ハルヒ「バッタ?」
1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/26(月) 16:55:21.41 ID:T8V0SBpB0
バタバタバタバタ
????「御覧ください!あの雲のような群れ!」
????「あれはすべてバッタです!」
????「数百万匹のバッタが群れをなし、地上の植物を食べつくす」
????「近年日本で見ることのなかった公害がこのE県で起こっています!」
子供A「ヘリの音でますますバッタが近づいてない?」
子供B「くそ…殺虫剤まかれる前にはよ神戸に行かな…」
子供A「あのSOS団ってやつほんまにあてになるん?」
子供B「ネットで調べたけどそこが一番近いし安いんじゃわ…とにかく急がんといかん!」
子供B「北高のSOS団に!」
3:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/26(月) 17:01:41.74 ID:T8V0SBpB0
~SOS団部室~
ハルヒ「暇ね…キョン、あんた源氏物語の帚木(ははきぎ)の段腕立て伏せしながら言いなさい」
キョン「俺がそんな知識あるとでも思ってたのか?」
ハルヒ「はあ…ほんとに暇ね…」
ガチャ
子供A「ごめんください!ここがSOS団の部室……ですよね?」
ハルヒ「えっと……何か用?」
子供B「あ、あの私たちE県から来たんですけど…」
古泉「E県ってわざわざS国から来たんですか?」
子供A「はい、インターネットを見て…」
キョン(あんなカオスなもの見ている小学生いたんだな)
5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/26(月) 17:06:42.73 ID:T8V0SBpB0
子供A「実は~~~~~~~ってことで」
キョン「E県の四国中央市新宮村って………」
古泉「ええ、バッタ騒ぎの起きている所ですね」
ハルヒ「バッタ?」
みくる「子供だけで来たんですか?」
子供A「はい、SOS団さんにお願いに!」
ハルヒ「………まさかバッタを退治しろって言うんじゃないわよね?」
ハルヒ(私昆虫ダメなのよね)
子供B「違います!」
古泉「?」
子供A「鳥を探して欲しいんです!!」
ハルヒ「は?」
キョン「鳥?」
10:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/26(月) 17:14:55.08 ID:T8V0SBpB0
子供A「キレーな鳥で……でも父ちゃん信じてくれんし!殺虫剤撒く言ってるし!」
古泉「?」
子供B「3年くらい前に私らの村に林道を作る計画が持ち上がったんです。山を切り開いて道を作るって」
子供B「言いだしっぺは県会議員の法○さん、道路作ったら国からお金でるって村の半分は大賛成」
子供B「でも残り半分は山が荒れるし自然が壊れるって大反対で…」
子供B「そこにバッタ騒ぎが起きたんです」
子供B「賛成派は「殺虫剤撒いて駆除したらええ、どうせ道作る山じゃし」って」
子供B「反対派は「殺虫剤撒いたら山も他の動物も死んでしまう」って言うて」
子供A「そんで俺見たんじゃ!見たこともないキレイな鳥を!」
長門「鳥?」
子供A「南の国にいそうなキレーな鳥!じゃけど家の父ちゃん賛成派じゃけん、信じてくれんかった…」
ハルヒ「誰か飼ってたインコじゃないの?」
子供A「インコじゃない!もっとスズメそっくりの……」
長門「待って」
キョン「?」
11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/26(月) 17:17:10.99 ID:T8V0SBpB0
長門「羽は緑?」
子供A「うん」
長門「胸と尻は赤い?」
子供A「そ、そうじゃ!」
長門「まさか………」
古泉「長門さん…知っているんですか?」
長門「ヤイロチョウ」
みくる「ヤイロチョウ?」
12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/26(月) 17:22:57.32 ID:T8V0SBpB0
~E県四国中央市 新宮村 公民館~
反対派「林道なんか必要ない!補助金なんかすぐ消えるわ!先祖から守ってきたこの土地こそ残してやらないかん!」
Aの父「しかし林道があれば便利になる、子供たちにそういう物を残して…」
反対派「子供達には山を残してやればいい!」
Aの父「頭のかたい連中じゃ!村の経済をまるでわかっていない!法○先生が林道のためにどれだけ尽力されたか!」
Aの父「バッタのせいで米に被害がでるかもしれんのに!」
法○「好都合さ、バッタの退治の名目で山にとびっきり強力な農薬をまける」
法○「枯れ果てた山を見たら自然保護だの騒いでいる連中も気が萎えるさ」
13:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/26(月) 17:25:37.10 ID:T8V0SBpB0
~新宮村 山中~
子供A「長門先生!オレが鳥みたのはこっちです!」
長門「先にバッタが見たい」
キョン「なんでバッタなんだ?」
長門「気になることがある」
みくる「ひ…ひどい…」
古泉「これが公害ですか…」
ハルヒ「稲…枯れちゃってるわね…」
キョン「…………」
14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/26(月) 17:29:25.87 ID:T8V0SBpB0
長門「日本ではバッタの他にウンカの大発生も含めて「蝗害」と呼ぶ」
長門「アジア、アフリカなど色々な川で発生する」
長門「農作物はおろか周囲の生態系にまで大被害を与える」
ヒョイ
ハルヒ(ゴクッ……)
長門「見て、トノサマバッタ」
みくる(初めて見た……)
キョン「トノサマバッタはそんな茶色だったか?」
子供A「そうじゃ!もっと緑で体も大きいはずじゃ!」
15:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/26(月) 17:33:29.35 ID:T8V0SBpB0
長門「これは「群生相」と呼ばれる」
キョン「グンセイソウ?」
長門「トノサマバッタは広い場所に1匹でいると緑色の体になる、これを「孤独相」と言う」
長門「しかし狭い場所に密集していると体は小さくなり色も茶色に変化する、これを「群生相」と呼ぶ」
長門「群生相のバッタは飛行距離が延び、群れで飛ぶ」
長門「そして昼間飛んでいるとき以外は地上の植物を食べ続ける」
16:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/26(月) 17:40:10.91 ID:T8V0SBpB0
古泉「さっき長門さんがおっしゃってた気になることとは?」
長門「「蝗害」は通常乾燥した天候が続いた後に起こる」
長門「乾燥すれば卵は孵化しやすく、乾季に山火事があると焼け残った場所にしか卵を産めないので群生相になりやすい」
キョン「だが今は梅雨明けだぞ?」
長門「そう、長雨にさらされるとバッタの卵はダメになり、逆に卵は減るはず」
長門「こんなに大発生するはずがない…この蝗害はなにかがおかしい」
子供A「すげえ!やっぱり長門先生はすげえ!」
子供B「貧乳なのに!」
長門「…………チッ」
子供A「でも…こいつらのせいで!おらあ!」ビュン
キョン「おい!石を投げな!」
古泉「やめ……」
ブオオオオオオオオオ!!!!!!!
ハルヒ「ちょ!こっちに大群が来るわ!逃げないと!」
18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/26(月) 17:44:58.56 ID:T8V0SBpB0
ダッタッタッタッタッタ
キョン「い、行き止まり!?」
ハルヒ「下は湖ね…なんとか飛び込めそうだわ!」
キョン「おい待て!あぶn」
ボチャン
キョン「………ためらいなく飛んだな」
長門「……」ボチャン
みくる「ふぇ~!!!」ボチャン
古泉「ふんもっふ!」ボチャン
子供A「兄ちゃんも早く!」
キョン「わかってる…押すなよ?絶対におすn」
子供A「早く行け!」ドゴン
キョン「わ!バカ!おすなっ」ボチャン
子供A「俺たちも」ボチャン
子供B「うん!」ボチャン
19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/26(月) 17:48:54.67 ID:T8V0SBpB0
ブオオオオオオオオン
長門「…………行ったみたい」
ハルヒ「あんた石投げる前にちょっとは考えなs」
長門「静かに」
キョン(ん?岩の上に鳥が…)
長門「あの鳥?」
子供A「………うん」
みくる「綺麗……」
ハルヒ「本当に色鮮やかね……」
長門「おいで」
鳥「ピャーーー」ヒョイ
ハルヒ「うそ…鳥が有希の手に乗ってる…」
長門「やっぱりヤイロチョウ」
20:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/26(月) 17:53:24.47 ID:T8V0SBpB0
長門「ありがとう」ヒョイ
鳥「ピャーーー」
ハルヒ「ヤイロチョウ?」
長門「八色の鳥で八色鳥(ヤイロチョウ)」
キョン「そういう意味だったのか」
長門「スズメ目ヤイロチョウ科、「水の妖精」の学名が付いている」
長門「夏に日本に飛んできて広葉樹の森で繁殖し、冬はボルネオに渡る」
長門「見て」
みくる「あれは……あ、巣がある!」
ハルヒ「本当だ…」
子供A「これ見たらきっと父ちゃんも信じてくれる!みんなに言って殺虫剤をまくのを止めさせよう!」
長門「このことは誰にも言ってはいけない」
子供A「え…なんで!?珍しい鳥なんだろ!?」
21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/26(月) 17:55:46.15 ID:T8V0SBpB0
長門「ヤイロチョウは掛け値なしに絶滅危惧種」
長門「繁殖地があるとなれば殺虫剤をまくどころか道路などは絶対に作ることは出来ない」
子供B「だったら!」
長門「ヘタに居場所を教えたら殺される」
みくる「そ…そんな…可哀そう…」
長門「ちゃんと対策を立てるまでこのことは内密にしておく」
22:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/26(月) 18:00:23.34 ID:T8V0SBpB0
~子供Aの自宅~
子供A「ただいま」
Aの父「お前昨日の夜どこ行っとったんぞ?」
子供A「あ…キヨシの家に泊まってた」
子供A(長門先生がヤイロチョウのことは秘密にって)
Aの父「しばらく山には入るな」
子供A「?」
Aの父「バッタの駆除に殺虫剤をまく」
子供A「え…いかん!そんなんしたら他の動物も死んでしまう!」
Aの父「ほっといたら他の作物に影響がでるんじゃ!」
子供A「他にも方法が」
Aの父「どうせ道路作る山じゃ!」
子供A「山に道路は作れん!絶対無理じゃ!」
Aの父「なんで無理なんじゃ?」
24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/26(月) 18:02:46.84 ID:T8V0SBpB0
~民宿 Bの実家~
Bの父「なんで客間二つもいるんじゃ?」
子供B「だってバッタ騒ぎで客おらんのじゃけん、別にええやんか」
子供B「それに神戸のえらい先生たちがきとんじゃけん失礼のないように!」
Bの父「あの高校生がか?」
25:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/26(月) 18:07:35.79 ID:T8V0SBpB0
子供B「お菓子貰ってきたで!ついでにカメラも」
長門「ありがとう」
子供B「何見てるん?」
長門「ここ一カ月の天気予報」
子供B「これでヤイロチョウの写真を撮るん?」
古泉「長門さんがレポート添えて国際的な保護団体に送るらしいですよ」
子供B「ほんまに!?先生ありがと!」
ハルヒ「これで殺虫剤をまかれなくて済むわね、蝗害は心配だけど…」
長門「大丈夫」
みくる「ふぇ?」
長門「私たちが何もしなくても殺虫剤散布の必要はない」
キョン「は?どういうことだ?」
長門「なんとなく」
みくる「なんとなくですか?」
長門「それよりも心配すべきは人間、行動に予想はつかない上にとんでもないことをしでかす可能性がある」
26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/26(月) 18:10:01.34 ID:T8V0SBpB0
~居酒屋~
法○「ヤイロチョウ?」
Aの父「そうなんです、息子がそんな嘘を」
Aの父「珍しい鳥がいるから殺虫剤はまくなだの、道路は造れないだの」
Aの父「子供たちのために道路を作ろうとしているのに全然わかってない」
法○「ヤイロチョウ………ね」
27:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/26(月) 18:17:25.33 ID:T8V0SBpB0
~次の日~
長門「バッタがいるから静かに…」
キョン「しかし、すごい大群だな…」
バタバタバタバタ
古泉「この音は………まさか!?」
バタバタバタバタ
長門「なっ!!」
????「どうしました法○議員、急にヘリなんか飛ばして」
法○「なーに、農薬散布の下調べさ。もう少し近づけるか?」
????「やってみます」
28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/26(月) 18:18:24.32 ID:T8V0SBpB0
古泉「前が見えない!」
ハルヒ「ここにいちゃ危ないわ!逃げるのよ!」
子供A「うわっ……ああああ!!!!!」
キョン「おいA!大丈夫か!?しっかりしろ!」
長門「ヘリの助手席に乗っている…あれが!ぐっ」
キョン「長門!しっかりしろ!」
長門(まずい!バッタに食われる…)
キョン「長門!長門おおお!!!!!」
29:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/26(月) 18:24:00.03 ID:T8V0SBpB0
~二時間後~
ピーポーピーポー
Aの父「A!いったい何が!」
????「山でバッタに襲われて崖下に落ちたみたいです、命に別状はありません」
Aの父「あれほど山に近づくなと言っただろ!」
子供A「ヤイロチョウほんまにおるんで?見せよおもたけどBのカメラ壊してしまった……」
ピーポーピーポー
Aの父「ぐっ………」
ポン
法○「A君の仇を討とうじゃないか」
法○「みんなもわかっただろう?あのバッタがどれほど危険なものか!奴らを駆除することが我々大人の役目だろ!?」
法○「これ以上もめている場合じゃない!」
法○「殺虫剤散布の準備を始める!今すぐに!」
反対派「………しかたねえか」
30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/26(月) 18:25:56.34 ID:T8V0SBpB0
長門「待って」
法○「な………」
長門「殺虫剤をまく必要は無い、山へ行ってみて」
~山中~
????「な…バッタが全部死んでいる!?」
Aの父「君たちが殺虫剤をまいたのか?」
長門「私たちは何もしていない」
Aの父「じゃあなんで」
長門「カビ」
31:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/26(月) 18:30:42.97 ID:T8V0SBpB0
長門「今は梅雨の長雨が明けたばかりでカビが大量繁殖する時期」
長門「バッタ達は山の中を飛んでいるカビの菌糸に感染し、病死した」
長門「そもそもこのバッタは日本で大量発生したものではない」
Aの父「それじゃあどこで…」
長門「おそらく中国黄河流域、あそこは時々蝗害が起きる」
長門「そこのバッタが梅雨前線にの南側にできる「下層ジェット」と呼ばれる強風で運ばれ、ここに来た」
長門「食べ物なしで海を渡れたのは上空での低温で仮死状態になっていたから」
長門「それがこの蝗害の正体」
長門「乾燥地帯から無理やりに長雨の続いた日本に飛ばされてきた、だから環境の変化に耐えられず死滅」
32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/26(月) 18:33:44.77 ID:T8V0SBpB0
法○「そんな空想じみたこと………」
長門「ウンカも風に乗って飛来し農作物に被害を与える」
長門「江戸時代の享保の飢饉はこれによって引き起こされたと言われている」
法○「ぐっ……」
長門「殺虫剤はもう必要ない」
法○「あ…ああ、そうだな」
法○「バッタ騒動も終わったことだし次は力を合わせて林道を……」
ハルヒ「まだそんな……」
みくる「あ!」
キョン「?」
みくる「あそこです!ほら!」
Aの父「ヤイロチョウ!?」
33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/26(月) 18:38:11.28 ID:T8V0SBpB0
鳥「ピャーーー」
長門「………」スッ
Aの父「あ…指に乗っかって…」
長門「……羽?くれるの?」
鳥「ピャーーー」
長門「ありがとう」
Aの父「キレイな鳥だな…」
長門「ヤイロチョウは絶滅危惧種、この山に道路は作れない」
ガシッ
鳥「ピャーーーーーー!!」
ハルヒ「な!石を投げつけるなんて!」
鳥「ピャーーーーーー」バサバサバサ
法○「ははは!ヤイロチョウなんかいない!」
法○「誰もそんな鳥見てないさ!これでもう戻ってこない!道路は作れるぞ!」
34:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/26(月) 18:40:25.47 ID:T8V0SBpB0
法○「なあ!みんなそうだろ?」
賛成派「………」ドン
法○「お、おい!どうした?」
賛成派「………」
法○「なんだよ鳥一匹で!補助金が欲しくないのか!?」
法○「みんな待ってくれ!」
ハルヒ「……行きましょ」
古泉「ですね」
キョン「ああ」
みくる「はい」
長門「………お見舞い」
35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/04/26(月) 18:44:11.61 ID:T8V0SBpB0
~病院~
子供A「ヤイロチョウ戻ってこんかったなあ」
Aの父「でも南に繁殖地があるそうじゃ、今度見に行こう」
子供A「うん!」
子供A「でもなんでみんな反対派になったんかな?」
長門「ヤイロチョウが飛び去ったとき、自分たちが何を失うのか分かった」
長門「今回のことはラッキー」
キョン「行ってしまったのにラッキーか?」
長門「本当に大切なものは」
長門「それと気づかずに失くすことがほとんど」
長門「そして失ったことにすら気付かない………」
~終わり、ご愛読ありがとうございました。>>1先生の次回作にご期待ください~
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