぜ!」

24 8月, 2011 (08:28) | サザエさん | By: SS野郎

1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 03:16:09.39 ID:sCj5yzH70

磯野カツオが親友・中島と妹・ワカメの性交渉に至る所を見てしまったのは二月も半ばを過ぎようとしていた頃だった。


3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 03:29:51.90 ID:NeoHKQavO

 中島はズボンを脱いでワカメを押し倒した。
「駄目、中島サン‥今は家にお兄ちゃんが居るから‥」
 ワカメは中島を軽く押し返したが、中島は意に介さずブリーフを脱ぎ始めた。
「磯野ーセ●クスしようぜ」
 中島の目は血走っていた。
「駄目よ駄目」
「磯野ーセ●クスしようぜ」
「い、いやァ」
 中島はワカメを貫いた。カツオはそれを襖の僅かな隙間から眺めていた。
ワカメは最初こそ軽く抵抗をしたものの、ついぞ諦めたのか、中島が手練だったのか自ら腰を動かし始めた。
「駄目なのに‥」
 ワカメは泣いていた。しかし、中島は満面の笑みを浮かべていた。その腰の動きはワカメが動いているのかほとんど分からなくなる程激しいものだった。
「磯野ー気持ちイイヨーッ」
 中島は涎塗れの口をワカメの口に近づけながら叫んだ。

5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 03:37:44.02 ID:NeoHKQavO

「磯野ーキスしようぜーキスしようぜー」
 中島はワカメにキスをせがんだ。
「勝手にキスすればいいじゃない。ちょっとは静かに喋って、お兄ちゃんに」
 ワカメ言うが早いか、中島の唇がワカメの口を塞いだ。
「アアーッ、柔らかい、柔らかいぞっ」
 忽ちワカメの顔中が中島の涎まみれになった。
「唇も柔らかいなんて最高だアッ、ウッ、ハッ、ング」
 ワカメは何か言いたそうな顔をしていたが、あの距離では中島は気付かないだろう。いや、仮に気付いても接吻は止まらないに違いない。
カツオはそう思った。

7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 03:47:14.64 ID:uN9wD+pL0

カツオくずだなwwww

9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 03:48:46.63 ID:NeoHKQavO

「おォオ、ほおォ、磯野ー出るぞー出すぞー」
 そう叫んだ中島のケツは動きを止め、一旦間を置いた後、軽く跳ね上がった。
「磯野ー気持ち良かったぜっ、はあはあ」
 中島が立ち上がると、ワカメのスカートの間から汁まみれになったワレメをカツオは見る事ができた。
「はあはあ‥ごめん‥服汚れちゃったね」
 中島のモノから白い粘液が垂れていた。
「磯野‥服は後で洗濯機に入れれば良いから、まずは僕のを綺麗にしてくれよ」
 中島は上半身を起こしたワカメの顔にモノを近付けた。垂れた粘液がワカメの服の胸元に付着した。
「イヤよ‥それはイヤ」
 ワカメも中島に続いて立ち上がると、ティッシュ箱からティッシュを出してそれで中島のモノを拭いた。
「それを口でしゃぶるなんてオカシイもん」

12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 03:56:02.69 ID:MjmXqRmk0

いずれはそうなるわけか。
みんな大人になっていくな。

13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 04:02:28.71 ID:NeoHKQavO

「分かったよ、また今度ね」
 中島がそう言って襖の方を振り返ったのでカツオは慌ててその場から立ち去った。
中島の顔は不満だと言っていた。
「今度も無いわ。駄目なものは駄目」
 ワカメは中島がブリーフに脚を通す後ろ姿を見ながら言った。
「だって汚いもん」
 その言葉に中島は少しムッとし、ズボンを履き終えてから言った。
「今ならワカメちゃんの股関の方がよっぽど汚いと思うけれどね」
 ワカメはワレメの辺りの汁をティッシュで吹き取っていた。
「お兄ちゃんにバレちゃったかも」
 中島はそれを聞いて部屋を出、家中を歩き廻ってから、また部屋に戻った。
ワカメが部屋の窓を開けていたので、後ろから声をかけた。
「誰も居ないよ、良かったね」
「良かったのはお互い様しゃない。それじゃあ、わたしは家族が来る前にお風呂に入らなきゃならないから」
 ワカメが言い終える前に中島は部屋を出ていた。
「じゃあね、ワカメちゃん」
 中島は足早に磯野家を跡にした。

16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 04:12:48.59 ID:NeoHKQavO

 カツオは公園のベンチに座って腕を組んでいた。
空には暗雲が立ち込めていたが、日も沈む頃だったのでカツオは気付かなかった。
自分の親友と自分の妹が恋仲になっていた事はカツオにとって衝撃であった。何も悪い事は無い。男と女、至って自然の事だ。
頭では分かっていたがカツオの気分は晴れなかった。そう、カツオの気付かない頭上の様に暗雲が立ち込めていたのだ。
「ワカメちゃんのお兄さ‥あ‥カツオさん、お久し振りです」
 公園に自分一人だと思っていたカツオは背後のフェンス越しからの突然の声にギョッとした。

18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 04:27:57.11 ID:NeoHKQavO

 振り返ったフェンス越しに見える姿はワカメの小学校からの同級生・堀川だった。
「いやァ、本当に久し振りですね」
 カツオはぼうっと堀川を見、何か怪訝な表情をしたのに気付いて慌てて返事をした。
「あ、ああ‥やあ、ワカメの同級生の‥堀川君、だったね」
 堀川の名は覚えていたが、取りあえずの返事として名前を確かめた。
堀川は口角を少し上げて嬉しそうに話し出した。
「そうです、堀川です。駅から帰って来た所だったんですけど、カツオさんの横顔が何だか浮かない顔をしてたんでつい声をかけてしまいました。
何か考え事でも‥迷惑でしたかね」
 そうして堀川は眉を八の字にした。カツオは首を降って答えた。
「いや、大した事じゃないんだ。ちょうど僕も家に帰る所なんだよ」
「そうでしたか。それじゃ、これで。ワカメさんによろしく伝えておいて下さい」
 ワカメさんによろしく。いつもとはいかないだろうが、学校でも顔を合わせるだろうにと、カツオは苦笑いを返した。
「ああ、分かったよ。気を付けて帰りな」
「カツオさんもね」
 カツオは堀川が角を曲がって姿を消したのを見届けると、自らも帰路についた。

19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 04:39:38.49 ID:NeoHKQavO

「お帰り、カツオ。もう夕御飯の支度ができてるわよ」
 家に帰ると、姉さんが出迎えてくれた。
居間には家族が揃っていた。
「お兄ちゃん、午後に家に帰って来てなかったっけ」
 カツオが帰って来たのを知るなり、そう質問してきたのはワカメだった。目には不安の色が浮かんでいた。
それが意味する事を知っているのはカツオだけ。
「いや、今日は暇だったから父さんの墓参りに行ってきたよ」
 カツオは面倒臭そうにそう答えて洗面所に向かった。手を洗い、うがいをし、鏡で自分の姿を見た。
昔から見慣れたいがぐり頭。昔と違うのは多少凛々しくなった顔立ちともみ上げくらいか。
カツオはナルシシズムに浸るかの様に鏡を見続けた。実際には自分の顔立ちを格好が良いなどと思っている訳ではなかった。
「僕、変な態度にはならなかったよな」
 カツオは先のワカメとの短いやり取りを思い出しながら呟いた。

20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 04:42:33.20 ID:rNu5yfvT0

波平・・・(´;ω;`)ウッ

21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 04:52:45.30 ID:NeoHKQavO

 カツオは御飯を済ませ、かつては物置小屋だった自室に向かった。
四年前の進学を機に物置小屋を部屋として使おうという提案はカツオの物だった。
 その時はただ単に自分一人だけの部屋が欲しかったからそう提案しただけだったのかも知れないが、同時に思春期の男女がいつ迄も同室で寝起きするのは良くないと本能で感じていたに違いない。
カツオはあの出来事を目撃し、今、部屋で独りになって初めて気付いた。

バンバンバン。
物置の戸を叩く音。カツオは考えるのを止め、戸を開けた。
外に居たのはワカメだった。
カツオは予想はしていたが、 動揺した。

23:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 05:09:46.95 ID:NeoHKQavO

ワカメはカツオが戸を開けるなり口を開いた。
「今日帰って来てたでしょう」
 カツオはとにかく平静を装う事に努めた。
「さっきも言っただろ。僕が暇だったら父さんの墓参りに行っちゃいけなかったんだっけか」
「そうじゃないけど‥玄関に今朝お兄ちゃんが履いていった靴があったから‥」
「どんな靴だ。言ってみろよ。ワカメはそんなに僕の事をよく観察してるのか」
「どんな靴って‥スニーカーだったじゃない、茶色い‥限定モデルだかの」
「今日は僕ブーツだったぞ」
 これは嘘だった。ワカメの言う通りカツオは今朝スニーカーを履いて学校に行っていた。ワカメは戸惑った。
「そんな筈ないもん、確かに午後にお兄ちゃんが脱いだスニーカーがあった」
「そりゃ僕はブーツを履いて出掛けていたんだからな。僕に足が四本もついていたらスニーカーも履いてたかもな。
お前何でそんなに僕が気になるんだ。おかしいぞ」
 カツオがそう問い質すと、ワカメはカツオの言葉を信じ自分の記憶を疑ったのかプイとカツオに背を向け質問を黙殺して家に入って行った。
カツオはそれを見て胸を撫で下ろした。

25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 05:20:46.16 ID:NeoHKQavO

 カツオは布団に入り悶々としていた。ワカメの捲れたスカートから覗くワレメが頭を離れなかった。
その図を頭から振り払おうと努力したが難しかった。

ザーザーザーザー。
ビュービュービュービュー。

外からは雨風の音がした。
そのせいで眠れないんだ。断熱材で繕っても所詮は物置小屋だ。
カツオはそう言い訳をして布団を頭迄被せた。

ザーザーザーザー。
ビュービュービュービュー。

 眠くなってきて朦朧としてきた頃、振動を感じた。
憎い風だ。いい加減に眠らせろ。畜生。
カツオはくらくらする頭で精一杯悪態をついた。

28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 05:32:48.24 ID:NeoHKQavO

もそり。
自分に被さっていた布団が動いた事にカツオは気付き、驚いて跳ね起きた。
「タ、タマの亡霊かッ」
 叫んで頭のすぐ側の裸電球のスイッチをひねった。

布団がもそもそと動いているのが目に見えて分かった。
「カ、覚悟シロ、タマ」
 布団を取り払うと、そこに居たのはカツオが高校生の頃に原付でひき殺したタマの亡霊ではなく、ワカメだった。
「ワ、ワカメダッタのか‥」
 カツオは安心した。いつかタマが化け猫として出て来るんじゃないかと、いう不安は今度も解消できなかったが。

32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 05:42:48.35 ID:NeoHKQavO

カツオが頭をぼりぼりと掻いているのを見たワカメはカツオに飛びかかった。

「な、何だっ」
 ワカメはカツオを抱き締めていた。ワカメの細い右手の指はカツオの首を、左手の指はカツオの背中を撫でていた。
「お兄ちゃん、寝る時は裸なの‥」
 カツオはこの物置を自室にしてからというもの、トランクス一枚で布団に入る様になっていた。

「何だ、何だ、ヤメロっ」
 くすぐったさと気恥ずかしさを感じたカツオはワカメの腕を自分の体から引き剥がし、布団に突き飛ばした。
「痛っ」
 ワカメは見事布団に尻餅をついた。
「おい、何のつもりだ」
 カツオはそんなワカメを気遣う事もなく怒鳴った。

37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 05:59:32.43 ID:NeoHKQavO

「今日の見たんじゃないのっ。見たんでしょっ、聞いたんでしょっ。何で嘘つくのっ」
 ワカメもすぐに顔をカツオの方に上げ怒鳴り返した。その顔は紅潮していた。耳迄真っ赤だった。
「ああ、見たさ。よりによって中島か。あんなの聞いたら嘘ぐらいつくだろ」
 カツオはワカメのその気迫についに折れはしたがまた怒鳴っていた。しかし頭は働いていた。あえて見たではなく聞いたという言葉を選んだ。
それなら少しはワカメの恥も薄れると、思ったからだった。
ワカメは俯いて何か考える様な仕草をとったが、すぐに顔を上げ直し言った。

「するから内緒にして」
 カツオは耳を疑った。「す、するって何だ、アアッ」
 そう言ってワカメを見ると、ワカメのパジャマの胸元のボタンが外れているの気付いた。
黒くてツヤのある短くも長くもない髪が鎖骨をちょうど隠していた。
「頭おかしいんじゃないかお前」
 カツオはワカメの答えも待たず続け、慌ててワカメの胸元から目を離し顔に視線を戻した。

45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 06:17:24.90 ID:NeoHKQavO

 ワカメの瞳は潤んでいた。大きすぎない鼻に唇の柔らかそうなピンク色。その下で真っ赤な血潮が激しく流れていると分かる滑らかな表面の頬。
カツオがハッと気付いた時にはワカメはカツオの足下迄にじり寄っていた。
ワカメの黒目が下から視線を注いでいた。
「馬鹿ッ、男と女が付き合って何が悪いんだ。黙ってて欲しいなら黙っててやるッ」

 カツオがそう言うと、ワカメは目をゴシゴシとパジャマの袖で拭いて、正座の姿勢になった。
パジャマは肩の辺り迄はだけ、ブラジャーの紐が見えた。

カツオはモノがいきり立たない様に祈りつつ言った。
「中島と付き合ってるのを隠すぐらいでこんな事をするなんてワカメの常識を疑うよ」
 ワカメは右の口角だけ少し上げ悪戯をした子供っぽくニッと笑った後、口を尖らせる様に言った。
「だって中島さんはお兄ちゃんの昔からの親友だし、それに、それに‥」
「それに」
 ワカメが焦れったいのでカツオは急かした。
「中島さん変態なんだもん」

48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 06:32:01.95 ID:NeoHKQavO

 それを聞いたカツオは吹き出すのを我慢して真剣な顔で聞き返した
「変態‥」
「そうなの、変態なの。今日‥じゃなくて昨日か、昨日見たと思うんだけど、その、ね、アレをわたしに舐めさせようとするの」
「‥そんな事があったのか。ちょっと聞こえただけだったから‥」
 カツオがとぼけたのでワカメは失言とばかりに耳を更に赤くした。
「でも、潔癖なら嫌かも知れないけど、そういう事をするカップルもいるんだよ」
 カツオは付け足した。ワカメは困惑と疑惑の表情を浮かべて聞いた。
「本当にそうなの」
「ああそうさ、きっとかの御高名な性母マリアも婚約者の事を忘れて神のち●ぽをしゃぶってイエスを欲しがったのさ」
「下品で最低ね、お兄ちゃん」
 ワカメは罵倒しながらも笑った。カツオはその顔を見て話はこれで終わりかと一息ついた。

50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 06:40:42.07 ID:NeoHKQavO

「でもほかにも色んな事させるの」
 ワカメはまだ続ける様だった。しかしカツオは話して貰えただけでもスッキリしたし、ここから興味だけで話を聞く事にした。
「夜に通ってた小学校に忍び込んで‥せ、セ●クス‥しようって言ったり」
「とんだ変態だな。それも断ったのか」
「ウウン、した。それも校庭で」
「えッ」
 しゃぶるのは駄目で野外でセ●クスは良いのか。カツオは驚いた。
ワカメはそれには気付かず話を続けた。
「ほかにも」
「まだ、あるのか」
「ウン」

51:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 06:48:07.42 ID:NeoHKQavO

 カツオは腰を据えて話を聞く事にした。
「朝いつもの様に学校に行こうと駅に向かったら約束してなかったのに中島さんが待ってたの」
「うん」
 カツオはとにかく相槌だけを打つ事にした。
「それで途中迄一緒だからって一緒に電車に乗ったの。
中島さんは変態だけど、わたしの恋人だったから嬉しかったの。お兄ちゃんも分かるでしょ」
「ああ、それで」
 カツオは無意味な問いだと思いながら答え、先を急かした。

52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 06:50:14.68 ID:CMQ0n9p9O

>カツオが高校生の頃に原付でひき殺したタマの亡霊

カツオなにしてんだwwwwwwwwwwwwwww

53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 07:00:40.59 ID:NeoHKQavO

「ひゃっ」
 ワカメは小さい悲鳴を上げた。
制服のスカートが後ろが捲られたのに気付いたからだった。慌てて隣の中島に助けを求めた。
「中島さん、ち、痴漢‥わたしお尻触られてる」
 小さな声で中島に耳打ちした。右の尻ぺたの上で手が這っているのを白いパンツ、薄い布を通して感じた。
「痴漢は僕だよワカメちゃん」
「えッ」
 それを聞いてワカメは思い切って痴漢の左手から左肩にかけて視線を移動させた。
中島のニヤついた意地悪そうな顔が肩の上にあった。
手の動きが一層激しくなり、尻をもみ上げる。
「やめて、電車の中よ」
 ワカメはそう言ってさり気ない動きで中島の手を尻から離そうとしたが、離れなかった。中島は更に笑みを広げて得意気に言った。
「僕はどこででも君を愛せるんだ」

55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 07:11:56.99 ID:ONhJ1bhQO

なんかサザエSSにしてはほのぼのしてるなwwww

56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 07:19:24.40 ID:NeoHKQavO

「や、やだ‥駄目ったら。本当にッ‥アッ」
 中島の指が布と肉の隙間に入った。
「お尻の穴も可愛いんだよね。この前の休日にじっくり見せて貰った僕は知ってるよ」
 中島が意地悪く言うと、中島の期待通りにワカメは顔を赤くして沈黙した。
中島の指はワカメの肛門の周りをチロチロとなぞり始めた。
「ピクピクしてるよ。可愛いなあ」
「あっ‥ヤダッ」
 ワカメの体が軽く弓なりに反った。一本の指が爪の深さ程度迄に肛門に侵入してきたのを感じ取った。
涙目で中島に拒否の表情を見せるが、中島はそのワカメの顔を見て更に得意気になった。
「おっほ。お尻で感じてるのかい。ワカメちゃんもスキモノだねえ」
 肛門の入り口で指が浅くではあるが出たり入ったりを繰り返した。
「今朝も出す物出して来たかい。僕は快調だったよ」
 中島はそう言うと、ワカメからは離れた側の右手でワカメの右手をつかみ自分モノをズボンの上から掴ませようとした。
「やッ」
 ワカメはとっさに自分の右手を引っ込めようとしたが、中島の右手がそうはさせなかった。
「大便の事だと思ったかい、外れだよっ。僕は毎朝するんだ」
 中島がワカメに顔と顔をぶつける位の勢いで近付いたその時だった。

57:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 07:40:13.39 ID:NeoHKQavO

「ナナナ、ナ、何やってるんだ、キキッ、君ッ」
 突如、怒号と共に中島の手がワカメの尻から離れていった。
ワカメは中島の手の行方を見ようと、首を動かした。中島の腕はわたしと同じ位の年齢の青年に掴み上げられていた。
「こっ、こいつっ、こいつッ、ちち痴漢だア」
 電車のいつもの沈静はこの声で破られた。
「ち、違う、違うんです」
 中島の顔はすっかり青白くなっていた。
青年は顔をひきつらせながら中島の否定に声を荒げて非難した。
「ち、痴漢する奴は誰だってそう言うんだ、カ、観念しろォ」
 その大声を合図にしたかの様に中島は周りの乗客に取り押さえられた。

58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 07:53:41.79 ID:NeoHKQavO

 次の駅でワカメと中島は電車を降ろされ、しばらくして駅員二人がホームに居る人混みを縫って足早にやって来た。
「違うんです。僕は痴漢じゃありませンッ」
 中島は半泣きで駅員に訴えたが駅員は面倒臭そうな表情を浮かべた。
ホームの周りの客は好奇の眼差しを中島とワカメ、中島を抑えている男達やさっき迄中島の腕を掴んでいた青年に向けながら電車の乗り込んだり、次の特急を待っていたりした。
青年は得意気な顔をしていた。その顔はどことなく中島さんに似ている。
ワカメは顔を俯けながら青年の顔を覗き見て思った。

61:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 08:09:34.76 ID:NeoHKQavO

 ワカメ達は駅員の指示で事務所に連れて行かれそうになった。
ワカメは恥ずかしさで涙が止まらなかった。
もう一人の駅員は青年に話を聞かせられながら人混みを退けさせていた。
「僕の名前は、風間トオルです。連絡先は‥」
「あーすいません、その話は警察が来てからお願いします」
 駅員はとても面倒臭そうに青年の話を受け流したが、青年は興奮していて聞く耳は持たなかった。
「ああー僕表彰されたりしないんですかねえ」
 青年の得意気な顔の理由はこれだったのかと、ワカメは納得した。
「さあ、わたくしには分かりかねます‥」
 駅員が青年を無視しだした時、ついに中島はワカメに大恥をかかせた。

63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 08:29:42.23 ID:NeoHKQavO

「ワカメちゃーんッ、あれはプレイのひッ、一つだったって何で言って‥言ってくれないんダアッ」
 中島は大声で泣き喚いた。

「その話、嘘だろ」
 カツオはポカンとした痴呆の様な顔で聞いた。
「あの時の周りの顔、忘れられない。まだ通報される前だっただけ運が良かったわ。
それから一時間以上事務所であれこれ聞かれたのよ」
 ワカメの顔は話している間、赤いままだった。
「中島さんが庇ってくれたから家には連絡が無かったの。駅員さんも若気の至りだとか何とかって許してもらえて‥」
「庇うも何も中島が強要したんじゃないか」
 カツオは中島に苛立ちを感じた。しかし今度はワカメが中島を庇う番だった。
「それでもわたしの恋人だから。お願いだから、お兄ちゃん怒らないで」
 ワカメの哀願する顔を見てカツオはため息をついた。
「まあ良いや。今日はもう寝ろよ」
「うん‥そうだね‥」
 ワカメが返事をしてゆっくりと立ち上がったのを見てカツオは部屋の戸開けた。
「お休みお兄ちゃん」
 ワカメが家に入るのを見届けてから戸を閉め、時計を確認すると、既に四時を回っているのが分かり寝るのを諦めた。
「中島め、ワカメの復讐は僕がしてやるからな」

67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 08:49:15.76 ID:NeoHKQavO

 カツオは駅の改札口近くの柱に寄りかかっていた。
「おーい、磯野ーっ」
 そのカツオの姿を捉えた中島はカツオに向かって小走りに近付いた。
「久しぶりだなあ、磯野。朝方にメール貰ったから今日一日の予定は急遽変更だよ」
 そう言って笑みを向ける中島の顔をカツオは今すぐにでも殴りたい衝動に駆られたが、我慢した。
「ああ、本当に久しぶりだな。それじゃあ早速電車に乗ろう」
 カツオ達は改札を通ってホームに向かった。

「映画、何観ようか。僕今観たいの三つ位あるんだけど磯野が良かったら」
「なあ」
 ホームに立つとすぐに中島は久し振りの再会で嬉しそうにカツオを見ながら話し掛けてきた。カツオは鬱陶しく思い、そのおしゃべりを止めた。
「中島、お前、僕に何か隠してないか」
 中島はカツオの曇った表情とこの問いに答えがすぐ思い当たったのかギクリとした表情を見せた。
その表情はそれが何を思い当たったのか事前に知っていなければ分からない程一瞬の物だった。
「ん‥隠してる事か。磯野とこうして久し振りに会ってるのに隠す事も何も無いだろう」
 中島はそう言って顔を向かいのホームに向けてしまった。

70:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 09:01:20.44 ID:NeoHKQavO

 中島め、僕の妹と付き合ってる事も秘密にする気か。いいさ、これで手を緩めなくて済むって話だ。
カツオは拳を固くした。

しばらくして電車が来ると二人はそれに乗り込んだ。平日の午前で乗客はまばらだった。
しかし、四つ目の停車駅は乗り換えのある大きな駅なのでそこでこの車両は人でごった返すだろう。少なくとも座席が全て埋まる位には。
カツオは虎視眈々とその時を待っていた。
「今からでも就活不安だよなあ。なあ、磯野」
 沈黙が気まずかったのか中島は取り留めのない話をポツポツと持ち出してきた。
親友同士だからこそ取り留めのない話をするのはおかしくはない筈だが、お互いがこの話は気まずさを紛らわす為だと分かっていた。

72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 09:11:13.59 ID:NeoHKQavO

「磯野ー座席に座ろうぜ」
「いや、ここが良いんだ。ごめん」
「そうか、まあ磯野だけ立たせてるのも悪いし、僕もここでつり革に掴まってるよ」

 それから十五分程経って、乗客がドッと増えた。カツオの予想通り車両の座席は埋まり十人超の乗客が立っていた。
「おい、磯野くすぐったいぞ」
 カツオの手が中島の腰を這った。
中島はカツオがふざけていると思い、すぐにニコニコと笑い始めた。
「中島ァー、ほかの乗客に迷惑だからしぃーずぅーかァにしィーろォヨー」
「お前がくすぐるから悪いんだろォ」
 中島はクスクスと笑い続けた。

73:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 09:24:15.88 ID:NeoHKQavO

「おいぃ、イソノッ‥」
 中島はハッとした顔をカツオに向け声にならない様な声で言った。
「オマエ、ナニ考えてルンダ‥」
 中島の砲台の砲手はカツオの手の内になっていた。
電車の揺れに合わせてゴシ、ゴシ、ゴシ。

ゴシ‥ゴシ‥ゴシ。

とても緩慢な動きでカツオの手は扱き始めた。
「おい、おいいイィ‥」
 中島は脂汗をかき、姿勢はもう中腰になろうとしていた。
「悪ふざけニモ程ガアルゾッ‥ハアッ‥フッ」
 カツオはただ数分前迄中島がしていた様な笑顔を見せただけで何も答えなかった。
中島はそれを見て更に顔を歪めた。
「ナンダ‥何なんダ‥おい、この手ヲ止めろ」

76:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 09:41:02.24 ID:NeoHKQavO

 カツオは中島の耳元で囁いた。
「今朝も出す物出して来たかい。僕は快調だったよ」
 それを聞いた中島の苦渋の表情はそこで固まった。目は見開かれていた。
「オオ、お前、お前‥」
 中島の口の右端から一筋の涎が垂れた。
カツオはニヤリと歯ぐきを見せた。
「このままイケよ変態野郎」
「くあッ‥お前もこんな事して‥ヘンタイじゃないかあッアアア」
 中島が悪態をついたところで、カツオは右手に大きな脈打ちを感じた。
その後すぐにヌルリとした感触。
カツオは静かに右手を中島の下着から引き抜いた。
電車のドアが開くと同時に中島が腰砕けに床にへたり込んだ。茶色いチノパンの股関には更に暗色の染みができていた。

「映画はお前一人で観ろよ。じゃあな」
 捨て台詞を吐いたカツオは一人、電車を降りた。

79:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 09:51:49.30 ID:NeoHKQavO

 家に戻ったカツオは携帯電話を開いた。メールが一通。無題。中島からだった。

『すまん』

 本文はそれだけだった。カツオはそれで満足した。後で自分も電話で謝ってワカメの事について話し合おうと思った。

玄関で物音がした。時間帯からしてタラオだと、カツオは思い、そして実際に居間に現れたのはタラオだった。
「只今帰りました。カツオにいさん」
「やあお帰りタラオ、お茶出すよ」
「ありがとうございます。それじゃ僕は手を洗って来ます。」
 タラオは洗面所にカツオは台所に向かった。

83:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 10:05:13.86 ID:NeoHKQavO

 タラオが切り分けられたカステラを三分の二程食べ終えた所で口を開いた。
「ところでカツオにいさん」
「何だいタラオ」
 カツオは湯のみに残っていた茶をがぶりと飲み干した。
「今ちょうど僕とにいさんしか居ないから良い機会ですね」
「だから何だい」
「今朝、というより夜明け前ですね。ワカメおねえさんと何をしていたんですか」
 カツオは夜明けの四時前の事を思い出した。

ワカメのはだけたパジャマから見えた白い肩にブラジャーの紐。
足下から熱い視線を送る柔らかそうで華奢な肢体。

 でも僕は何もやっていない。話を聞いただけだッ。
カツオは頭をブンブンと二回横に振ってから慌てて答えた。
「ちょっと相談に乗ってやっただけさ」
 その答えにタラオは納得していない様だった。
「あんな時間にデスか」
 タラオの目は汚物を見ているかの様だった。

87:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 10:22:24.04 ID:NeoHKQavO

「醜いデス」
 タラオは口元を結んでへの字にした。
「違うんだ、誤解だ」
 カツオは身を半分ちゃぶ台に乗り出して弁明しようとした。
「何が違うんデスか。まあ僕は見ていた事しか話さないつもりデスけど、お祖母ちゃんがどう思うかは分かりませんね」
 それを聞いたカツオの背筋は凍った。
「ハハハ。その顔。良い顔デスねえ」
 さっき迄年齢に似合わぬ険しい顔つきだったタラオは今はコロリと変わってはしゃいでいた。
「待ってよ。タラオ、勘違いなんだって」
 カツオはそれしか言えなかった。
「勘違いも何も僕はただ見た事のみを話すだけデスよ。何も解釈は入れずにデス。
どう解釈するかはお祖母ちゃん次第デス。僕がどう思うかは関係無いんデスよ」
 タラオは笑いながらも淡々と話した。
「考え直してくれタラオっ。本当に君が考えている様な事は断じてないんだっ」
 カツオは泣きそうになっていた。
「君が考えている‥ハハッ、何も考えてないデスよ。にいさんみたいに汚らわしい事をしようなんて事はね」
 タラオの目は笑っていなかった。

93:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 10:38:50.62 ID:NeoHKQavO

「死んだお祖父ちゃんが知ったら『馬鹿モン』では済まないデスよ」
 タラオは腕を組んだ。十年前ならともかく今ではとても憎たらしい仕草だと、カツオはうなだれながら思った。
タラオはそうしてから何か閃いた様に口を大きく開いて笑顔を作った。
「よく考えたら無理に家庭を崩壊させる様な事をするのは母と父に悪いデスし‥‥僕の所で止めて置いた方が良いかもしれませんね」
 カツオは下に向けていた顔を上げた。
「本当かい、タラオ」
 それは緊張が解けた顔だった。タラオはそれを見てクックッと笑いを噛み殺した。
机にはタラオの手のひら。
「何だいタラオ。何かのジェスチャーなら僕には分からないよ」
 カツオはタラオに困った顔を見せ、手を肩の位置迄上げて降参のポーズを取った。
タラオは舌打ちをして手のひらの意味をカツオに教えた。
「口止め料デス。早く母が帰って来る前に出してクーダサイ」

96:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 10:44:43.00 ID:E8dJOSDkO

出してクーダサイじゃねーよwwwwwwwwww
なんでそこだけ幼少期なんだよwwwwwwwwww

98:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 10:57:37.69 ID:NeoHKQavO

 カツオは呆気に取られ、それを見たタラオは口調を荒げた。
「早く出すッ。ほら早くッ」
「ま、待ってよタラオ。君、月に一万円もお小遣いを貰ってるじゃないか」
 反論した汚物に対して遂にタラオは怒りの色を見せた。
「僕がいくら貰ってるかはこの件には全く関係ないだろがよォッ。オオッ、早く出せってッ。オイッ」
 カツオは今迄に見た事のないタラオを見て焦ったが、とにかくこの問題を丸く収める事にした。
「わ、分かった、分かったよ。それでいくら出せば良いんだい」
 それを聞いたタラオは幾分か落ち着きを取り戻し、額を言った。
「分かれば良いんデスよ、分かればね。とりあえず一万で良いデス」
 カツオはすぐさま尻のポケットから財布を出した。それは父からの最後の贈り物だった。
そして一万円札を取り出してからふとタラオの言葉を咀嚼した。
「とりあえず‥」
 小さく一人呟いたつもりだったがタラオには聞こえた様だった。
「この件が一万で済むと思ったんデスか。相変わらず楽天家デスね。
余計な事を言う様デスが、就活も大丈夫なんデスか。あっ、余計じゃないデスよね口止め料払って貰えなくなったら困りますから」

100:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 11:06:46.19 ID:NeoHKQavO

 タラオはそう話しながら立ち上がってカツオの手から一万円札を引き抜き、増築して作ってもらった自室に入って行った。
カツオは自分の事が情けなくなってしばらくの間ちゃぶ台に突っ伏して泣いた。
しかし、姉が帰る前に庭にあるあのタラオの部屋よりも狭くて薄暗い物音部屋に戻った。

101:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 11:14:56.44 ID:NeoHKQavO

 タラオはいつも通り朝の七時過ぎに家を出た。
「それでは言って来ます」
 靴を履きカバンを背負って出発の挨拶をする。カバンはどこぞの貧乏臭いガキの使う合成革の物ではなく天然物の革でできていてフランス製だ。
母の挨拶が返って来る。
「タラちゃん気をつけて行って来るのよ」
「はいママ」

 タラオのカバンは朝日を浴びて鮮やかな色を放っていた。

103:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 11:25:13.73 ID:NeoHKQavO

タラオがバスに乗って駅に着くと、バスロータリーに見慣れた見慣れたくない顔があった。
「ちぃーす、タラオさん」
 バイクの後ろで二人乗りしていたイクラだった。
バイクを運転しているのはイクラより一回り程年齢が違うだろう男だった。タラオは彼ともよく顔を合わせたが口をきいた事は無かった。
フルフェイスヘルメットをしているから顔も分からない。
どうせ無免許で高校中退とか、そもそも高校には入学してない、その上全うな仕事もせずに二十代半ばで電柱にぶつかるか道路で挽き肉にされて死ぬ様な手合いに違いない。
そう思っているタラオは全く興味を示さなかったし、男も何も話さなかったからだ。

107:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 11:44:07.96 ID:NeoHKQavO

「人目につくけど大丈夫なのかよ」
 タラオがそう言うとイクラは豪快に笑い飛ばして、タラオの頭に手を乗せた。
何せイクラは既に身長170を越えようかという巨漢になる要素を持ち合わせていたから、タラオの身長などとうの昔に追い越していた。
「心配してくれんのか。珍しいな。ダイジョブダイジョブ。マサさんにはどんなポリ公も追いつかねえよ」
 フルフェイスヘルメットはマサさんか。無駄な脳細胞を使ったなと、タラオはフンと鼻を鳴らした。
ひとしきり笑い終えたイクラは言った。
「今日約束の日だからよォ、な」
 タラオはポケットからピン札の一万円を取り出してイクラの差し出した手の上に乗せた。イクラはニカッとまた白い歯を見せた。タバコは吸っていない様だ。
「おう、サンキュータラオさん。持つべき物は友達だなあ。
もしタラオさんが『こっち』に来たらチームに入れて俺の一番の舎弟にするからよ。
リーダーにも頼ンどくし、なあ」
 誰がお前らクズどもと負け組の徒党を組むというのか。タラオはそう言い出したい気持ちを抑えていつもの質問をした。

108:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 11:55:37.86 ID:NeoHKQavO

「学校はいいのかよ」
 イクラはペッとタンを吐く真似をしていつもの返答をした。
「ギムキョーイクだから関係無いっしょ、じゃ、ばいびー」
 フルフェイスヘルメットのマサは無言のままアクセルを回し、バイクはバスロータリーを跡にした。
タラオは舌打ちをして改札口に向かった。

何せタラオはギムキョーイクを受けなければ退学になってしまうエリートの要素を持った者だからだ。

車両は自分の人生に諦めをつけたであろうスーツ姿の男が大半を占めていた。タラオは毎朝そんな男達を見渡し、自分を戒めていた。

110:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 12:10:40.52 ID:NeoHKQavO

「こっ、こいつっ、こいつッ、ちち痴漢だア」

 この日の電車はいつもの沈静とは全く違うこの声で破られた。
性欲に踊らされて人生台無しなんて惨めな物だ。いや、もはや『人生』という代物ではナイ。
性欲に踊らされる様な輩は獣と同じだ。タラオは目を瞑ってこの騒動が過ぎ去るのを待った。

「ち、痴漢する奴は誰だってそう言うんだ、カ、観念しろォ」
 朝の優雅な通学とは無縁のその大声を合図に乗客がざわざわと動き出したのが分かった。
痴漢を捕まえて英雄気取りか。馬鹿な愚民どもだ。やりたい様にやらせとけばいいじゃないか。
どうせやる方もやられる方もアカノタニンだというのに。それにつけても一番腹が立つのは最初に声を上げて痴漢を告発した奴だ。
朝の大事な時間にくだらない騒動を起こした上に善人振るから始末に負えない。
タラオはカバンから単語帳を出して少しパラパラ捲ってからまたカバンに戻して目を瞑った。
タラオが降りる駅はまだ先だった。

111:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 12:22:51.48 ID:NeoHKQavO

タラオはいつも通りの駅で降り学校に入った。
校門にはガタイの良い警備員が二人常駐していた。おはようという挨拶は彼らにかける物ではない。
タラオはそのまま通り過ぎて校舎に入り教室に向かった。
それからみっちり夕方迄義務教育を受けるのだ。

 夕刻、いつも通りの時間にタラオは学校を出た。
この日は母に買い物を頼まれていたから道草をくう事が出来た。タラオはいつの間にか駅迄スキップをしていた。

買い物は帰りの途中の駅を降りた商店街だ。その駅のすぐ近くにある学校がタラオを喜ばせる。

115:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 12:46:09.25 ID:NeoHKQavO

 タラオは冷蔵庫に入れなくても腐らない物だけとりあえず買い物を済ますと、すぐに近くにある学校に向かった。
タラオやタラオの友人に言わせれば大した事のない絶対に進学先にはならない学校だった。

「そろそろブカツが終わる頃デス」
 タラオは腕時計を見ながら呟き、校門の向かいの広場のベンチに座った。

しばらくするとその学校の制服を着た学生や少数だがジャージを着た学生達がゾロゾロと下校を始めた。
それなりの人数ではあったがベンチから立ち上がったタラオはすぐに目的の人物を見つけ出した。
一際美人なポニーテールの女の子だった。
「‥リカさんは芋畑に咲く一輪の花デス‥」
 タラオは自分が意図せずして口に出してしまった事で恥ずかしくなってしまった。
その場でもじもじしていると、道路の向こう側から聞き慣れたバイクのエンジン音が聞こえて来た様な気がした。

120:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 13:25:49.80 ID:NeoHKQavO

 タラオは気のせいで済めば良かったと思いながら校門の前にバイクが停まるのを眺めていた。
「へえーい、リカちゃあん。乗ってきなよォ」
 朝に見た時は上下だぶついた赤ジャージを着ていたイクラだった。しかし、今は上下がテカテカの黒革だった。
ヘルメットを付けていた時はマシでも、外した時は童顔のせいで全く似合っていなかった。
どうやらこういった事は今回が初めてという訳ではなくリカさんは呆れた顔をして言った。
「バイクって三人乗りできたのかしら」
「ねえ、リカ、先生呼んだ方が良いんじゃないの」
 隣に居たリカさんの友人の提案にタラオはとても賛同していたが、リカは断った。
「大丈夫だから心配しないで。それよりイクラ君、いつ迄もそんな人と関わってるとろくな目に合わないわよ」
 そんな人とはその場にフルフェイスのマサしか居なかった。
「どうせバイクの免許も取れるトシじゃないんでしょう。危ないわ」
 リカさんがそう言うと、イクラの顔が真っ青になった。
「んダラァッ、このアマッ」
 夕焼けの曇り空をつんざく大声。それはタラオが初めて聞いたマサの声だった。

125:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 13:46:53.93 ID:NeoHKQavO

「てめぇ、ヒトの生き方にイチャモンつけてんじゃねえぞックソッ。
誰がオニギリだっスベタがッ。アアッ。オイッ。お高くとまってンなヨッ」
 それはそれはリカさんには聞かせたくなかった下品な台詞だった。
それでもリカさんは怯まなかった。
「誰もオニギリなんて言ってないじゃない」
 しかしそれはマサを激怒させるだけだった。
「テメェッ、イマッ、オニギリって言ったロッ」
 マサはついにヘルメットを外した。遠目から見る分にはオニギリに見えなくもなかった。次の瞬間にはマサの平手がリカさんの頬を打った。
「大丈夫っ、リカ」
 リカさんがよろけたので慌てて周りの友人が三、四人リカさんの元に駆け寄った。
「いいの、とにかく先生は呼ばないで」
 リカさんは気丈に振る舞った。
ここで僕が出て行けば。タラオはそう思ったが体が微動だにしなかった。ただ、拳をつくって見ているしかなかった。

イクラがマサとリカさんの間に割って入った。
「すんませんマサさん、ここは俺の顔に免じて許してくれ」
 語尾が少し荒く強調されたのはもしかするとマサを裏切るかもしれないというマサへの警告だったのかもしれない。タラオにはそんなイクラが少し格好良く見えた。

126:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 13:51:23.10 ID:8wKY/pba0

マサオくんかwwww

127:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 13:57:35.64 ID:NeoHKQavO

 それを聞いたマサは少しガッカリした顔をしてからヘルメットを被った。
「マセガキどもは勝手にチチクリ合ってりゃいいんじゃボケェ。俺は先に帰るからなァッ」
 そう言ってアクセルを回した。
「ホントすんませんでしたマサさん」
 イクラの口調にはホッとした様な響きが含まれていた。
バイクはアッと言う間に見えなくなった。
そこに居たリカさんとイクラを含めた数人が喋り始めたがタラオに内容は聞こえなかった。
しばらくするとリカさんとイクラ、リカさんの友人とでグループが別れて下校を始めたのでタラオはリカさんとイクラの後ろを付かず離れずの距離をとってつけた。

128:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 13:58:55.53 ID:AlWoS3zO0

まさおくんに一体何が…

130:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 14:09:36.94 ID:NeoHKQavO

 二人の行き着く先は駅だとタラオは思っていたが、駅をちょっと過ぎた駅の裏にあった神社の境内のベンチに二人して腰をかけた。
それを遠目から見たタラオは鳥居をくぐらずに茂みから境内に入り二人の後ろにまわった。
制服が汚れるのも気になるが、二人が何をするかの方が気になったからだった。

タラオが茂みから顔を出すとイクラがリカさんに膝枕をしてもらっていた。
「イクラ君、学校にちゃんと行かなきゃ駄目じゃない」
 リカさんがそう言うとイクラは顔をリカさんの方へ向け、リカさんの顔を下から見上げる姿勢をとった。
「クンじゃなくて前みたいにチャンで読んでくれよ」
 イクラめ、あんな図体で気色悪い事を。タラオは嫉妬していた。
「イクラちゃん‥」
 リカさんはイクラの名前を呼び直してから、そっとイクラの髪を撫でた。

131:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 14:34:27.17 ID:NeoHKQavO

「何で学校に行かないの」
 リカちゃんがそう質問した。リカちゃんの顔はあと少しで沈むであろう太陽の弱い光を逆光として受け、輪郭だけが輝いた為、イクラには神秘的に見えた。
垂れたポニテールも顔のいくらかを隠しその効果に一役かっていた。
「行っても意味ねえからな」
 イクラはバツが悪そうに答えた。
「あいつらだって俺が何してようがかまわねえみてえだしな」
 イクラにとってのあいつらは教師に両親に近所のおっさんおばさん、大人全般を指した。
それを聞いたリカちゃんは悲しそうな顔をして諭した。
「そんな事ない。イクラちゃんのお父さん、今も君の為に出版社で編集長やって働いて稼いでる」
「何でリカちゃんがそんな事知ってるんだよ」
「ママが言ってたの。当たってたのね」
「そうかい」
 親父は確かに編集長だが、左遷された先で元いた編集長が過労死したからに過ぎない。給料は前より減ったのに勤務時間は増えていた。
あいつもその内過労死する。イクラは久し振りに父・ノリスケに会いたくなっていた。

135:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 14:48:56.90 ID:NeoHKQavO

「親父とはもう一カ月会ってねえや」
 リカちゃんはまた悲しそうな顔をした。
「お、おいっ」
 リカちゃんが泣き出すのかとイクラは思った。目を瞑ったから。
しかし、そうではなかった。イクラの唇にリカの唇が重ねられた。
とても柔らかかった‥様な気がした。突然の事で驚きが大きかったのだ。それ故にイクラのリカとのキスの感触は鈍ってしまった。
「帰ろっか」
 リカちゃんはイクラの上半身を優しく押し戻して立ち上がった。キスの事について何も言う気が無い様だった。
「ごめん、ちょっと用事思い出したわ」
 イクラはそう言うなりベンチから跳び起きて境内の階段をジャンプして飛び降り鳥居の向こうの道路に走って行ってしまった。
イクラは自分の紅潮した顔を誰にも見られたくはなかった。

それを見たリカさんは溜め息をついた。
「もう‥男の子って小さい頃から勝手よね」

142:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 15:21:28.77 ID:NeoHKQavO

「リカさん」
 リカは背後からの予期せぬ呼び掛けに驚いた。
何故ならベンチを越えた背後は茂みがあって、急斜面になっていたからだ。そして普通はそんな所に人は居ないからだ。
恐る恐る振り向くとそこにはタラオが居た。
「リカさん、リカさん、リカさん‥」
 多分制服であろう服は泥だらけで顔は茂みに入っていたせいか傷だらけだった。
「何でそんな」
 リカが問いを投げ終える前にタラオが動きづらそうな制服を着ている割には俊敏な動きで二人の間を詰めたので、リカは驚いて言葉に詰まってしまった。
「キスした、キスした、スベタ」
 タラオは肩で息をしながらリカの体を眺め回した。リカはタラオの顔をまじまじと見て恐怖した。
タラオの目がタラオが常軌を逸している事をリカに訴えていたからだった。

遂にタラオの手がリカの腕に触れると、リカは悲鳴を上げてもう片方の手に持っていたカバンをタラオに振り下ろした。
カバンの金具がタラオの顔を引っかいた。

146:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 15:35:06.75 ID:NeoHKQavO

「ギャッ」
 タラオは短い悲鳴を上げて後ろに跳び退いた。
自分の顔に手のひらを目一杯に開いて当てた。そしてその手のひらを顔から離して眺めた。
「血がァア、チがァウ、違あうぅゥ」
 タラオはその自らの血でぬらぬらと光っている手を前に出してリカに見せた。
「リカさん、痛いよ、キスしてよおォ‥」
 リカはまた悲鳴を上げ、それから階段に向かって逃げようとしたがタラオに回り込まれてしまった。
まだ血塗れの手を見せ付けていた。
「違うゥウウ、違ううぅ」
 そして呻いていた。リカは反転して神社の社務所に向かって駆け出した。タラオはリカの背に向かって叫んだ。
「なんで逃げるんデスカアアアアァァァッ」

153:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 15:53:50.63 ID:NeoHKQavO

 リカは社務所に辿り着くとすぐに戸を開けようとした。鍵が掛かっていた。
「誰か、誰か居ませんかッ、誰かァッアアッ」
 タラオの手がスカートを掴んだ。リカが後ろを振り向くとタラオの血まみれの顔が目と鼻の先にあった。
「痛いデスゥう。遺体ですぅうゥ」
 タラオの目からは涙が流れていたが、血を洗い流す程の量では無かった。リカはなりふり構っていられないと本能で感じた。
ビッ。
スカートのチャックの辺りから布が裂け、スカートが脱げた。タラオの指は下着も掴んでいたらしく、脱げる事は無かったものの半ケツになってしまった。
リカは神社の裏山へ走り出した。
タラオはリカの白い柔らかそうで揉みがいのありながら適度に絞まった二つの尻ぺたがパンティの上部からはみ出ているのを見て興奮して鼻血を出した。
パンティは白でフリルもない簡素な物であったが、逆にそれがタラオを興奮に追いやった。
しかし、タラオの顔面は既に血だらけだったので端から見れば鼻血が出た事は分からなかった。
「半ケツ、ハンケツ、判決デスゥ。判決は僕が下しマースッ」
 タラオは笑い声を上げながらリカの後を追った。

158:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 16:22:59.75 ID:NeoHKQavO

「嫌ァー許して、許してちょうだぃいいっ、来ないでえっ」
 裏山は粘土質の土層を露わにし、滑り、とても道具無しでは登れなかった。
リカは泣いて懇願したが、タラオはニタニタ笑いを浮かべながらじりじりと間合いを詰めた。
「ハンケツデスゥーフゥウ」
 タラオの顔面を覆っていた血はすっかり固まっていた。
そしてタラオはリカの後ろから両手で両肩を掴んだ。リカはそれを振り解こうとしたが、凄い力で抑えられたので無理だった。タラオの体格はリカと同じ程だった。

 タラオは片手で素早くチャックを下ろしズボンを落とした。
トランクスの隙間から伸びたタラオ棒はリカの尻の割れ目を滑った。何度も執拗に滑らした。
「ああー柔らかいデスウ」
 両手はリカの背中の肩甲骨の上辺りに置かれていて体重をかけてリカを粘土層に押し付けていた。
 リカは社務所で見たタラオの血みどろの顔面を思い出して後ろを振り向けなかった。
リカの顔は泥まみれだった。
「キスしてクーダサイッ。こっち見てクーダサイッ」
 タラオはリカのポニーテイルの香りを嗅ぎながら要求した。
「んああアアア、キモチイイイイイイッ」
 絶叫した。

160:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 16:36:11.54 ID:NeoHKQavO

 タラオは自分が快感で昇天したのかと思った。

気付くと前のめりに突っ伏していた。
段々目の焦点があってくると、少し遠くに革ジャンを腰に巻いているリカさんが居た。
「リカさん」
 ぼそりと呼び掛けるとリカさんの顔が引きつったまま固まり、それを見た瞬間か呼び掛けた瞬間に背中に痛みが走った。
「タラオさん、これはちょっとヤバイでしょ」
あまりにも近すぎて視界に映らなかったのはイクラだった。イクラの足がタラオの背中を踏みつけていた。
「しばらく起きあがっちゃ駄目だよ、痛い目に遭いたくなら。ね」
 上からイクラの声がした。
「リカちゃん行こう」
 そう言われてリカさんはタラオに嫌悪の目をちらりと向けた後、境内の階段の方へイクラと共に姿を消した。
タラオは動けなかった。

165:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 16:51:13.44 ID:NeoHKQavO

「ヤダどうしたのタラちゃん」

妻は今にも泣き出しそうだった。
神社の方がタラオを家に帰しに来てくれていた。
なんでも神社の裏手にある山を登ろうとして滑落したらしい。

タラオは制服も顔も手も靴も全身が傷だらけだった。
「タラぢゃん、こんなになってええぇえっ」
 妻はついに泣き出してタラオの汚れも気にせずに抱き締めた。

タラオの父・マスオは何も言わず何もせず、ただ妻・サザエが息子であるタラオを抱き締めるのを見ていた。
そうだ、男は時にヤンチャでなければならない。マスオは腕を組んで
「ふーむ」
 と、閉ざした口から声を洩らした。

167:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 17:03:58.72 ID:NeoHKQavO

「おい、サザエッ」
 呼び掛けられたサザエはタラオを抱き締めながらマスオの方を振り返った。まだサザエは泣いていたが、タラオは泣いていない。
マスオは心を鬼にして言った。
「もうその辺で良いだろう。あまり甘やかすなよ」
 サザエはこめかみに青筋を立てて怒鳴った。
「だってこんなに傷だらけじゃないっ。あなたも少しは心配してあげたらどうなのッ」
「何を言うんだ。僕は心配してるよ。さァタラオ、風呂に入って来なさい」
 タラオは無言だったがマスオの指示通りに浴室へ向かった。それを見送ったマスオの顔は満足気だった。
「タラオは帰ってきた時から泣いてなかったろう」
 と、マスオはサザエに言い、居間に戻った。サザエも仕方なく夫に続いて居間に戻った。

170:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 17:12:17.23 ID:NeoHKQavO

「制服は代えがあるから大丈夫だけど、顔の傷はどうしましょう」
 サザエは憂鬱そうに言った。
「なァに、傷は男の勲章さ」
 マスオが遠い目をしながらサザエを励ますと、今や一家の長であり、タラオの祖母にしてサザエの母であるフネも同調した。
「そうですよサザエ。サザエは女なのに子供の時は生傷だらけだったでしょう」
 言われたサザエは不愉快そうな顔はしたものの反論はしなかった。

その夜タラオは顔中を傷薬まみれにして眠らされた。

173:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 17:22:54.35 ID:NeoHKQavO

 翌日、マスオとタラオは一緒に家を出た。
「いやァなかなか、芸術的な傷跡だ。まさにタラオ・ルネサンスだ」
 マスオはタラオの顔を見ながらバス停迄歩いた。
タラオはその間一言も喋らなかった。
バス停に着いてもマスオは喋り続けた。
「ところで最近イクラちゃんを見ないけど、どうしているのかなあ」
 タラオはさっき迄眠たそうにしていた目を見開いた。
「どうしたんだいタラオ」
「パパ、僕イクラ君の事は何も話したくないんだ」
「そうか、ケンカでもしたか」
 マスオは鎌を掛けたが、タラオが何も言わないのが分かってそれ以上は追及しなかった。

175:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 17:27:59.09 ID:UWOTu6xW0

マサってマサオくん?

179:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 17:40:19.69 ID:Ei1wiDW50

>>175
左様

176:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 17:33:05.04 ID:NeoHKQavO

そういえばノリスケ君にも最近全く会わない。どうしているんだろうか。
マスオは今会いたい相手ではない、むしろ会いたくない筈のノリスケの事を思い出した。
「突然黙り込んでどうしたんデスかパパ」
 タラオの声で我に帰ると適当にごまかした。
「いやァ仕事の事でちょっと考え事をね」
 タラオはそれを聞いてつまらなさそうに窓の外を眺めた。
「そろそろ駅デスよ」
「ああ、そうだね。降りる支度をしないと」

181:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 17:46:22.49 ID:Ahpzdnsw0

ネネちゃんの出番はまだか

182:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 17:50:17.12 ID:cxryEEPS0

>>181
ヒロインは最後だろ。

184:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 17:56:32.85 ID:NeoHKQavO

 最近マスオとサザエの夫婦仲は良くなかった。
不仲の主な原因は息子・タラオの教育方針についてだった。
マスオはタラオを強く逞しい男にしようと思っていたが、サザエはとにかく塾と学校でタラオを勉強マシーンに仕立て上げるつもりだった。
「‥クン、おい聞いているのかい、鰒田クン」
「んっアア、聞いてる、効いてるよ」
 実際には何を言っていたのか分からなかったが、マスオは職場の中でも特に互いの事を知り合う穴子になら適当な返事で大丈夫だろうと判断した。
穴子に中指を突き出され
「これ何本に見えるかい」
 と、言われたので
「ファック」
 と、返した。穴子は愉快そうに笑った。
「しかし、君ね。最近部長に昇進したからってタルみ過ぎじゃないのかい。よくボーッとしちゃってさア」
「おいおい穴子君、上司に向かって『キミ』は無いだろう」
「もう就業時間はとっくに過ぎてるんだよ、鰒田クン。カタイ事は言いっこ無しさ、ハハハハハ」
 マスオと穴子は二人して笑い、オフィスにまだ残っていた社員達が何事かと視線を二人に持って行った。

186:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/18(金) 18:16:58.22 ID:NeoHKQavO

「それでさ、鰒田クン、明日は休日だし今夜は撤マンなんてどうだい。メンバーは今残ってる奴から集められそうだよ」
 穴子はコートを羽織りながらマスオを雀荘に誘った。
「いや、今夜は家に直行して家族サービスするよ。
それに今オフィスに入るのは若い社員だけだよ。今時の若い人ってのは上司が飲みに誘ったりすると迷惑なんだろう」
 マスオが断ると穴子は肩を落としてガッカリした。
「そうかい。じゃあ今夜は鰒田クンもいないし、僕も妻に家族サービスしてやらなくちゃな」

 しかし、マスオの足が向かったのは磯野家ではなかった。その道中マスオは携帯で渋々サザエに連絡を取った。
「やァサザエ今夜はちょっと帰れそうにない。会社で寝泊まりするから明日の昼頃には帰れるとは思う」
「そうなの。それじゃ気をつけね」
 今のサザエにはもう帰りが遅くなろうが外泊だろうが、理由を練る必要が無くなっていたし、義母もわたしを信用していた。
マスオは信用を得ると共に『男』として扱われなくなっていた。

278:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 18:49:52.54 ID:896VkAXZO

 マスオが扉を開けた先に居たのは白いブラジャーとガーターベルトの上から赤いネグリジェを着たタイコだった。
「あらマスオさん、今晩は。お久し振りね」
 ネグリジェだけでなく下着も透けていて上からうっすらとビーチクと三角の林が見えた。
マスオが訪れたのはノリスケの家族が住んでいるマンションの角部屋だった。
「最近、ちょっと仕事が立て込んでたもんでね」
 マスオはそう言ってコートを脱ぎながら、ねっとりとタイコの体を上から下まで観察した。
ふくよかでありながら、形を崩さない乳房に肥満とは呼べない程に自己主張をする腹、そしてまたこれもノリスケが
「お前最近太ってきたんじゃないか。その内にボクを追い越しちゃうぞー」
 と、言い出さないぐらいに肉をつけた尻。
それら淫靡な物達を纏った体幹から、クネクネと嫌らしい肢体が生えている。
「マスオさん、最近部長にご昇進されたそうね。おめでとうございます」
 タイコがマスオのスーツを脱がせた。部屋はとても暖かかった。

281:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 19:09:15.71 ID:896VkAXZO

 自分のネクタイを外すタイコの顔をマスオはジッと見つめた。
タイコの顔は皺一つ無く、触ればツルツルとしているだろうと、マスオは思った。
「君は十年前から変わらないね。顔モ体モ‥」
 それはうっとりした顔をして口から出た言葉だった。
タイコは微笑みながら返した。
「フフ、十年前はこんな格好も化粧もしてませんでしたわ」
 マスオはタイコの乳房を鷲掴みにして鼻息を荒くした。
「今夜は大丈夫なんだろう」
 そのマスオの問いに対してタイコは自分の乳房を愛撫している腕を優しく押しやる事で答えにした。
「お久し振りではありますけれど‥今夜はちょうどマスオさんに相手をしてもらいたいコが居ますので‥」
 そう言ってタイコは靴箱の中から紙を一枚取り出した。
紙には一人の女の子の小さい証明写真にその女の子の簡単な経歴が書いてあった。
「僕はもうタイコさんと半年はしてないよ」
 マスオがそう言って溜め息を漏らすと、タイコは楽しそうに笑って言った。
「ホホホ、わたくしも主人とはもう二、三年の間、いたしておりませんわ」

283:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/19(土) 19:17:29.83 ID:896VkAXZO

 なんでもノリスケはここ最近月一、二回しか帰らないらしい。子のイクラちゃんはもう三年もここを訪れていないらしい。
ちょうどタイコさんがこの商売を始める前の事だ。
ふと、マスオこのマンションの一部屋で一家団欒をしていた頃の家族の光景を思い出していた。
「どうしました、マスオさん。お気に召しませんでしたか」
 タイコがマスオの手に握られていた紙を一瞥して言った。
「いや、そうじゃないんだ。このコは可愛いよ。
‥ただタイコさん、僕は今キミとしたかっただけって事さ」
 マスオの口調は明らかに不満そうだった。
「また今度にお願いしますわ」
 タイコは諭す様にお願いをした。

304:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 00:36:20.32 ID:/X0W2TlNO

「‥仕方ないかァ。それにしてもやっぱりこのコも‥」
 マスオが諦めをつけた様に写真の娘を見ると、タイコはニッコリと笑って言った。
「ええ、その娘もモチロン満十八歳ですわ」
「ハハハ、十八歳以上ね。そりゃ良いや」
 これはこの場所に来た時に必ず交わさなければならない言葉だった。
「そもそも、自治体に許可もとってないなんだから、そんな決まり文句に何か意味はあるのかい」
 マスオは以前から抱いていた疑問をタイコに投げかけた。タイコはフッと一息吹いて答えた。
「今にして思えば意味の無い物ですわ。でもこの様な事を始めた時には意味があると信じていたんですの」
 タイコは左手でマスオの右腕を取り、もう片方の右手を奥の部屋へ向けた。
「マスオさんはお優しい方だから、初めてのコにはなるべく当てたいと思っていますの」
 勿論、この『初めて』というのは大抵の場合、性交渉の事を指すのではないが、それでもマスオはこの言葉に淡い期待を抱かずには居られなかった。

306:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 00:56:44.26 ID:/X0W2TlNO

 マスオはタイコに捕まれていない方の腕を差し出した。それを見たタイコの表情は少しだけ曇った。
「マスオさん、今言った様に初めてのコだから‥」
「それは聞いたけど、どうも仕事に支障を来す様になってね。大丈夫。もしもそのコが慣れたら‥その時しか使わない」
 その言葉を聞いたタイコは渋々とマスオの腕を離して花瓶を裏返した。
花瓶の中からは黒い粉の入った袋がいくつも出てきた。それを見たマスオは首を横に振った。
「そのブラックコカイン‥だったかな。珍しいらしいけど、強すぎだよ。多分それが仕事に支障を来したんだと思う」
 タイコはヤレヤレという仕草を見せ、自分のネグリジェの首に手を入れてブラジャーから錠剤を取り出した。
「じゃあこれはどうかしら。業者さんの話だとあの中国産のコカインよりは刺激が弱いらしいですわ‥新薬で名前は‥えーと‥何だったかしら」
 タイコが薬の名前を思い出す前にその薬はマスオの手に握られた。
「マァ何だって良いよ。僕は君を信じているから」
 マスオはそう言って一人で奥の部屋へ歩いて行った。
「それでは宜しくお願いしますわね」
 マスオの後ろからはタイコの声が追った。

311:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 01:19:50.13 ID:/X0W2TlNO

 マスオが襖を開けた先には、チェック柄のスカートに白いブラウスの上から紺のブレザーを着て髪を二つに分けて結んだ女のコが脚を崩して布団の横に座っていた。
足には紺の靴下。マスオはその足から膝へ、膝から大腿へと少しずつ視線を移動させた。
スカートが少しだけ捲れていて大腿と大腿の間からは白い下着がチラリと見えた。
「その髪は地毛の色なのかい」
 女のコが自己紹介をしようと口を開く前にマスオはただ第一印象で気になった事を口に出していた。女のコは少しだけ戸惑った様に言った。
「ええ、わたし、小さい頃からこの赤毛なんです。気に入らないですか‥」
 マスオはこの部屋では今迄に黒毛の女のコしか見た事が無かった。タイコの紹介する女のコ達は皆染髪などしていなかった。
しかし、そういった今迄の慣例とは別にマスオは気になる事があったのだが、それが何なのかマスオには具体的に分からなかった。
「いや、そんな事はないよ。僕が昔読んだ事のある赤毛のアンを思い出しただけさ。とても可愛いヨ」
 マスオは女のコが不安そうにしていたのを見て適当に励ました。
女のコは安心してホッと息を吐いた。

313:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 01:35:02.48 ID:/X0W2TlNO

「あっいけない。自己紹介がまだでした。わたしの名前はネネです」
 女のコは慌てた様に名前を述べた。この状況での自己紹介まるで源氏名の様だが、タイコさんの渡してくれた紙を見た限りそれは本名だった。
マスオはニッコリと口角を上げて軽く会釈をしながら、シャツの第二ボタンを外した。
それを見たネネは自身の自己紹介に付け足しをした。
「わたしはもう済ませましたが、えーと‥」
 ネネがチラリと上目遣いにマスオと目を合わせたのでマスオは察した。
「僕はマスオ」
 それを聞いたネネは頭を掻きながら照れ笑いをして続けた。
「‥マスオさんはお風呂の方はどうしますか」
「君が良ければこのまま」
 マスオは即答した。出来れば女のコ、このネネも風呂に入る前に会いたかったと、思った。
マスオ棒はもう起立していてズボン越しにも分かった。
それに気付いたネネは口元を片手で抑え、頬から耳迄を真っ赤にした。

316:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 01:43:30.27 ID:6XFKAqq80

ネネちゃんwwwwwww

317:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 01:45:53.38 ID:x3dqZjy0O

マスオ棒wwwwwwwwwwwwwwwwwwww

319:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 01:54:25.06 ID:/X0W2TlNO

 マスオはスリッパを脱ぐとそのまま和室の方へ倒れ込んでネネを押し倒した。
「可愛いなァ、小さい肩に赤くて柔らかそうなほっぺ‥ハァハァ」
 マスオが鼻息荒くネネのブレザーのボタンを外したところでネネがスルリとマスオの体の下から抜け出した。
「ちょ、ちょっと待って‥ちょっと待って下さい」
 ネネはそう言って学生鞄の隣に置いて在った大き目のお洒落なパッチワークの大きな袋に手を突っ込んだ。
マスオが黙ってそれを見ていると、袋の中からは袋に負けない程大きなウサギのぬいぐるみが出てきた。それはネネの身長の三分の二はある様に見えた。
しかし何故ここでウサギの人形なのか。マスオは早くネネの服を脱がせたい欲望をグッと抑え
「それは一体何だい」
 と、訊いた。
ネネはぬいぐるみをギュッと抱えて言った。
「このウサギちゃんが居ると安心できるんです。一緒じゃ駄目ですか」
「ん、いや、良いよ。ウン」
 ネネが瞳を潤ませ始めたのでマスオはやむなく了承した。
それにウサギのぬいぐるみを抱いた女のコを抱くのも社会的な罪悪感をより一層大きくしそうだったからだ。ここでは罪悪感が大きければ大きい程に得られる快楽も大きかった。

324:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 02:10:54.18 ID:/X0W2TlNO

「それじゃイイネ‥」
 マスオは疑問符を打つ様に語尾を上げ、メガネとズボンのベルトを外した。メガネは自分の鞄の中に投げ入れてから四つん這いになって布団へ向かった。
ネネは座ったまま布団の上に移動していた。
「ハイ‥宜しくお願いします」

「ハイ、ハアイ、ハァイッ。バアブ、バァブゥ」

 マスオの脳裏に一瞬誰かの顔が霞んだ。誰なのかはハッキリと思い出せなかったが、それを振り払う様にマスオは顔を一度横にブンと振った。
ここに来た時はここでやるべき事以外の一切を忘れる。それがマスオのここでのモットーの一つだった。
マスオはネネのブラウスの襟元の緑のリボンを引き抜いた。
「リボンはいつもつけてるのかい」
「いいえ、いつもは着けていません。でもタイコさんが着けておいた方が良いとおっしゃったので‥」
「‥‥ウン、悪くないヨ」
 マスオはネネの胸元のリボンの有無を考え、確かに有った方が嬉しいと思う自分に気付いたが、自分がタイコの、女の手のひらの上で転がされてる気がして素直に喜べなかった。

327:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 02:29:58.24 ID:/X0W2TlNO

「マスオさんが全部脱がせてくれるのかしら、フフフ」
 マスオがネネのブレザーとブラウスを脱がした所でネネが悪戯っぽく言った。
マスオはネネが初物では無い事を知り淡い期待は失せた。
しかし、ブラウスを脱がされてから再びぬいぐるみを抱いたネネの手が震えていたのにマスオは気付き、舌なめずりをした。
初物であろうと無かろうと、相手が手練の売女ではないのに満足する事にしたのだった。
「それじゃネネちゃんのカワイイチクビを見せてもらうヨ」
 マスオはそう言って後ろ手にネネの青を貴重にしたレースのブラジャーのホックを外した。
「ちょっと見せてネ」
 マスオがネネにぬいぐるみを片手で持たせる様に除けると、そこには小振りな乳房に桜色のビーチクがあった。
思わずかぶりついていた。
「あーンン、可愛い可愛いよォ、ウププ」
 マスオが舌を使ってビーチクを転がすと、ネネが息を漏らした。
「ンン‥ハ‥スカートがまだ‥」
「良いンだヨ、これで」
 右手でネネの肩を持って自分に寄せ、左手でネネの脚を伸ばさせる様にしてからブラジャーとお揃いのレースのパンティーを一息に脱がせた。

329:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 02:46:43.84 ID:/X0W2TlNO

 パンティーを脱がした左手はすぐに上に移動してネネの右の乳首をこねくり回した。
マスオは乳首を舐めるのを止めると、自分の体をネネの脚の上に跨らせた。
「ハアハァ‥それじゃ君はそのまま布団の上に横になって、ネ」
「ハイ‥こうですか」
 ネネは頭を枕に預けると、またぬいぐるみを抱き寄せた。
「それじゃあイマ見せるゾオォォッ」
 マスオはネネの上に跨ったまま腰を移動させてネネの胸の辺りに近付けてから右手でズボンと下着を一度に下ろし、自分の股関に堂々とそびえ立つマスオ棒をネネに見せ付けた。
「ヤッ、やーンッ」
 とっさにネネはぬいぐるみを抱いていた両手を離してそれで自分の目に前を覆ったが、マスオにはその両手の指の隙間からネネの目がしっかりマスオ棒を捉えているのが分かった。
マスオ棒は更にグングンと伸びていった。

331:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 03:01:35.96 ID:/X0W2TlNO

「手、どかして」
 ネネがおずおずとその顔から手を離すと、マスオは腰をグイッと前に突き出して棒をネネの柔らかそうな頬に押し付けた。それは実際にとても柔らかかった。
「フワフワしていてまるでパン生地に包まれている様だよ」
 ネネの顔はもうそれ以上赤くはなれない程に紅潮した。棒からは透明の粘液が糸をひいてネネの頬と棒とをべと付かせた。

ぬちゃぬちゃぬちゃ‥。

ぬにゅっ、ぬにゅっ、ぬにゅっ‥。

「あ、あのッ‥これは‥」
 ネネは棒が自分の頬にくっついたまま五分、前後しているのを見かねた。
上に見えるマスオのは顔は満足気で、目を瞑っていた。
「とりあえずこのまま一回‥」
 そう言ったマスオの腰の動きは加速した。ネネの顔は粘液まみれになっていた。

ドニュドニュドニュドニュ‥。

「アッ出るウッ」
 棒が脈打つのをネネは頬で感じた。

335:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 03:27:10.96 ID:/X0W2TlNO

「ちょっと舐めてみて」
 マスオがそう言ったのを聞いてネネは舌を出して自分の顔にかかった白濁液を少し舐めた。とてもぶよぶよとして濃厚だった。
「アッハッハッ、それも嬉しいんだけど、こっちの事だよ」
 既に復活しかけて上向いたマスオ棒がピクンと跳ね上がった。マスオが舐めて欲しいのは液ではなく棒だった。
「ハ、ハイ‥」
 ネネの舌がチロッと突き出、すぐ前にあった棒の先端に触れた。
「ハッ」
 その途端にマスオは嗚咽を漏らした。
「‥良い、良いね‥そのまま舐め回して」
 ネネはマスオに言われるがままになった。
棒の先端から笠の下、正中が盛り上がった所へと丹念にぬるりぬるりと舌が舐め回していった。
「あ‥ここも舐めるんですか‥」
 ネネは涎まみれになった口を一端棒から離し、目を棒に向けたまま訊いた。
「アア‥そのまま舐めて」
 ネネは再びマスオ棒に口を近付け、そして更に下のマスオ玉に舌をつけた。
「口で含んでみてよ」
 マスオは更に要求した。ネネは左玉を口に含んだ。おけけが口の中で不愉快に動いていた。

337:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 03:43:21.93 ID:/X0W2TlNO

「アッ、今すぐ先の割れ目を口に入れてっ、今すぐっ」
 そのマスオの声があまりにも切羽詰まっていたのでネネは急いで棒の先端に顔を移動させ口にそれを含んだ。

ビクンッ。

「ヒッ‥」
 口の中で棒が脈打ったのでネネは驚いて棒から口を離そうとした。
「ダメッ」
 しかし、マスオの叱責と共にマスオの両手が後頭部を押さえつけたのでそれは出来なかった。
「ンゴッ‥ンンッ」
 棒の先端が一瞬喉の奥に触れ、ネネはむせた。

ドロッドロロロドロッ‥グリュリュ。

先に自分の顔中を覆い、舌で触れた液体と同じ物が口の中に入ってくるのをネネは感じた。
「オオッ‥ウッ‥うぇ‥‥うぇ‥」
 ネネは苦しそうに声を漏らし、顔をしかめた所で棒は液体の糸をひきながら口から出て行った。

339:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 04:03:01.75 ID:/X0W2TlNO

「ゴホンッ‥。ゴヘ‥ヘッハッ‥」
「ハアハア‥気持ち良かった‥けど、ごめんよォ‥」
 ネネが咳き込みながら布団に右手をつき身を横に捻って枕の横に液体を吐き出すと、マスオは両手をネネの頭に置いたまま自身の行為に対する謝罪を口に出した。
しかし、マスオのその顔に謝罪の念は無くただ恍惚だけが漂っていた。
それからマスオは急いで布団の横に置いてあるグラスの水差しを手に取り一緒にあったグラスコップに水を注いだ。
「はい、これ」
 水がなみなみと入ったコップはマスオからネネの手に渡った。
「ありが‥とうございます」
 ネネはコップの水を半分グイと口に含むとうがいをし、それからその水を吐こうとその場所、物を目で探した。
しかし、マスオが自分をジッと見ている事に気付きその水は飲み込む事にした。
「ンッ‥」
 マスオはニッと笑って前歯を見せた。
「それじゃあまた横になってね」
「‥ハイ」
 ネネはコップの水を飲み干すとそのコップを水差しの横に置き、言われた通りに横になり、ウサギちゃんを抱く腕を強ばらせた。

340:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 04:21:55.57 ID:/X0W2TlNO

「ヒャッ」
 ネネは自分の股に熱い風が当たるのを感じ小さく短い悲鳴を上げた。
体を起こして自分の股関の方を見ると、マスオがスカートの中に頭を入れているのが見えた。
ネネの悲鳴を聞いたマスオは頭を上げて嫌らしい笑みをネネに見せた。
「彼氏にこんな事してもらったりはしないのかな」
「わたし、そんな事‥だってキタナイ‥」
 答えを聞いたマスオの顔は得意気だった。
「僕の舌にはカメレオンも平伏すのさ、ハハ」
 そう言って舌を出すと、舌は左右に動いた。
それから舌をしまってマスオは更に質問をした。
「もしかして、さっきの舐めたのも初めてだったりするのかい」
 やや間があってから
「ハイ」
 と、ネネが返事をした。マスオはますます得意気な顔をして質問を続けた。
「今迄にこういう事は何人としたのかい」
 するとまたさっきと同じ間があって
「一人‥」
 と、ネネが喉から絞り出す様に答えた。
「今の彼氏サンかな」
 マスオのその問いにはいくら待っても答えが返って来ない代わりにネネの瞳からじわりと涙が出てきた。
マスオはそれを見て質問を止め
「まあ、いいや」
 と、言ってまたネネの股関に顔を移した。

342:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 04:45:17.48 ID:/X0W2TlNO

 マスオはスカートの中に頭を潜らした。
耳は静寂の外からすすり鳴きの声を聞いて更に研ぎ澄まされ、鼻は淫靡で密な匂いを嗅ぎ取って熱風を噴き出し、
目は柔らかくすべすべとした左右の肉を追って前方の割れた丘を見てランランと輝いた。

割れ目に口を押し当てる。

チュ‥。

 丘は唇を押し返しそうな気がした。
口を離しその丘をじっくりと眺める。
丘の下、右大腿と左大腿の間は真っ暗な大海原の様だった。実際にそこにあるのはしわくちゃになった白いシーツだった。
この丘は崖だ。絶壁だ。
マスオは筋肉の逞しいスパルタの精鋭兵達が数だけで軟弱なペルシャ兵達をその絶壁からシーツの大海原に突き落とす場面を思い描いた。

343:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 05:05:39.32 ID:/X0W2TlNO

 スパルタ兵がペルシャ兵を落としきった所で、マスオはまた口を丘の割れ目に押し当てた。
「喉が渇いただろう。何か飲ませてやろうか」
 スパルタの王がマスオの頭の中でそう囁いた。
それはペルシャ兵が海に落ちる前の台詞だ。マスオはペルシャの王の顔をかき消し、ネネの愛撫に集中する事にした。
舌をチロチロと出して丘を分かつヒダに沿って断続的に当てた。
マスオの顔の左右にあった脚がクネクネと動き出した。

ズロロッズロロロロロッ。

チューッチューッチューッ。

 マスオは思い切って割れ目を吸った。わざと下品な音を出して。
顔の左右で蠢いていた脚はマスオの頭をがっちりと挟んだ。
「ヤッ、やー、いやァ、恥ずかしいッ」
 同時にスカートの外、頭の方からネネの声が聞こえた。

345:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 05:23:30.37 ID:/X0W2TlNO

 それからマスオは割れ目を押し広げる様に舌をヒダとヒダの間入れた。

クニュクニュクニュクニュクニュ。

今度は音を出さなかった。
頭を挟んでいる左右の脚がピクンピクンと震え続けているのがマスオには簡単に分かった。
「ン‥ン‥‥クッ‥あっん‥‥んん‥」
 ネネも音を出さなかったが、マスオにはネネが声を我慢しているのが分かった。

暫くしてヒダがふやけてきたとマスオは思い始め、そのマスオの口の周りが割れ目からの応酬ですっかりべとべとになった頃。
「駄目駄目っ。もう駄目ええぇェェッ」
 ネネの叫び声が突如として暗闇の中の沈黙を妨害した。
マスオは後頭部に自分の頭をこの丘から引き離そうとする二つの手が置かれたのを感じ、それと同時に舌がヒダの激しいうねりを感じた。

ジョバアッジョボボボボボボモワッ。

そして、割れ目が噴水した。
「やあああ‥駄目って‥だめっていったのにいぃぃ‥」
 ネネは全身をビクつかせて果て、マスオは割れ目から噴いた黄金水をひたすら喉に押し入れだ。
一瞬、大笑いしているスパルタ兵達の姿がマスオの頭に浮かんだ。

347:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 05:37:05.21 ID:/X0W2TlNO

 マスオがスカートから頭を出し膝立ちのまま少し後退すると、可愛らしい赤毛の女の子がチェックのスカートと紺の靴下だけを身に纏った姿でウサギのぬいぐるみを抱いて肩で息をしているのが見えた。
マスオは誇らしげに鼻をフンッと鳴らした。

それからマスオは身を翻して避妊具のコンドームを探して脱ぎ捨てたズボンを手に取った。
するとポケットから錠剤がポトリと一錠落ちた。
「おっと忘れてた」
 と、マスオはボソリと呟くと、畳に転がるその錠剤を右手の人差し指と親指でつまみ上げ、ネネの汗かマスオの汗か分からないぐっしょりと濡れた左の手のひらに落としてから眺めた。
ネネちゃんも慣れてきたみたいだしもう大丈夫だろう。
マスオは左手を自分の口に持って行って錠剤を放り込んだ。

348:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 05:56:20.42 ID:/X0W2TlNO

 荒涼とした砂漠の大地に黒い物体が一つ動いていた。
風もなく赤い砂も舞わないこの風景の中で黒くて動く物体はとても異質だった。
「キミはナニをしているんだい」
 僕はその黒い物体に話し掛けた。それはとても人間には見えなかったが僕は話し掛けたのだ。
黒い物体が体を捻ると目の様な物が二つあった。
やはり生き物だったと僕は確信し、そして何故か安心した。
黒は面倒臭そうに言った。
「ナニッテ、シンゾウヲタベテイルノサ。ミテワカラナイノカ、コノロリコンヤロウ」
 言葉には抑揚がなく声というよりも電子音の様だったが、僕はこの黒が日本語を話せる事を知って心底安心した。
「美味しいのかい」
 僕がそう聞くと黒は手の様な触手にくっついている赤黒い物体を口の様な穴に押しやりながら言った。
「ソリャアオイシイサ。ナンタッテジブンノナンダカラ」
 黒に表情があるのか見た所は分からなかったが、僕の事はあまり好きそうでは無かった。
こんな時は食文化を分かち合うと良い。黒がシンゾウという物を食べているのを見て僕はそう閃いた。
「僕にも分けてもらえないかな」
 僕がそう訊くと黒は長く伸び上がった後に答えた。

350:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 06:13:36.64 ID:/X0W2TlNO

 黒は立ち上がったのだ。目があって正面だと思われる方も思っていた通り上から下迄真っ黒だった。
それから僕に近付いて前に立つと短くなった。僕は突然怖くなった。
「何をするつもりなんだい」
「ナアニカンタンナコトサ。チョットマッテナ」
 と、黒は言うと、僕のお腹に四本の触手で触れた。僕は何も着ていなかった。
「アトハトリダスダケダナ」
 黒はそう言うと一歩後退りをした。脚がある様には見えなかったのでこの表現が正しいのか僕には分からなかった。
黒はまた伸び上がって言った。
「ジブンデホジレ」
 僕はその言葉に短く返した。
「自分でほじる」
「ソウ、ジブンデホジル」
「自分でほじる」
「ジブンデホジル」
「自分でほじる」
「ジブンデホジル」
「自分でほじる」
 僕は右手の人差し指を自分の剣状突起の下辺り、柔らかい肉の辺りに押し当てた。

351:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 06:29:52.96 ID:/X0W2TlNO

 黒くツヤツヤとした触手はシュルシュルと音を立てて同じく黒い体幹に戻っていた。
それを見た後、僕は思い切って指で肉をほじった。
肉は古くなって弾力性を失いひび割れたゴムの様にボロボロと落ちていった。
何だかとても愉快だった。ビニールの梱包材のあのプチプチを潰しているかの様に病みつきになった。
黒はそれを察した様に言った。
「タノシイカ」
 僕は肉を指でどんどんほじくり出しながら返した。
「うん、楽しいよ。とってもね」
 どんどんどんどんほじくり出した。
なかなか臓物は見えて来なかった。
僕はいつの間にこんなに贅肉をつけていたのだろうかと思ったが、その疑問はすぐ快感に飲み込まれていった。

ほじほじほじほじほじほじほじほじ‥。

ぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅぐじゅしゅぐじゅ‥。

 指は僅かに空を切った。
「ホレミロ、ホレミロ」
 黒がそう促したので、僕は黒から視線を落として肉が落ちた自分の腹を見た。

タラオと僕の目が合った。

352:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 06:50:49.15 ID:/X0W2TlNO

「アアアアアアアアアアアアアアアアッ‥」

 マスオは自分の叫び声で目を覚ました。カーテンは光を帯び、朝が来た事をマスオに教えていた。
「何て酷い夢だ‥」
 マスオは布団を背負ったまま立ち上がり、赤毛で裸の女のコがくしゃくしゃになったシーツに包まれ赤ん坊の様に丸まってウサギちゃんを抱いたまま寝息を立てているのを見てホッと一息ついた。
マスオの耳に襖の向こうからパタパタとスリッパが床を叩く音が聞こえてきた。
「どうかされたんですか」
 襖のすぐ外からタイコの声がした。
「いや、何でも無いよ。悪いね」
 マスオはそう言ってから背負っていた布団をネネに掛けると、ズボンと一緒にくしゃくしゃになっていたトランクスを穿いた。
「あんまり大声は出さないで下さいね。一応その部屋には防音材を貼っていますけれども‥」
 タイコが申し訳無さそうに言ったので、マスオも申し訳無くなった。
「本当にごめんよォ。‥ところで今からお風呂に入りたいんだけど大丈夫かな」
 マスオはそう言いながら立ち上がり、襖を開けた。

353:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 07:19:50.15 ID:/X0W2TlNO

「ありがとうタイコさん。いやァ、良い湯だったよ」
 と、マスオはバスタオルで頭を拭きながら新しく用意して貰った青いチェック柄のトランクスだけを身に着けてリビングに現れた。
「それは良かったですわ。それで昨晩はどうでしたか」
 タイコは体の線の分かるタートルネックのセーターにジーパンという姿でソファに座っていた。
「あれの事かい。‥あれのせいで酷い妄想をしたよ。あれはこの前のブラックコカインよりもヤバいね。何たって記憶が吹っ飛ぶんだから」
 マスオがそう言うと、タイコはテレビのチャンネルを弄りながら苦笑して言った。
「そっちじゃなくてネネちゃんの事ですわ。マァお薬の事も後々訊く事になったでしょうけれどね」
 テレビでは新燃岳という所の山が噴火していた。
マスオはタイコの隣に座った。
「良かったよ。良い娘さんだった。小遣いはたっぷり弾んでおいて」
 マスオはそう言うと、ソファの前のグラステーブルの上に置いてあった缶ビールを手に取った。
冷たくて缶は結露していた。タブを上げ、そしてまたに戻し、飲み口を自分の口に持っていった。

354:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 07:40:12.51 ID:/X0W2TlNO

ゴクリ。

思い切り喉を鳴らしてビールを呑んだ。
「アアー暖房のきいた部屋で呑む朝ビールは素晴らしいなァ」
 マスオは半分程中身の無くなったであろう缶をテーブルに置いてそう言うと、缶を持っていて冷えた右手とは別の方の手を隣のタイコの首の後ろを回ってふくよかな膨らみを形成する左の乳房の上の毛糸の生地に置いた。
「いやですわ、マスオさんたら」
 タイコはマスオの股関に目を落とし、そこがトランクスの生地を押し上げて膨らんでいる事に気付いていた。

そこでガチャリと玄関のドアのタンブラーの回る音がソファ越しに後ろから聞こえた。
マスオは左手をそのまま柔らかい膨らみに預けたまま、自分の名刺が無いか右手を腰回りで忙しなく動かした。
ここに鍵を持って訪れるのは政財界の大物や高官、はたまた大企業の社員や社長などであったからだった。
しかし、すぐに自分はトランクス一丁であった事を思い出し諦めて右手をタイコの右の乳房に向かわせた。

玄関の扉が開く音がした。

356:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 08:11:05.41 ID:/X0W2TlNO

「そいつ誰だよ母チャンッ」
 それは扉を開けてリビングに入って来た招かれざる客の最初の言葉だった。
タイコは客がリビングに入る前にはマスオの手から離れ、立ち上がってソファ越しにその客を確認していた。
その言葉に驚いたマスオはソファの背もたれに左腕を掛けて後ろを振り向いた。
「きっ、君はッ‥」
 マスオはその先を言おうとしたが喉が詰まった。客は赤毛の大きくてずんぐりとした少年だった。
この時マスオは思った。
あの女のコの赤毛を見た時に思い出したのは彼の事だったのだ、と。
「ア、アンタ、タラオんとこの親父じゃねえか」
 少年はマスオの顔を見るなり叫んで、それに向かってわなわなと震える指を差した。
「イクラちゃん‥」
 マスオがそう呟いて右上をチラリと盗み見ると、タイコが両手を口に当て目をひんむいている顔が見えた。その顔は青白く、今にも気絶しそうだった。
「イ、イクラ‥」
 タイコはそう呟くと、目の前のソファの背もたれに両手を置いてうなだれた。イクラは二歩ソファへ近付き、タイコを見据えてまた叫んだ。
「母チャンッ親父が居ない家に男呼んで二人きりなんてオカシイだろうがヨォッ」

357:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 08:34:09.27 ID:/X0W2TlNO

「何で‥ここに‥‥」
 タイコは俯いたまま誰にともなく呟いた。
「子供が家に帰っちゃおかしいってのかよォッ」
 イクラはそう叫ぶと、マスオをキッと睨み付けた。マスオは慌てて言った。
「ご、誤解だ。僕は何もしてない」
 君の母さんのネグリジェ姿を見て興奮したり、乳房を弄った事を除いて。
はたまた君の母さんに紹介してもらった君にそっくりの赤毛をした女のコとヤクをやって一晩を共にした事を除いて。
十年近く前からの君の母さんとの不倫関係を除いて。

「何が誤解だっ。パンツ一丁のアンタに俺を説得なんてできねえからなッ」
 イクラは叫んで一歩マスオの方へ踏み出した。

その時、奥の部屋の襖が開いた。

360:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 08:55:59.56 ID:/X0W2TlNO

「おいっオッサアアァンッ」
 襖から出て来たネネは声を張り上げた。そしてマスオを見るなりドスドスと足音を立ててリビングに入って来て口汚くマスオに叫んだ。
「オッサン、何してくれてんだヨオォォッ」
 それを聞いたタイコはハッとなってネネの方を見、
「ネネちゃんっ。何ですかっ、その言葉遣いはっ。失礼ですよッ」
 と、この状況で気丈にも注意をした。
ネネはそんなタイコの形相を見て恐る恐る訴えた。
「だって、この人わたしの中に出したんだヨ。わたしのカレと名前が似てるからってちょっと甘い目見せたら‥」
「何でここに姐さんが居るだよッ」
 その訴えはイクラが中断させた。
ネネは自分の訴えを邪魔したイクラを睨み付けた。その右手に掴まれて引きずられて来たウサギちゃんは首の辺りの糸が解れてきていた。

363:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 09:05:29.44 ID:s88ZaskN0

おにぎり頭のマサさんかよwww

364:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 09:19:46.23 ID:/X0W2TlNO

「アンタ誰よ、どっかで見たかしらァッ」
 ネネはそう言うと、イクラの顔をじっくりと観察し、
「わたしアンタみたいな子供、知らないわ」
 と、結論付けた。それを聞いたイクラは慌てて言った。
「姐さんはマサさんのカノジョでしょう。俺はマサさんの舎弟ッスよっ」
 すると、ネネはニヤッと笑って
「フーン。まァよく分かんないケド、マサの舎弟ならそいつヤッちゃってよ」
 と、イクラに命令を出しウサギちゃんの頭を右手で、足を左手で掴んでお互いを反対に引っ張った。
ウサギのぬいぐるみは頭と胴体に分かれ、破れた首の所から綿が飛んだ。
イクラはそれを聞いて指を鳴らした。
「姐さんの命令が無くてもやりまさぁね」
 それを聞いたタイコはイクラに追いすがって必死に両腕でイクラを抱き止めた。
「駄目よイクラッ。恨むなら母さんを恨みなさいっ」
 しかし、イクラはとても強く片腕一振りでそれを払いのけた。
「母チャンとは後で話スッ。先ずはコイツを始末してからだッ」
 そう言ったイクラが拳を振り上げて目と鼻の先迄一気に間合いを詰めて来たので、マスオは全身にブワッと嫌な汗をかいたのを感じ何とかイクラを説得しようとした。

365:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 09:24:18.75 ID:9qwOCLPQ0

あの不良がマサオだったのかよwwwwwwwwwwwwwwww

366:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 09:33:33.72 ID:/X0W2TlNO

「待てッ。僕が悪かった。認めるから冷静に話し合おうッ。なっなっ。
そうだッ。君学校は真面目に行ってるか。大学を出たら、イヤ、高校‥ウウンッ、中学を出たら‥イヤそれは無理か‥‥
ソウ、ソウダッ、高校を出たら僕のコネで君を僕の会社に入れるッ」
 マスオはそう叫んで手を前に出し防御したが、イクラの拳はそれを避けて通った。
「ゴチャゴチャうるせえんだよッ。てめえは棺桶に入ってナッ」

メリッ。

自分の鼻の骨の折れる音をマスオは聞いた。
その亀田興毅もビックリのイクラストレートは見事にマスオの顔面に命中したのだ。
マスオは目の前が真っ暗になった。

371:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 09:56:23.16 ID:/X0W2TlNO

 カツオは久し振りに日曜日の朝に早く起きた。
家の裏口から台所に入ると、姉さんと母さんが料理を作っていた。
「お早う、母さん。結局昨日もマスオさん帰って来なかったの」
 マスオ義兄さんは金曜日から土曜日にかけて会社に泊まり込みで仕事をして帰って来る筈だった。
「仕事が忙しいのよ。アンタ朝ご飯食べるんなら食器用意して」
 と、母さんの代わりに姉さんが答えた。
「フーン」
 と、カツオは答えて食器棚から小皿を取り出した。

 朝食はご飯に目玉焼きにサラダ、味噌汁にたくあんとほうれん草のおひたし。
食卓を囲んでいるのはフネ、サザエ、カツオ、タラオだけだった。
「ワカメはどうしたの」
 カツオがフネにそう訊くと、カツオの横に座っていたタラオがニヤニヤと笑い出した。
「何が面白いのタラちゃん」
 それを見たサザエがそう訊くと、タラオは
「何でも無いデスゥ」
 と、言ってニヤニヤしたままカツオをちらりと見た。
サザエはカツオを見、昔からそうしてきた様にまたカツオが何か悪巧みでもしてるのだろうと、考えた。そしてまたフネの代わりに答えた。
「ワカメなら朝早くに出掛けたわよ」
「そっか」
 カツオは顔面蒼白だった。

372:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 09:58:49.78 ID:YEPdfaau0

数年でたらちゃんに何があったんだよ・・

375:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 10:10:56.21 ID:/X0W2TlNO

「クソッ、タラオのヤツッ」
 朝食を済ませたカツオは部屋の壁を叩いた。

ガウウゥゥ‥ゥゥウン。

 鋼の壁は一般的な壁よりもよく響いた。
カツオは携帯に着信が入っている事に気付いた。中島からだった。
そろそろワカメについて話し合おう。
カツオはそう思い、中島に電話をかけた。

プルルルルルル、プルル‥ツッ。

二コールで中島は電話に出た。
「やあ磯野、今なら大丈夫なんだね」
 中島の声の後ろから雑踏と叫び声が聞こえた。
「今電話をかけたのは僕だからね。ところでお前、今、どこに居るんだ」
 カツオがそう訊いた時電話からワカメの声がした。
「中島さん何やってるのー」

376:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 10:18:25.38 ID:YEPdfaau0

急展開多すぎワロタ

378:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 10:31:39.45 ID:/X0W2TlNO

「ちょっと電話かけてるんだ、先に並んでおいて。うーん、分かった分かった。
‥って事で僕は今ワカメちゃんと一緒に遊園地に来てるんだ」
 と、中島はとても楽しそうに報告した。
「ふーん、そりゃ楽しそうで何よりだ」
 と、カツオは思った事をそのまま口に出した。
「楽しいの何のって‥マァ日本一長いとかいうお化け屋敷は期待外れだったけどナー‥でも稲川淳二の棺桶劇場が最高だったぜ」
 中島がいつ迄も喋り続けていたのを聞いてカツオは話し合いがどうでも良くなってきた。
そして通話を切ろうと耳から携帯を話した時自分を呼ぶ声がした。
「‥ソノ、イソノ」
「あ、ああ、何だ」
 カツオは再び携帯に耳を付けた。
「磯野、今切ろうとしたろ。僕はお前に相談があったんだぞ」
 中島が僕に相談と来ればワカメの事だ。カツオは自分から持ち掛ける手間が省けたと思った。
しかし、そうではなかった。
「この前の電車の続きをやらないか」

382:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 10:51:09.60 ID:/X0W2TlNO

 それを聞いたカツオは愕然とした。
この前の電車の続きと言ったら僕が中島にワカメの復讐をした事の続き以外に考えられない。
カツオは携帯を持っていない方の手で頭を抱えた。
妹のワカメに中島は変態と聞いてはいたが、その変態ぶりはカツオの予想を遥かに超える物だったのだ。
「おい、磯野訊いてるのか」
「ああ」
 中島の呼び掛けにカツオは空返事をした。
「うんうん。それでナ、僕はどっちも試したいんだ、その‥入れる方と入れられる方をだな。
でも一般的な男は大抵どちらか片方しか好きじゃないらしい。
だから磯野に好きな方を選ばせてやるよ。そんで僕のできなかった方は後日別のオトコを相手に試すって魂胆よ。
僕って奴は人脈が広いんだ」
 カツオはその中島の計画を聞いている内に我に帰っていた。
「待て中島。勝手に話を進めるな、ボクはやらないゾッ」
「ハハハハ、それならワカメちゃんにもっと色んな事を試しちゃうゾっと」
「何をッ」
「場所はもう分かるよな、午後には着くだろ。来なかったら」
「分かったッ分かったッ」
 中島が何か言おうとしているのをカツオが遮って返事をすると電話は切れた。

385:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 11:10:38.80 ID:/X0W2TlNO

 カツオが原付を駐車場に停めた時、時間は二時を回ろうとしていた。
辺りには樹海が広がっていた。
遊園地の入り口を入ってすぐの所に中島達が居た。
「お兄ちゃんッ」
 ワカメが中島の隣から駆け寄って来た。
「中島さんから聞いたわ。お兄ちゃんが心配してこっちに来るって」
 その後から中島が手を振って歩いて来た。
「磯野、今日は近くの旅館に予約入れといたんだ」
 中島のその言葉を聞いたワカメは急に不機嫌になった。
「エーッ、それは中島サンとわたしが泊まるんでしょうっ」
 中島は頭を一掻きしてさも申し訳無いとばかりに謝った。
「ごめんごめん。よく考えたら女の子が外泊なんて家族が心配すると思って。それに今初めて言った事だからワカメちゃん家族に承諾取ってないでしょう」
 ワカメはプクッと頬を膨らませたのを見て中島は説き伏せようと努めた。
「男同士の話し合いもあるんだよ。分かンないかなァ、女の子のワカメちゃんには」
 中島が男同士と言った時に自分をチラリと見たのに気付いたカツオは背筋に悪寒を感じた。

389:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 11:33:29.21 ID:/X0W2TlNO

「避難経路はこの図の通りになっておりまして、非常口ここを出てすぐの左にあります。
それではお客様、何かご質問はございますでしょうか」
 やけに背が高くノッペリした顔の中居の青年がそう言うと中島は早く出て行けと言わんばかりに
「無い無い、何も無いよ。お茶はこっちで汲む、こっちで汲むから」
 と、まくし立てた。
「それではごゆっくりおくつろぎ下さいませ」
 中居はそう言い残し中島とカツオの二人きりにして部屋を出て行った。
「なかなか良い部屋じゃないか。値段の割に」
 中島はそう言うと立ち上がって部屋中をウロウロと歩き出した。
ユニットバスにトイレ付き、六畳の和室という小さな部屋だった。
「よーし温泉行くかなあ」
 カツオが一人で茶を汲んで飲んでいると、中島が押入から浴衣とタオルを出してきた。
「磯野ー温泉行こうぜーっ」
 そう誘った中島のウキウキとした顔とは正反対にカツオの顔はむっつりとしていた。
「僕は行かない」
 カツオはぶっきらぼうに答えた。
「えーせっかく来たの勿体無いだろーなァなァなァ」
 中島はその後もしつこくカツオを誘ったが、カツオはそれを再三断った。
そして遂に中島は諦めた。

392:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 11:53:02.68 ID:/X0W2TlNO

「楽しみは後にって事かァ」
 中島は部屋を出る時に捨て台詞をした。その時中島の僕を見る目が光った気がしたが、とにかく今部屋に中島は居ない。
カツオはようやく一息つくと、立ち上がって押入を開けた。
中島が温泉から帰って来る前に風呂に入ってしまおう。カツオはバスルームへ急いだ。

これからどうするかな。磯野は浴槽にお湯が溜まる音を聞き、この後の事を考えながら、座ってシャンプーをしていた。
カツオはふと、誰かに見られている様な感覚に襲われた。
ここは有名な富士の樹海に佇む旅館の中のバスルームだ。
「ま、まさか‥幽霊‥」

ハアハアハアハアハアッ。

そう思うとカツオは息が荒くなった。
見るか見ざるか‥。

‥エイッ。

カツオは思い切って後ろに振り向いた。

394:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 12:02:47.63 ID:/X0W2TlNO

「わあおッ」
 シャンプーをしていた磯野が急に自分の方を振り向いたので中島は驚きの声を上げた。
磯野は目を丸くしていた。
「中島っ、温泉行ったんじゃなかったのかヨ」
 それは至極当然の質問だった。中島は便座の蓋を上げ、座ってから話した。
「この通り。ちょっともよおしただけ」
 それにしても磯野。お前良いカラダしてんじゃないか。伊達に中学高校と野球部行ってた訳じゃないんだな。
中島がそう思って磯野の体を舐め回す様に見ていると、磯野の顔が赤くなった。
「オイッ中島ッ、長いぞっ。もう終わったろ」
 中島はそう言われて仕方なくバスルームを跡にした。
舌なめずりをしながら。

402:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 12:32:29.74 ID:/X0W2TlNO

「いやァ腹いっぱい食べたナァ。それにしてもどうしてどこの旅館も夕御飯は食べきれない程出すんだろうなっ」
 中島はそう言ったが、中島の前の膳は食器類を残して空になっていた。
「おやっ、磯野は全く食べて無いじゃないか。勿体無いなァ」
 中島はそう言うとカツオの膳から鰹のタタキを取り上げて自分の膳に移した。カツオは食べ物が喉を通らなかった。
「ハハハ、ウマイウマイ」
 中島はそのカツオを横目に旨そうに次々とカツオの膳にあった物を平らげていった。

「おいっボーッ、そろそろ片づけて来い」
 厨房の奥の声と共に先の中居が食堂に現れた。
十分前の食堂には三、四組の客が居たが、今は二人しか居なかった。
ボーはその二人以外のほかの膳をかたすと、二人に近付いた。
中島はボーが自分達を見ているのに気付くと、膳をバンッと叩き、
「まだ食べてるでしょうがっ。まだ食べてるでしょうがっ」
 と、叫んだ。叩いた衝撃で膳からお椀と漬け物を入れていた四角い小さな皿が落ちた。
「ぼっ、ぼおぉおお‥」
 ボーは何か言いたそうにしていたが、やがて落ちた物を拾い集めて厨房に入って行った。
中島はそれを見届けるとカツオの膳に残っていた沢庵を頬張った。

405:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 12:42:52.45 ID:/X0W2TlNO

 カツオ達が部屋に戻ると布団が敷いてあった。
中島は横を向いてカツオを見た。
「こういうのってワクワクするよな」
 そう言って中島は布団に飛び乗った。
「修学旅行みたいでな」
 カツオはつまらなそうに中島の言葉に付け足しをした。
「電気消すか」
 カツオが布団の上に座ったのを見て中島が電気コードに手を伸ばした。カツオは渋面をして言った。
「寝るにはまだ早いよ」
「まだ寝ないよ」
 中島が電気コードを三回引くと辺りは暗闇に包まれた。

412:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 14:19:45.24 ID:/X0W2TlNO

「磯野はどっちにするのかもう決めたのか」
 暗闇から中島の声がした。
「ああ、分かったやるよ、やる」
 カツオが投げやりに言うと、中島が急かす様にまた同じ質問をした。
「だから、どっちにするんだい」
 カツオは五分の間目を閉じて考えたが、最初に決めていた考えは変わらなかった。
「僕が、中島に、入れるよ」
 カツオがそう呟くと、それ迄黙っていてくれた中島が嬉しそうに口を開いた。
「そうか、やはり磯野はそっちを選んだか。僕は君と無二の友人、竹馬の友だからね。以心伝心ってヤツだ。
それじゃあ早速、磯野ー、セ●クスしようぜっ」
 中島はカツオが目を瞑っている間に目を暗闇にならしたのか自分の荷物をガサガサと音を立てて探り始めた。
磯野は不安を感じ中島の名を呼んだ。
「な、中島、何してんだ」
「あーあったあった」
 中島の楽しそうな声がした。
「これだよ。これ。僕は痛いのも嫌いじゃないけれど、ハジメテは怖いからね」
 突如、カツオの左手にひんやりと冷たくヌルリとした感触。
「わっ何だコレッ」
 カツオは尻から飛び上がって驚いた。
中島はその様子を笑って言った。
「ローションだよローション」

417:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 14:47:25.54 ID:/X0W2TlNO

 カツオも目が慣れてくると中島からローションの円筒形の容器を受け取った。
中島は既に下半身丸出しになっていて、容器を渡すとせっかちに四つん這いでカツオに尻を向けた。
「サァ早くそれを磯野のモノと僕のアナの内と外に塗ってくれ」
 カツオはこれを聞いて痔にはボラギノールのテレビシーエムを思い出しつつ、ローションを右手に出した。
手から零れそうになったのでカツオは慌てて自分のモノにそれを塗った。

ネチャネチャネチャア。

 それからもう一度ローションを右手に適量出し、暗闇に慣れた目で中島の尻を見た。
取りあえずひと塗り、アナからだいぶ離れた右の尻ぺたに。
塗り易い様にローションのついていない左手で中島の尻を固定しようとした。
中島の尻は女の物の様にツルツルだった。
カツオは女の尻を実際に直に触れた事はないがそう思った。少なくとも自分のケツよりは滑らかだと思った。
窓から漏れた月光で中島の尻はテカテカと輝いた。

420:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 14:58:47.53 ID:/X0W2TlNO

 カツオは中島の左の尻ぺたにもローションを塗り終わると、テカった尻ぺたと尻ぺたの間に残されたアナを見つめた。
その下のタマタマのウラウラも見えた。
カツオはゴクリと唾を飲むと、中島が急かした。
「尻っぺたばかりに塗ってもローションが勿体無いだろう。早くアナに塗ってくれ」
 それでもカツオに塗る気配が無いので中島は溜め息をついてから付け足した。
「大丈夫だ。アナルシャワーは済ませたよ」
「アナル‥シャワー‥」
 カツオは中島から出た用語を思わず返していた。中島は言った。
「そうだよ。アナルシャワー。シャワーのノズルを外してそれを」
「いやっそれ以上は言わなくても良いっ」
 カツオは中島の説明を中断させる為にローションをピシャリと顔の前のアナに飛ばした。
「ハウッ」
 中島の吐息が漏れ、ローションが股から布団に垂れた。

422:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 15:12:21.24 ID:/X0W2TlNO

 それから数分カツオは人差し指で中島のアナにローションを塗り続けた。
だいぶ馴染んだと思ったカツオはフウッと一息ついた。
中島がアナルシャワーをしたと言ったが、確かに綺麗だった。
まじまじと見つめるとアナは閉じたり開いたりしていた。
そしてアナの横から生えた脚と脚の間にはニョキニョキとヘンタイスティックが伸びているのが見えた。
「ハアハア、まずいよ、磯野。僕もう‥」
 その瞬間スティックからビュルリと液体が飛んだのが見えた。
「でも大丈夫。入れるのは磯野だからね」
 と、中島は悪びれもせずに言った。
カツオは観念して中島の腰を両手でガッシリ掴んで固定し、軽くオッキッキした自分のモノを中島のアナの座標に照準を合わせた。

425:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 15:38:51.72 ID:/X0W2TlNO

「しっかり入れろよ。まア女と違って穴は一つしかないから簡単だ、ハハハ」
 遠い所からの中島の声。

カツオは今迄に出会った女の事を思った。

野球部のマネージャーをしていたカオリを無理にでも押し倒せば良かったと。そう、先輩達の性宴に交じれば良かったと。

二人きりの時にスカートを捲ったらノーパンだった早川さんを襲えば良かったと。

この際花澤さんを口説けば良かったと。

そして、愛する妹の誘惑に乗れば良かったと。

‥昔、砂場でタラオと一緒に遊んでいたリボンで髪を纏めたょぅι゙ょのでも‥良かったと。

全ては後悔の念。後悔先に立たず。

カツオは最後にょぅι゙ょを思い出してしまったので自分の頭が狂ったのではないかと思った。
まだ狂っていない。早く終わらせよう。
「南無三」
 カツオはそう呟いて腰を前へ突き出した。

ズボリ。

一発命中だ。ヒャッハー。敵船艦撃沈セリ。ウーウーウー。
「オオオッ」
 カツオと中島は一つになった。

426:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 15:42:52.02 ID:hk7WzzfI0

敬礼(`;ω;´)>

429:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 16:01:17.05 ID:/X0W2TlNO

 カツオは何とかして目の前にある体を昔の憧れの女の子の物なのだと自分に思いこませようとした。

カオリちゃん、あんなに乱暴にズボズボされたのにまだこんなに締まってるじゃないカァッ。

しかし、綺麗に刈り上げられた後頭部が目について妄想は途絶えた。
カツオは目を閉じた。

花澤サン、冷たくしてゴメンネゴメンネーッ。これが僕のキモチダァーッ。

「うあああっ。磯野、捲れちゃうよオオオ」
 中島の声が妄想を阻害した。カツオは神経を集中させた。
「ハァ、ハァ、磯野ッもうちょっと優しくしてえっ」

早川さん、ノーパンスカートなんて格好するから風邪ひいてそんな声になっちゃうんだよォーッ。僕が暖めてヤルヨォーッ

「痛いっ、痛いよ」
 と、中島のゴツゴツとした右手がカツオの右腕を掴み妄想をかき消した。カツオは腰をゆっくりと動かす事にした。

おいおい、ワカメ。雑草取りの途中だぞ、軍手をつけたままヤルなんて変態のする事だ。

そう僕の目の前でその変態が僕のモノによがっている。
カツオは急に妄想が馬鹿馬鹿しくなった。このままフィニッシュだ。
「おい中島、イクぜ」
「アア、一緒にイこう」

二人の目の前は同時に真っ白になった。

432:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 16:29:25.56 ID:Mm6joe660

>ゴメンネゴメンネーッ

クッソワロタwww

433:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 16:30:40.36 ID:/X0W2TlNO

 朝カツオが目を覚ますと、目の前にすやすやと眠る中島の顔があった。
カツオはむくりと布団から這い出て立ち上がると、窓の方へ向かった。
「アア‥」
 障子を開けるとそこは雪国だった。
「雪だな」
 声のした方を振り向くと中島が居た。
「僕は温泉に一番風呂へ行くよ」
 中島はもうタオルを持って部屋を出ようとしていた。
「僕も行くよ」
 カツオも乾かしておいたタオルを掴んで中島が閉めたドアをまた開け、その後ろ姿を追い掛けた。
廊下は寒かった。
二人の青年の笑顔はとても無邪気で爽やかだった。
しかし、二人の朝食の間に部屋の布団を片付けた中居の顔はいつも以上に冴えなかった。
「そんな顔をしてどうしたんだい、ボー」
 女将が気遣うと、彼はいつもの様に
「何でも、無い、です」
 と、言うだけだった。

春の訪れはもうすぐだった。

439:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 16:45:39.87 ID:/X0W2TlNO

 父の捜索願が警察に提出された一週間後。今日はイクラとの約束の日。
あの神社での一件からイクラとは会っていなかった。

タラオはバスのタラップを降りると周りを見渡した。
イクラがマサのバイクの後ろの席に座っていた。
イクラもタラオに気付きバイクを降りて車道を横切りタラオの居る歩道に足を上げた。
「今日も持ってきた」
 タラオは仏頂面でそう言ってポケットから一万円札を取り出した。
見るとイクラの顔はとても青ざめていて、目の下に隈が出来、頬が痩けていた。
こんな奴に気遣う必要は無い。タラオはそう思って何も言わなかった。
「いや、もう持って来なくていい」
 お札を見てイクラがそう言ったので、何か裏があるのではないかと思いながらもそれをポケットにまたしまった。

441:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 16:57:29.49 ID:/X0W2TlNO

タラオがイクラに背を向け、改札口へ歩き出そうとすると、イクラが呼び止めた。
「でもな、またリカさんに変な事してみろ。お前もただじゃおかねえからなっ」
 その声は必要以上に大きく、周囲の視線を集めた。タラオは顔から火が出そうになって早足でイクラから離れた。
するとまた後ろから大声が追ってきた。
「そうだっ。俺の女に手を出す輩は誰だって許さねえんだっ」
 タラオは顔を下に俯けて小走りになった。
「あんなクズに大恥かかされるなんてッ。今に見てろ」
 と、自分のせかせかと動く靴に呟いたタラオは改札口を抜けて電車に飛び乗り日常に戻った。

442:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 17:16:10.45 ID:/X0W2TlNO

「一人暮らしがシタイデスッテッ」
 サザエは素っ頓狂な声を出して台所に居るフネの下へ走った。

その日の夕御飯が済んでワカメとタラオが自室に戻った頃、居間ではフネとサザエとカツオが話し合っていた。
「学校も遠くないのに何で一人暮らしなんて‥お金が勿体無いじゃない」
 サザエがそう言ってフネの方を見て同調を求めると、フネはフゥッと息を吹いた。
「いずれ一人暮らしもする様になるんだし、カツオがそうしたければそれで良いんじゃないかねえ」
 このフネの意見にサザエは呆気に取られた。
しかしフネはサザエを無視して続けた。
「敷金と礼金、一カ月分の家賃は工面してやるから後は自分でおやり」
「ありがとう母さんっ」
 カツオは両手を上げて喜んだ。フネは湯呑みから茶を啜ってから訊いた。
「もうどこに住むか決めたのかい」
「いや、これからさ。明日、花澤不動産に行ってくるよ」
 カツオは中島との蟠りを解消したが、まだワカメの件でタラオとの問題があった。この問題はワカメとタラオから自分が離れれば解決すると、カツオは思っていたのだった。

444:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 17:36:13.01 ID:/X0W2TlNO

 久し振りに花澤不動産を訪ねると、昔に記憶していた廃れた建物はそこに無く、代わりに五階建ての黒を基調としたモダンなビルが在った。
しかしビルの側面にHANAZAWAとアルファベットの文字が大きくくっついていたのでカツオはそのビルの中に足を踏み入れた。

 カツオは運が良かった。花澤不動産の社長の一人娘にして幼なじみの花子が建物に入ってすぐ目に入ったからだ。
「おーい花澤さァん」
 そう呼びながらカツオは花子に歩み寄った。
花子はその声と共に声の主にも気付き、カウンターを拭く手を止めて入り口の方を見た。
「アッらー磯野クン久し振りじゃなァい」
 花子がカウンターから出て来るとポッコリと膨らんだ腹がとても目立った。
「マタニティ、なかなか似合ってるじゃない」
 カツオはそう言って近くにあった椅子に腰を降ろした。

447:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 18:03:55.63 ID:W1I1X/IY0

服はもう脱いだぞ

448:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 18:04:58.50 ID:/X0W2TlNO

 事前に噂では聞いていたが、その花子の姿にカツオは動揺した。
花澤さんは学校に入ってすぐにサークルの先輩とデキたらしくその赤ん坊の父親も分かってはいるのだが、俗にいうシングルマザーの道を選んだらしい。
しかしカツオは努めて冷静にそして気さくに花子に話し掛けた。
「学校は今も通っているのかい」
 花子は椅子によっこらせと腰を落としてから答えた。
「今は休学してるわ。落ち着いたらまた行くわよ。磯野クン、知ってたんだ」
 花子は舌をチロッと出して笑った。その仕草には昔は感じなかった甘美な魅力があった。
「うん、まァね」
 カツオは適当に流してジャンパーを脱いで隣の椅子に置いた。ビルの中の暖房はしっかりと効いていて少し暑かった。
それを見た花子は効いた。
「それで今日は何の用事でここに来たの」
「ああ、実は一人暮らしの為の物件を探していてね‥」
 と、カツオが答えると、花子は残念そうな顔をして
「ナァンだ、あたしに会いに来てくれた訳じゃなかったのね‥なんちゃって」
 と、ふざけてからエヘヘと笑った。
カツオもつられて笑いながら頭をポリポリと掻いた。

449:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 18:32:43.05 ID:44Xd9s1XO

花沢さん…

453:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 18:36:31.03 ID:ewF4eDQ+0

イクラちゃん…

454:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 18:39:19.93 ID:O4nRcMUUO

タイコさん…

458:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 18:52:08.30 ID:qU/05+mPO

今サザエさんみてるけど何故か笑ってしまう

459:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 18:52:38.30 ID:OLpgqSh+O

なんで今日に限ってイクラ、タイコ、ノリスケ、中島、花沢さんとこんなに出るんだよ…

460:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 18:53:11.65 ID:qXJNJ9X90

これからサザエさん見れないww

461:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 18:55:15.47 ID:TUQ1eedKO

おい。

サザエさん直視出来ねぇぞwwwwwwww

463:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 18:56:37.12 ID:/X0W2TlNO

 突然花子が中腰になりカツオの隣の椅子に、ジャンパーが置いてある上から座り
「妊婦に欲情するなんて磯野クンは相変わらずヤンチャなのね」
 と、カツオのテントを張った股に手を置いて言った。
「これは‥」
 カツオはテントに対して言い訳をしようとしたが、息子が社会の窓からコンニチワされてしまったので言葉に詰まった。
「良いの。あたしも磯野クンがジャンパーを見た時にクラッとしちゃったから。お互い様ね」
 と、花子は右手の人差し指をカツオの口に当て、左手の人差し指と親指でカツオの息子をつまみ上げた。
「フハッ‥」
 花子の鼻息が息子にかかったのを感じて思わずカツオは喘ぎ声を洩らした。
「フフフフフ」
 それを耳にした花子は嬉しそうだった。
その後カツオは息子にねっとりとした湿り気を感じた。
「ううう‥」
 カツオは歯を食いしばって快感を表に出すまいとした。

465:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 19:12:49.23 ID:/X0W2TlNO

ズジュズジュズジュ‥。

 肉の周りを唾液が纏わりつく音が花澤不動産一階のフロアに響いた。
カツオはいつの間にか両手を花子の頭の上に置き、自分の腰をカクカクと動かしていた。
そして花子もいつの間にかカツオの座る椅子の前に正座し、カツオの開いた両脚の間に納まっていた。両手はカツオの息子の根元を揉みしだいていた。

ジュピジュプジュペ‥。

ジュッズッジュッズッジュッズッジュッズッジュッズ。

フロアに流れる音のテンポは次第に早くなり、二人の行いが終わりに近付いている事を示していた。
カツオの両手は花子の頭が息子から離れていかない様に押さえつけていたが、花子は口を息子から引き抜く気は毛頭無かった。
「うわァっ、出るッ」
 カツオの合図で息子から情熱が噴き出し、花子がそれを口で受け止めた。

490:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 23:09:38.85 ID:/X0W2TlNO

 カツオが最高潮の後の虚脱感に全身を包まれ、四肢を放り出して呆けた顔をしている横で、
花子はマタニティのポケットからポケットティッシュを取り、そこからティッシュをつまみ出し、情熱の残滓を吐き出していた。
花子は右手で口を拭うとカツオの顔を見た。
「ちょっと大丈夫、磯野クン」
 呼び掛けでカツオはハッと我に帰った。
「うわッ‥アあ、大丈夫」
 カツオはじっと花子の顔を見た。奥二重のつぶらな瞳にぽってりとした唇がまだカツオを誘っている様だった。
花子はそんなカツオを見て謝った。
「ごめんね、磯野クン。わたし妊娠してるから激しい運動は‥」
「ナ、何を言ってるんだい。分かってるよ」
 カツオは自分が考えていた事を見抜かれ、ドキリとした。
代わりにカツオは左腕を回して花子の左肩を持って自分に抱き寄せた。
暫くの間フロアは沈黙を保った。
カツオはいつ迄もこうしていたいと思った。
しかしカツオにはやるべき事があった。
「‥それで物件の事なんだけれどね」

帰り際花子が
「まだ、わたしは諦めてないからね」
 と、言ったのを聞いてカツオの花子を抱き締めたい衝動がまた疼いたが、それは今ある問題を解決してからにしようと堪えた。

492:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 23:22:48.14 ID:/X0W2TlNO

物件については知り合いの、それも特別な知り合いの誼みとして、良いのが見付かり次第連絡をくれるという事になった。
外を出ると、入った時には全く気付かなかった『御用の方は二階へ』という言葉に横の階段を指す矢印の書かれた看板がドアノブに掛かっていた。
昔ここを訪れた時とは建物が全く変わっていたんでとても緊張していたんだな。カツオはクスリと笑った。

街がもう暮れなずんでいるのに気付いたカツオは家路を急いだ。

494:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/20(日) 23:39:27.57 ID:/X0W2TlNO

 草木も眠る丑三つ時にカツオの部屋を訪れる者が居た。
カツオは父のお気に入りだった梅の木や母が育てている菜の花と同じく、ぐっすりと眠っていた。

ガンガンガンッ。

その断続的な物音はカツオが目が開けて、部屋の外に向かって声を発する迄鳴り止まなかった。
「誰だい」
 カツオは目を擦りながら訊いた。ちょっと前迄は気楽に開けていたが、今となってはそうもいかなかった。
「ワカメだったらお断りだ」
 しかし返事は無かった。
もしかすると、遂にタマの化け猫が訪ねて来たのではないか。
いやいや、この前行った富士の樹海からこの世に未練を持った者達が付いて来たのかもしれない。
「エェイッ、ままよっ」
 カツオは思い切って部屋の戸を開けた。

499:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 00:04:28.48 ID:odIa0NFaO

戸の前に立っていたのはカツオが今思い出せる限りの中で会うと一番胸糞の悪くなる人物であった。
「カツオにいさん、今晩は」
 タラオはそう言って鍵を投げて寄越した。
よく見るとそれはマスオのプリウスのキーだった。
カツオが何事かとポカンと口を開けて鍵とタラオの顔を交互に見ていると
「早く支度してクダサイ」
 と、タラオが急かした。

 磯野家には車庫は無いが車を停められる空間なら庭に在った。
カツオは乗り慣れた原付の前を通り過ぎてマスオのプリウスに乗った。
「僕がこんな時間にタラオを車で連れ出したなんて知れたら姉さんに大目玉だ」
 運転席を調整しつつ後部座席に乗り込んだタラオをルームミラーで見ながら言った。
それを聞いたタラオはクックッと笑いを堪える様にして
「念の為ママの睡眠薬を拝借してカツオニイサン以外の全員に盛ったから大丈夫な筈デス」
 と、言った。カツオはミラー越しでないと見られないタラオに少なからず恐怖を抱きながらも、
エンジンをかけてプリウスを磯野家の敷地から出した。

504:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 00:24:16.24 ID:odIa0NFaO

タラオが予めカーナビに設定していた目的地を車は目指した。
走行距離が長くなるにつれて窓から見える景色に目立つ物は消えていき、一時間以上走った今では街頭の光とプリウス自身から伸びる光、それらに照らし出された街路樹ではない木々や道路しか見えなくなっていて、
対向車のヘッドライトもルームミラーに写る後続車のヘッドライトも、前方で信号待ちをする車も全く見られなくなっていた。
「こんな所に何の用があるんだい」
 磯野家を出てから今迄無言だったカツオはカーナビがそろそろ目的地への到着を示していたのを機に口を開いた。
「カツオニイサンはとにかく黙って目的地迄運転すれば良いんデス」
 そう命令したタラオの両手には束ねられた丈夫そうな紐がにぎられていた。

508:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 00:43:15.02 ID:odIa0NFaO

 目的地は廃れた材木所に民家がまばらに立っているだけの淋しい峠だった。
タラオがドアを開けて外に出たのを見て、カツオも急いでシートベルトのバックルを外して車外に出た。
冬の空は澄んでいて月が綺麗に見えた。
例え街灯が無くとも月の光がカツオ達二人を照らし出していただろう。
カツオはタラオをチラと横目で見たが、タラオは何をするでも無く黙りこくって、急な坂になっていてすぐ先が見えない道路の向こうをジッと見つめていた。
カツオは手持ち無沙汰に空に浮かぶ月を眺めているしかなかった。

511:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 01:02:19.28 ID:odIa0NFaO

 タラオが改札口を出ると、バスの向こうの道路に赤いスポーツカーが止まっていた。
タラオは物珍しげにそれを見ながら家へ帰る為のバスを待っていた。
「オッス、タラオさん」
 背後で聞き慣れた声がしたので振り向くとイクラが立っていた。
その姿を見たタラオは急いでポケットを探ったが、一万円札は無かったので
「今日は約束の日じゃないぞっ」
 と、思った通りの事を言った。
イクラは笑って
「いやいや、今日は違う用事なんだ。俺達の秘密の会合を見せてやろうってな」
 と、言って相変わらず道路の向こう側に停まっている赤いスポーツカーを指差した。
タラオは最初の方こそ断ったが結局秘密の会合という言葉の魅力につられ、イクラは予想していたよりもすんなりとタラオが付いて来た事に驚いた。

514:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 01:13:58.08 ID:odIa0NFaO

「チーターさんは俺の兄貴分の兄貴分なんだ」
 タラオと一緒に後部座席に乗っていたイクラはタラオに運転手を紹介した。
右側の助手席にはあのフルフェイスが座っていた。
あいつは車に乗っている時もヘルメットを被っているのか。
タラオは笑うのを我慢した。
左ハンドルを握っている男がチーターというニックネームで、フルフェイスの兄貴分らしい。
ガングロに金髪でヒョウ柄のタンクトップという迫力のある出で立ちだが、パッと見た感じどうも顔は幼い様な気がした。やはり無免許運転なんだろうか‥。
タラオは乗っているスポーツカーにパトカーが近付かない事を祈った。

516:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 01:20:14.91 ID:JfGwum6L0

チーターきたww

519:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 01:22:09.70 ID:xCeTVScPO

まさかのチーターかよwww

520:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 01:24:28.19 ID:LH1zUyZS0

チーターwwww

521:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 01:31:08.00 ID:lqsutsSyO

チーターとか最近じゃ原作でも見ないぞww

541:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 04:31:56.06 ID:mZ1WaHXm0

>>521
原作はもう無いんや…

523:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 01:49:11.43 ID:odIa0NFaO

 スポーツカーは一時間半程走った後に前方に峠の見える道路を曲がり、
竹の生い茂った中にある静かな工事現場でタイヤから砂利の上を滑る音を立てながらエンジンを止めた。
「お前ら、着いたぜ」
 チーターは颯爽と車を降りるとプレハブ小屋の後ろに駆けていった。
タラオはそれを見て頭の中でチーターに勝手に駿足という称号を与えた。
しかし、チーターの運転する車は彼の見た目とは裏腹に安全第一に鈍足だった。そのお陰か道中パトカーに捕まる事は無かった。
マサオとイクラもその後を歩いて追ったので、タラオもプレハブ小屋の裏へ廻る事にした。

そこには改造されたバイクが五台置いてあった。
タラオがそれらのバイクのあまりにも奇抜な格好に驚いているのにイクラは気づいて自慢気に言った。
「これ全部ジャンク品集めて作った物なんだよ」
「でもこれを公道で走らせるのは‥」
「だから人目がつかないあの峠を走ってんのよ。
いつもは金曜日と土曜日の深夜に集まってほかのみんなのバイクも一緒に爆走してんの。凄いっしょ」
 イクラにそう言われたタラオは腕時計を見てから言った。
「まだこんな時間だけど、ぼかァそんな時間迄ここには居られない」

525:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 02:05:05.27 ID:odIa0NFaO

 イクラは人差し指を上に差して横に振った。
「今日は特別。道路工事のお陰でほかの車が入って来ねえんだ」
 タラオとイクラが話している内にチーターとフルフェイスはさっさとバイクに乗って行ってしまった。
「俺がここで乗る時はこの赤ヘル着けてんだ。ほかにこんな赤いの居ないから結構目立つんだぜ」
 イクラはそう言うと赤いヘルメットを被って手前のバイクに飛び乗った。
タラオは赤いヘルメットを格好が悪いと思ったが、余計な事は言わなかった。

 それから三十分彼らは走り続けた。勿論タラオは彼らが帰って来るのを待つだけだったが、バイクを運転したいとは思わなかった。
フルフェイスが最初に帰って来、その後にイクラが帰って来た。
イクラがバイクをまたプレハブの裏に戻したのを見てからタラオは質問をした。
「さっきみんなで走るって言ってたけど、あんまり多いのも考え物じゃないか」
 タラオは日曜日に家族で行った遊園地のサイクリングコースの光景を思い浮かべていた。

527:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 02:15:57.87 ID:odIa0NFaO

 イクラはグイッと顔を峠の方に向けて言った。
「まあ、メンバーも毎回みんな集まる訳じゃねえし、峠のコースは結構長いからな。レースしてねえ時は編隊組んだり、五分とか十分とか空けて走ってたりしてるよ。
何だ、タラオさんも興味ねえ振りして乗りてぇんだナ」
「別にそんなんじゃないさ」
 タラオはこれ以上会費だの何だのと搾られたくはなかった。

スポーツカーの方を見ると、もうフルフェイスが助手席に乗っていたので、タラオとイクラもスポーツカーに乗り込み、雁首を揃えてチーターを待った。
チーターのバイクが帰って来たのはそれから十分も後の事だった。

529:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 02:49:44.41 ID:odIa0NFaO

 大分遠くの方からエンジン音が聞こえてきた。
「タラオ、車が来るから気をつけとけよ」
 カツオはそうタラオに注意を促したが、タラオは何も反応を示さずに道路を見ていた。
暫くすると物凄い音を立てながら一台のバイクが二人の前の道路を走り去って行った。
タラオはニヤリと口元を緩めた。
それからまた少ししてカツオは音もさる事ながら見た目もチグハグで凄い一台のバイクが走り去って行くのを見届けると、
いつの間にかタラオの姿が見えなくなっている事に気付いた。
「おいっ、タラオっ、タラオッ、どこだっ」
 辺りを見渡すとプリウスの後部ドアが開いて何かがモゾモゾと動いていた。
カツオはそれを見て取りあえず安心した。それはさっき運転中に見た紐を持ち出していたタラオだった。
「タラオ、何する気なんだ」
 タラオが返事もせずに黙々と街灯の柱に紐を括りつけているのをカツオは不思議そうに見守った。

530:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 02:53:26.94 ID:MGSK40fQ0

うわあああああああああ

532:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 03:19:38.29 ID:odIa0NFaO

 タラオはしっかりと紐の端を柱に結び付けると、もう一方を持って反対の電灯の柱に移動した。
このもう一方は漁師の利用する特別な結び目を作って柱に括った。
紐は垂れ下がって道路を横断していたが、紐の色は道路の色に同化していてカツオには見えなかった。

 それから三台の外見こそ各々が個性を主張すれども、世間一般の常識から見れば同じ様なバイクがその紐を踏んで通り過ぎた。
カツオはつまらなさそうに欠伸をしてそれを見ていたが、タラオは逆に真面目な顔をして見ていた。
しかしタラオが見ていたのはカツオとは違ってバイクではなく運転手の頭の色だった。
黄、黒、黒フルフェイス‥。
カツオはそんなタラオの真面目そうな横顔が見えたので
「タラオはああいう不良に憧れてンのか」
 と、声をかけた。
「そんなんじゃないデス」
「フーン」
 タラオは親には逆らわないが、昔の様に素直ではなかった。
カツオはタラオがバイクに憧れているのだろうと思う事にした。

537:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 03:43:54.16 ID:odIa0NFaO

 タラオは赤を待っていた。バイクのエンジン音が聞こえると下り坂の方を見詰めた。
すると暗闇から赤が浮き上がって来るのが見えた。
タラオが生唾を飲んでから紐を握り直したその時、道路を横断する紐が一瞬浮いた。
月光に照らされるカツオの顔から血の気がひいた。

「おっ、おいっタラオ、何ヤッテンダッ」
 カツオは大声を張り上げてタラオに駆け寄った。
タラオは血相を変えて自分に寄って来たカツオを見て自分の唇を噛んだ。

‥ォォォオオ‥。

「カツオニイサンは黙って見てるだけで良いんデスッ。そしたらもうアノ事は忘れマスッ」
 タラオは紐を強く握りしめた。

‥ォォオオオンッオオ‥。

「タラオッ馬鹿な真似はヨセッ。そんなにバイクが欲しいならそのうちカッテヤルカラァッ」
 エンジンの音は少しずつ大きくなっていった。

‥ォンッオンッオオオオオオ。

タラオはカツオの顔から坂に視線を移した。
「ハハハ、あのスピードならもうオシマイデスウ」
 タラオが勢い良く紐を引っ張ると、道路を横断していた紐は浮かび上がって結び目は固くなった。

539:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 04:00:15.51 ID:odIa0NFaO

カツオはタラオの所へ駆け寄ったが、タラオが意地悪く
「もう遅いデェスウ」
 と、愉快そうに言い放ったので道路に飛び出した。
「ナ、ナニスルンデスカアアアアアァッ」
 カツオは後ろからのタラオの悲痛な叫び声を無視し、両手を振って叫んだ。
「トマレーッ、トマレーッ」

 タラオの計画通り、イクラのその瞬間の位置からでは紐は坂を登り切った所にあって目に見えなかった。
しかし、紐の代わりに道路の真ん中で突っ立っているマヌケ野郎の姿なら見る事が出来た。
「ウワアッ」

ゴシャッガリガリガリガリッドシッ。

ゴギャンッ。

 急ブレーキをかけられながら林へ入れられそうになった挙げ句に転倒したバイクはカツオにぶつかって止まり、投げ出されたイクラはタラオが紐を掴んで待っていた柱に激突した。

タラオの立ち尽くす目の前の道路には二人の男が倒れていた。

540:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 04:22:23.25 ID:odIa0NFaO

「ハハハッ、結局イクラはこうなる運命だったんデスウッ」
 タラオは腕時計を見やって急いでプリウスの後部座席から木製のバットを取り出した。
バットには『磯野カツオ』の名前が油性マジックで書かれている。

「い、いてえ‥クソ、あのマヌケのせいで‥アア」
 イクラは首が痛くて動かせなかった。代わりに目を動かしてバイクの近くに倒れている男を睨み付けた。
「どこかのボケ老人かァ‥ナンで俺がこんナ目ニ‥」
 イクラは立ち上がろうとした。しかし自由に動いてくれるのは両腕、両脚の内では左腕だけだった。
左腕だけで何とか姿勢を楽にしようと悪戦苦闘していると、突然手前の視界に落ちる電灯の光が届かなくなり、暗くなった。
「ダレかいるノカッ。きゅっ、キュウキュウ車を」
 イクラは何とかして後ろを見ようとしていると、着けていた赤いヘルメットが外された。
「オ、オレはソイツのお陰で助かったンだナ、ヘヘッペッ」
 口を切って出た血を唾と一緒にして吐くと、後ろに立っていた人影はイクラの目の前に移動してきてくれた。

544:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 04:49:32.14 ID:odIa0NFaO

「お前がナンでココニインダヨ」
 ゼエゼエと苦しそうに息をしながらそう呟くイクラの前に居るのは、バットを杖の様に体の支えにしてしゃがみ込んでイクラを見下ろすタラオだった。
タラオがいつ迄もジッとしている事にイクラは怒りを感じ、
「クソッ。こノッ前の恨みカッ。ジッとオレが苦しむサマを見ようってノカッ」
 と、怒鳴ると、クックックッとタラオが笑い声を洩らした。
「いい提案デスねえ。でも、ジッとなんて見てられナイんデスよ」
 と、タラオはフイに立ち上がってバットを振りアゲタ。イクラの怒りは絶望ニ変ワッタ。

バグッ。

「ばぶッ」
 振り下ろされた木製のバットがイクラの頭頂部にまともに当たると同時にイクラから短く息が洩れた。

546:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 05:09:38.33 ID:odIa0NFaO

「ウアア、許して‥く」
 自分の頭を打ち付けたバットが目の前から持ち上がってまた振り上げられたのを見たイクラは自身の助命を求めた。
タラオはそれを見ると歯を見せて笑った。
「ハハハ、シブトサはゴキブリ並みデスね」
 イクラはバットの最初の一撃で絶命しなかった事からまた希望を見出していた。
「リカさん‥アキラメル‥」
「『リカさん』だなんて。キスしてもらって漸くリカさんの大切さがワカッタツモリですか。
君はどうせここでシヌんだから諦めるもナニもナイんデスよっ」
 タラオはゲラゲラと腹の底から声を出して笑い始めた。
イクラは左手で目の前のタラオの黒いズボンの裾を掴んで話を続けた。
「アレは事故ダッタ。本当にあれはスマナイとオモテル、アタマ、カド、ブツケタ。スマン」
「何を謝っているんデスか。とっととくたばってクーダサイッ」
 バットが振り下ろされると今度はイクラの左側頭部にめり込んだ。
脳漿が辺りに小さな破片となって散った。

「バッばぶぅ、ばブウィ」

 バットがもう一度振り上げられた時、凹んだ頭のイクラの目から赤い涙が落ち、希望の光は消えた。

548:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 05:33:40.06 ID:odIa0NFaO

「早く起きるデスッ」
 やるべき事をやらせてしまったタラオにカツオは肩を借りてやっと立ち上がった。
遠くの方からエンジンの音が聞こえる様な気がした。
「運転はできマスね、それぐらいの傷なら大丈夫デス」
 タラオはプリウスの運転席のドアを開けると、カツオをドサリと落としてハンドルの前に座らせた。
それからタラオは運転席のドアを閉め、後ろのドアを開けて紐とバットを後部座席に投げ入れると、素早く自身も飛び乗ってドアを閉めた。
「ほら早く出発シテクーダサイッデスウー」
 タラオがおかしな口調で命令してきたのにカツオは気付いたが、笑えなかった。
エンジンはもうかかっていたのでサイドブレーキを下ろしてアクセルを踏む。
「アアッ」
 カツオは右足からの激痛に悲鳴を上げた。それを聞いたタラオが後ろから身を乗り出して来た。
「どうしたンデスかァッ」
「右足が‥折れてるよウ」
「もう片方でやるデスウッ」
 タラオに急かされて左足でアクセルを踏むと車は加速を始めた。何とか運転できそうだった。

621:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/21(月) 23:50:22.95 ID:odIa0NFaO

 家から峠への道程で右手に見えた黒く大きな海は今はカツオの左手の方に存在していた。
タラオは全てを見越して全身を真っ黒の服装にしていた様だったが、顔にしっかりと赤い飛沫がついてるのがカツオにはルームミラーで見えた。
「何でアンナ恐ろしいコトをシタんだ‥」
 カツオのハンドルを握る手は微かに震えていたが、カツオの頭は冴えていた。
カツオはイクラが街灯の柱にぶつかってそれから自分が小学生の頃に友達と一緒に空き地で野球をするのに使っていたバットで絶命する場面迄をシッカリと目に焼き付けていた。
モウ一度ミラーを見るとタラオは目を瞑って手を座席に放り出し、ただ車の揺れに体を任せていた。
「コレカラ警察署に出頭するぞ」
 と、カツオは言って左手でカーナビを操作し始めた。
それを聞いたミラーのタラオの目が開いた。

628:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 00:04:05.35 ID:JxLCz0eaO

「ナニ言ってるンデスカッ。ヤメルデスゥッ」
 カツオは左の肩をタラオに掴まれ揺さぶられたので、カーナビの操作を諦めてハンドルの操作に集中する事にした。
「やめろっタラオ。アブナイッ」
 タラオは両手でカツオの左腕を掴み、
「やめるのはカツオニイサンの方デスッ。今警察に行ったらカツオニイサンも共謀の罪に、イヤこのバットさえあればっ」
 と、喚いて座席から下に落ちて転がっていたバットを見た。
「ソウデス、このバットはカツオニイサンのデスッ」
「タラオが何と言おうとこの車は警察行きだっ」
 カツオがアクセルをもっと深く踏んで車のスピードを上げたのを見てタラオは後部座席の自分側のドアを開けようとした。
カツオはそれをミラーで見てドアをロックした。
「クソーッここをアケロッ」
 タラオはドアが開かない事に気付くと、両手で拳を作って窓ガラスを叩き出した。

635:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 00:25:06.97 ID:JxLCz0eaO

「こんな事して後悔しマスヨッ」
 タラオは窓を叩く手を止め、水平線が白く光り出した海を見ながら言った。
「僕はもう後悔してるよ」
 カツオはタラオが静かになったのでまたカーナビの操作を再開しようと左手をカーナビに伸ばした。
「オオオオオオオッ」
 タラオはクチを目一杯開け叫び声を上げ、コメカミに青筋を立てて後ろからカツオの首を締めた。
タラオの首を締める手の力はカツオの息の根を止めるにはあまりにも弱すぎた。
しかし傷を負ったカツオを動揺させ、その車の運転に支障を来すのには充分だった。
意図せずしてハンドルが急に左に回り、カツオはとっさにブレーキを踏もうとしたが、慣れない左足では難しかった。

 カツオとタラオを乗せた車はそのすぐ左で長く長く先の方マデ伸びていたガードレールを破って宙を飛んだ。

643:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 00:44:36.49 ID:JxLCz0eaO

 カツオはマスオのプリウスが自分を乗せ、宙で弧を描いて海に飛び込もうとしている中、花子の顔を思い浮かべていた。

ビルを出る前に花子を抱き締めておけば良かったか。
否、それは結局彼女を更に哀しませる要因になっただけだ。

カツオは自分を後悔させない様に屁理屈をついた。

 タラオは自分が父の仇をとった事はおろか、父が先に現世を去ったも知らずにその短い人生を唐突に終わらせた。

「男は常に逞しく」
 と、言っていた父はその自身の仇をとったこの僕をあの世で迎え入れてくれるだろうか。

そんな思いを馳せる事もできなかった。

 鰹と鱈は鱒が先に待つ波立った母なる海に還った。

652:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 01:06:05.76 ID:JxLCz0eaO

「いやァ、甚六先生、ドーモドーモ。この前の雑誌に載せたの、反響良かったですヨォ。
ええ、あの兄妹の近親モノ。凄くリアルだって読者のアンケートハガキが。ヤッパリ作家の血をひいていらっシャルッ。
‥え、アア、すみません。先生に僕が原稿を頼めるのはあれで最後になってしまいました‥。エエ‥それじゃアお元気で」
 ノリスケは相手が電話を切るのを待ってから携帯の電源を切った。
朝靄の中に佇む長年自分の勤めていた会社のビルを見上げた。
それから溜め息をついて、目を瞑り
「まァ前の編集長みたいに過労死、なァんて事にならなかっただけラッキーだよな」
 と、呟いた。
ノリスケの勤めていた出版社は不況のアオリと電子書籍の波への乗り遅れによって今朝をもって倒産した。

「オッス」
 自分が入社してからの今迄の仕事振りを思い出していたノリスケの背中から快活な短い挨拶が飛んできた。

664:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 01:35:48.57 ID:JxLCz0eaO

「よォ、野原かァ」
 と、ノリスケは挨拶の主を当て、振り向いて後ろに立っていた青年の顔を見た。
「お前学校は良いのかア」
 と、聞くと野原は注意にも悪びれず
「今日は休みだゾ。ホイこれ」
 と、笑って缶コーヒーを手元に投げてよこした。
「アチチッ」
 ノリスケは缶が熱くて取りこぼしそうになりながら両手で何とか捕った。
ノリスケは遠慮無く缶コーヒーのタブを上げて中身を飲んだ。

「ふぅー。‥今来たってバイトに仕事は無いぞ。‥それにお前はもう新しいバイト先を探さなきゃならん」
 ノリスケは缶の中身を一気に空にしてから言った。
野原は道路の向こうの交差点を横断する女性を見ていた。
「ふうん。せっかく編集チョーの仕事振りを見に来たノニ残念だゾ」
 野原の口調は言葉に反して全く残念そうではなかった。
少しの沈黙があってから
「そんじゃ、何も無いみたいだからオラ、ナンパしてくるゾオッ」
 と、野原は息まいて駅の方向へ走って行った。

667:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/02/22(火) 01:43:52.65 ID:JxLCz0eaO

それじゃあ僕も帰るとするかな。

ノリスケは空になった缶を強く握り締め、野原の後に続いて歩き始めた。

しばらくは失業手当ても貰える。
久し振りに家族サービスができるナ。

妻と子の顔を思い出しながら一人で歩くノリスケの姿を朝日が照らし出していた。
一陣の風がノリスケの頬をさすり、ノリスケは春が近い事を知った。

【ノリスケ、おうちに帰ろう 終】

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